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DATE/ 2016.04.05

機長・副操縦士でこんなに違う!「パイロット」の年収

 今年も堂々平均年収1位の座を守ったのはパイロット、いわゆる「航空機操縦士」でした。平成27年厚生労働省「賃金構造基本統計調査」によると平均年収1291万円。全職種の平均年収441万円と比べると3倍近い年収です。そんなパイロットの収入まわりについて、調べてみました。

大手とLCCでは、年収差は1000万?

 日本の航空業界もようやく落ち着きましたが、大手と呼ばれるのは相変わらずANAとJAL。その2社とLCC各社では話にならないほど、パイロットの年収に差があるのでしょうか。

 JAL         1636.4万円(43.6歳)
 スカイマーク    884.1万円 (44.5歳)
 スカイネットアジア 1206.2万円(43.4歳)=(現ソラシドエア)
 スターフライヤー  1162.4万円(42歳)

 これが各社の有価証券報告書からわかる「運航乗務員」の給与状況(平成26年度)です。JALの破綻以降、最大手となっているANAでは、ピーチ、バニラエアの2社もグループ内にふくむため、別会社からの派遣という形式を取っており、詳細はわかりません。しかし、クチコミではANAが1900万円程度と言われている一方、ピーチとバニラの2社が「パイロット不足」を理由に減便を決めたのは記憶に新しいところです。

 どんなにコンピュータ制御が進んでも、機長がいなければ飛行機は飛びません。しかし、大幅に年収ダウンとなる新興会社に移籍したいパイロットがまずいないのも当然のことでしょう。その機長になるには、自社養成で15年以上かかると言われています。

コックピット内の格差とは

 旅客機のコックピットには、普通二人の操縦士が乗っています。その違いは上着や肩章の金線(機長4本、副操縦士3本)の数でわかりますが、年収はこのくらいの開きになります。

 副操縦士平均:1500万円
 機長平均  :2300万円

 大手の自社養成パイロットとして採用された場合、副操縦士として「パイロット」の席に就くのに最低5年はかかると言われています。そして副操縦士として乗務キャリアと訓練をさらに10年積んで到達するのが機長なのです。

 海外では軍の操縦士から転職する人も多いパイロットですが、日本ではその養成はほぼ大手航空会社と航空大学校に任されています。進むパイロット不足に歯止めをかけるため、近年ではいくつかの大学がパイロット養成コースを開設し始めています。問題は、高学費とのことですが、医学部やロースクールと比べた回収率はどうなのか。考えてみる余地はありそうです。

CAの問題は国内で薄給に甘んじるか、外国エアに狙いを広げるか

 最後になりましたが、昭和の頃はスチュワーデスと呼ばれ、女性のキャリアではもっとも花形だったCA(客室乗務員)の年収も気になるところ。冒頭の「賃金構造基本統計調査」で客室乗務員を探すと、68位415.95万円。そう悪くはないと思われますが、やはり会社間格差はあるようです。平成26年度の様子を有価証券報告書で見てみましょう。

 JAL         483.2万円(34歳)
 スカイマーク    349.4万円(28.3歳)
 スカイネットアジア 268.9万円(27.4歳)=(現ソラシドエア)
 スターフライヤー  330.4万円(28.2歳)

 さて、空の職業は、それこそボーダレス。パイロットの場合、日本は最高水準の年収とともにもっとも厳しい資格・条件を備えているため、海外へ流出する人材は今のところ少ないようですが、CAは180度条件が違います。中東のドバイを本拠地とする世界の高級エアライン・エミレーツ航空などには、毎年400人超の日本人が応募しているのだとか。もちろん倍率は厳しいが、同じ仕事をするなら海外居住もOKという女性が増えているのは頼もしい話です。
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