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『はじめての日本国債』を読めば、日本経済の見方がわかる
ニュースで「国の借金が1000兆円を超えた」といった報道を聞いて、将来に不安を覚えたことがある人は多いでしょう。その「国の借金」の中心にあるのが国債です。国債とは、国が必要なお金を集めるために発行する借用証書のようなもので、税金だけでは足りない予算を補うために使われます。銀行や保険会社などの金融機関が主な購入者ですが、私たちの年金や保険の運用にも使われていて、実は日常生活と密接につながっています。
国債のしくみを知ることは、日本経済の動きを理解するうえでとても重要です。近年では金融教育の重要性が高まり、高校の家庭科の授業でも資産形成について学ぶことが必修となっています。そうした時代の流れの中で、国債についての基本的な知識は、もはや誰にとっても必要な教養のひとつといえるでしょう。
今回ご紹介する『はじめての日本国債』(服部孝洋著、集英社新書)は、このような背景をふまえて、国債とは何か、どのように発行され、私たちの暮らしや経済全体とどう関係しているのかを解説した入門書です。経済に苦手意識がある人や、ニュースの背景をもっと理解したいと思っている人、あるいはこれから資産運用を始めたいと考えている人にもおすすめの一冊です。
『はじめての日本国債』にもこうした経験が生かされており、国債の仕組みや役割について、豊富な具体例を交えてわかりやすく解説されています。国債についてさらに深く学びたい方には、服部氏が著した『日本国債入門』(金融財政事情研究会)もおすすめです。
服部氏によれば、国債のしくみを知ることで、いま日本経済で何が起きているのかを理解しやすくなるといいます。本書では、国債を入り口として、債券や証券、日本銀行の金融政策、銀行や生命保険会社の資産運用などが解説されています。日本国債について初めて学ぶ人でも、読み進めるうちに日本経済の基本的な見方が自然と身につく構成になっています。以下では、本書の内容を一部ご紹介していきましょう。
債券もまたお金を借りるしくみですが、ローンとの違いは、その証書を他の人に売ることができる点です。ローンが銀行とあなたのあいだの一対一の契約であるのに対し、債券は流通するのです。このことを、本書では「メルカリ」に例えて説明しています。
たとえば、ある企業が発行した債券をあなたが購入したものの、途中で現金が必要になった場合、その債券を他の投資家に売ることができます。売った人は債券の権利を手放し、買った人がその後の利子や元本の返済を引き受けることになります。このように、債券は「お金を貸す約束」の証明書であると同時に、それ自体が売買される「商品」でもあるのです。メルカリのように、中古市場で売買されるところが債券の特徴です。
証券会社は、投資家と国債市場をつなぐ役割を担っています。中でも国債を専門に扱うトレーダーは、財務省から国債を購入し、在庫として保有したうえで、投資家に売買の機会を提供することでマーケット・メイクをしています。
この国債のトレーディング業務は、単純化すればコンビニのビジネスと似ています。たとえば、コンビニがビールを仕入れて店頭に並べ、客に売ることで利益を上げるように、証券会社のトレーダーも国債を仕入れ、投資家に売ることで収益を得ます。違いは、ビールの価格が日々変動しないのに対し、国債の価格は市場の動向によって常に変わるという点です。
国債は、財務省が定期的に行う入札(オークション)を通じて発行されます。読者がトレーダーとして100億円分の国債を仕入れようとする場合、まずこのオークションに参加しなければなりません。イメージとしては、ヤフーオークションで人気のコンサートチケットを競り落とすようなものだと本書では説明されています。入札者は「この価格なら買いたい」と思う金額を提示し、希望が通れば落札できます。
ただし、国債ビジネスには大きなリスクも伴います。仕入れた国債の価格は日々上下するため、たとえば価格が1%下がるだけでも、100億円の在庫に対して1億円もの損失が発生します。このリスクを管理するために、証券会社ではリスク管理部門が常に価格や損益の変動をモニターし、事前に設定された限度額を超えないようコントロールしています。
トレーダーの役割は、投資家がいつでも国債を売買できるよう市場を支えつつ、自らの在庫リスクをコントロールすることにあります。その両立こそが、トレーダーとしての腕の見せ所なのです。
ということで『はじめての日本国債』では、国債や債券の基本から、日本銀行がどのような金融政策を行っているかまで、幅広く解説されています。経済ニュースの背景を理解したい方や資産形成の基礎を学びたい方にとっても大いに役立つ一冊です。ぜひ書店で手に取ってみてください。
国債のしくみを知ることは、日本経済の動きを理解するうえでとても重要です。近年では金融教育の重要性が高まり、高校の家庭科の授業でも資産形成について学ぶことが必修となっています。そうした時代の流れの中で、国債についての基本的な知識は、もはや誰にとっても必要な教養のひとつといえるでしょう。
今回ご紹介する『はじめての日本国債』(服部孝洋著、集英社新書)は、このような背景をふまえて、国債とは何か、どのように発行され、私たちの暮らしや経済全体とどう関係しているのかを解説した入門書です。経済に苦手意識がある人や、ニュースの背景をもっと理解したいと思っている人、あるいはこれから資産運用を始めたいと考えている人にもおすすめの一冊です。
実務経験をもつ東大の研究者がわかりやすく解説
本書の著者である服部孝洋氏は、東京大学公共政策大学院で金融論を教える経済学者です。野村證券や財務省での実務経験を経て、現在は大学での教育・研究に加え、一般の読者向けにSNSやホームページでの情報発信を積極的に行っています。民間の金融機関と政策の現場の両方を知る立場から、理論と実務をつなぐ視点に優れた研究者です。『はじめての日本国債』にもこうした経験が生かされており、国債の仕組みや役割について、豊富な具体例を交えてわかりやすく解説されています。国債についてさらに深く学びたい方には、服部氏が著した『日本国債入門』(金融財政事情研究会)もおすすめです。
服部氏によれば、国債のしくみを知ることで、いま日本経済で何が起きているのかを理解しやすくなるといいます。本書では、国債を入り口として、債券や証券、日本銀行の金融政策、銀行や生命保険会社の資産運用などが解説されています。日本国債について初めて学ぶ人でも、読み進めるうちに日本経済の基本的な見方が自然と身につく構成になっています。以下では、本書の内容を一部ご紹介していきましょう。
国債市場は「メルカリ」を考えるとイメージしやすい
国債は国が発行する債券です。「債券」と聞くと難しそうに感じるかもしれませんが、その基本的なしくみは簡単です。たとえば、あなたが新しい会社を立ち上げて、ある事業を始めたいとします。初期費用として100万円が必要だけれど、手元に資金がない。そんなとき、銀行からお金を借りることを考えるでしょう。いわゆるローンですね。銀行からお金を借りる代わりに、あなたは利子を支払い、一定期間後に元本を返済するという約束を交わします。仮に金利が年1%であれば、1年後に101万円を返すことになります。債券もまたお金を借りるしくみですが、ローンとの違いは、その証書を他の人に売ることができる点です。ローンが銀行とあなたのあいだの一対一の契約であるのに対し、債券は流通するのです。このことを、本書では「メルカリ」に例えて説明しています。
たとえば、ある企業が発行した債券をあなたが購入したものの、途中で現金が必要になった場合、その債券を他の投資家に売ることができます。売った人は債券の権利を手放し、買った人がその後の利子や元本の返済を引き受けることになります。このように、債券は「お金を貸す約束」の証明書であると同時に、それ自体が売買される「商品」でもあるのです。メルカリのように、中古市場で売買されるところが債券の特徴です。
国債の仕入れは「ヤフオク」と似ている
また本書では、国債市場について具体的なイメージを持てるように、「読者が証券会社に勤め、国債の在庫管理をするトレーダーである」と想定して、実際の国債の取引について解説されています。証券会社は、投資家と国債市場をつなぐ役割を担っています。中でも国債を専門に扱うトレーダーは、財務省から国債を購入し、在庫として保有したうえで、投資家に売買の機会を提供することでマーケット・メイクをしています。
この国債のトレーディング業務は、単純化すればコンビニのビジネスと似ています。たとえば、コンビニがビールを仕入れて店頭に並べ、客に売ることで利益を上げるように、証券会社のトレーダーも国債を仕入れ、投資家に売ることで収益を得ます。違いは、ビールの価格が日々変動しないのに対し、国債の価格は市場の動向によって常に変わるという点です。
国債は、財務省が定期的に行う入札(オークション)を通じて発行されます。読者がトレーダーとして100億円分の国債を仕入れようとする場合、まずこのオークションに参加しなければなりません。イメージとしては、ヤフーオークションで人気のコンサートチケットを競り落とすようなものだと本書では説明されています。入札者は「この価格なら買いたい」と思う金額を提示し、希望が通れば落札できます。
ただし、国債ビジネスには大きなリスクも伴います。仕入れた国債の価格は日々上下するため、たとえば価格が1%下がるだけでも、100億円の在庫に対して1億円もの損失が発生します。このリスクを管理するために、証券会社ではリスク管理部門が常に価格や損益の変動をモニターし、事前に設定された限度額を超えないようコントロールしています。
トレーダーの役割は、投資家がいつでも国債を売買できるよう市場を支えつつ、自らの在庫リスクをコントロールすることにあります。その両立こそが、トレーダーとしての腕の見せ所なのです。
ということで『はじめての日本国債』では、国債や債券の基本から、日本銀行がどのような金融政策を行っているかまで、幅広く解説されています。経済ニュースの背景を理解したい方や資産形成の基礎を学びたい方にとっても大いに役立つ一冊です。ぜひ書店で手に取ってみてください。
<参考文献>
『はじめての日本国債』(服部孝洋著、集英社新書)
https://www.shueisha.co.jp/books/items/contents.html?isbn=978-4-08-721348-5
<参考サイト>
服部孝洋氏のホームページ(Takahiro Hattori's Site)
https://sites.google.com/site/hattori0819/
服部孝洋氏のX(旧Twitter)
https://x.com/hattori0819
『はじめての日本国債』(服部孝洋著、集英社新書)
https://www.shueisha.co.jp/books/items/contents.html?isbn=978-4-08-721348-5
<参考サイト>
服部孝洋氏のホームページ(Takahiro Hattori's Site)
https://sites.google.com/site/hattori0819/
服部孝洋氏のX(旧Twitter)
https://x.com/hattori0819
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