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DATE/ 2015.12.04

2015年12月から義務化された「ストレスチェック」~どうなる職場環境?

 12月1日より施行の改正労働安全衛生法。今回の改正で、50人以上の従業員を抱える事業所で「ストレスチェック」が義務化されたことはご存じだろうか。50人未満の事業所でも努力義務は課せられることになる。

 ストレスチェックとは労働者の精神的負担を把握するために行われる。昨年精神障害分野での労災請求が過去最高件数になるなど、近年、問題になっている働く人のメンタルヘルスを向上させるために取り入れられた制度だ。

 対象労働者は、正規職員、1年以上の有期契約職員など。また、ここでいう事業所とは企業だけではなく、学校、保育園、幼稚園、介護施設、役所など、全ての職場のことを指し、全国16万ヶ所、二千数百万の労働者が対象になる見込みだ。

 義務を負っている事業所は、2016年11月末までに最低一回のチェックを行わなくてはいけない。もしあなたが対象者であり、希望するなら、今後約1年間でストレスチェックを受けられる。

 ストレスチェックは医師や保健師などにより、質問形式で行われる。このチェックで疲労、不安、抑うつの度合いが数値化される。数値が高いと高ストレス状態と判断されるわけだ。

 結果についてはまず従業員に通知される。さて、ここで心配なのはメンタルヘルスに問題ありと認められた場合、それが職場に伝わり、不利な扱いを受けないかどうかだが、それは一旦安心しても大丈夫である。

 職場はストレスチェックを実施する義務は負っても、その結果は経営サイドではなく、衛生委員会で保存される。衛生委員会とは50人以上の労働者を使用する事業所に設置が義務化されている産業医などによって構成される委員会のことだ。この委員会は守秘義務を負い、本人の同意なく事業者側に結果を伝えた場合は罰則も課せられる。

 高ストレスと判断された労働者は自分の意思で医師の面接指導を受けることができる。指導でストレスを軽減し、精神的に健康を回復できるなら、それで大丈夫。しかしやっかいなのは、面談の結果、高ストレスが働き方や職場環境にあると判断された場合だろう。

 その場合は、医師が事業所に意見を出す。事業所はその意見をくみ取り、労働時間の短縮措置や異動など適切な措置をとるということになっている。この適切な措置の「適切性」がどのように確保されるかは今後の課題だ。

 内閣府は、例えば年収600万円の社員が6カ月休職すると約420万円のコストがかかるという試算している。その試算が正しければ、ストレスチェックの結果適切な措置をとれば、事業者にとってもメリットがあるはずとも考えられる。

 どうしても不安で仕方ないので、チェックも受けたくないという人こそ、もしかすると高ストレス状態に陥ってしまっているのかも知れない。ともかくも、結果を理由にする解雇や不当な異動など、労働者にとって不利益な扱いは禁止されているので、必要以上に心配することはないだろう。

~最後までコラムを読んでくれた方へ~
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