テンミニッツ・アカデミー|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツ・アカデミーとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2016.04.09

脳科学に基づく40歳からの英語学習法

 2015年11月に発表されたTOEICの出題形式の変更は、これまで対策を講じてきた学習者にとって一大事となりました。改定のポイントは、よりリアルで実践的な英語スキル。リスニングが、2人から3人に増え、口語的な短縮形も試されるようになってきたようです。

 というわけで、何かをはじめるにはよい季節。TOEICをキッカケにするのもよいのですが、これからの英語学習の方法ついて考えてみるのはいかがでしょう?

英語を学習するには遅すぎる?

 「六十の手習い」から派生して「四十の手習い」などともいいますが、中年からの英語学習は可能なのという疑問があります。脳科学の見地から、多くの専門家が指摘していますが、日々学習を続けているなら、中年から壮年にかけても十分習得は可能とのことです。

 耳から入った言葉は、脳の「ウェルニッケ野」で意味づけされ、記憶されます。そして、「前頭前野」で文章を組み立て、「ブローカ野」を通じて言葉を発します。これらの、脳の部位を結ぶ言語回路ができると、スムーズに英語が使えるようになります。

 加齢を問わず英語学習者にとって最も重要なのは、言語回路をつくりだすための刺激を多くするため、日常的に英語を獲得していくための方法にありそうです。

聞いているだけで英語が話せるようになる?

 「聞き流すだけで英語が身につく」という教材の話をよく聞きますが、初心者にとっては効果的でないという話をよく耳にするようになりました。それを裏づけるのが、最新の脳科学です。言葉を意味づけする脳の部位「ウエルニッケ野」で照合できない音は言葉として認識されないというのがその理由です。つまり、聞いているだけでは不十分で、意味と音を結びつけるトレーニング方法がポイントになってくるようです。聞き流すだけの教材も、英語のあとに日本語が流れるようですが、実際の習得率はそれほど高くないようです。

記憶のメカニズムを利用した音読学習

 記憶には、出来事と年号を覚える「意味記憶」、イベントなどをシークエンスとして覚える「エピソード記憶」、自転車の乗り方のように身体で覚える「運動記憶」の3種類に分類できます。この中でも身体で覚えた「運動記憶」が最も長期化する記憶になるようです。

 英語学習にこれらを照合させると、「音読」に注力した学習方法が導かれます。口の筋肉や舌・歯を使う身体性から正確な発音力をつけることで、リスニング力も飛躍的に高まることが検証されているようです。ちなみに、かの夏目漱石は辞書を引く以上に英文をひたすら読むことを奨励していたようです。英語の映画を観ながら、役者の台詞を繰り返し、アクションもふくめて演じてみると効果が期待できそうです。

~最後までコラムを読んでくれた方へ~
雑学から一段上の「大人の教養」はいかがですか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,500本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長

米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長

経験学習を促すリーダーシップ(2)経験から学ぶ力

人が成長していくために重要な経験学習。その学習サイクルを適切に回していくためには、「経験から学ぶ力」が必要になる。ではそこにはどのような要素があるのか。ストレッチ、リフレクション、エンジョイメントという3要素と、...
収録日:2025/06/27
追加日:2025/09/17
松尾睦
青山学院大学 経営学部経営学科 教授
2

日本と各国の比較…税負担は低いが社会保障の負担は高い

日本と各国の比較…税負担は低いが社会保障の負担は高い

続・日本人の「所得の謎」徹底分析(1)各国の財政と国民負担

国民の税負担を増やすか、政府の財政支出を増やすか。前回の講義《日本人の「所得の謎」徹底分析》に続き、見解の分かれる日本の財政に関する議論を今一度整理し、見通しを与える当講義。まずは日本の財政と国民の負担の現在地...
収録日:2025/07/10
追加日:2025/09/17
養田功一郎
元三井住友DSアセットマネジメント執行役員 YODA LAB代表 金融・経済・歴史研究者
3

地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か

地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か

海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ

海底はどうやってできるのか。なぜ火山ができるのか。プレートが動くのは地球だけなのか。またそれはどうしてか。ではプレートは海底の動きの全てを説明できるのか。地球史規模の海底の動きについて、海底調査の実態から最新の...
収録日:2020/10/22
追加日:2021/05/02
沖野郷子
東京大学大気海洋研究所教授 理学博士
4

外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか

外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか

外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い

外交とは国益を最大化しなければいけないのだが……。35年にもわたる外交官経験を持つ小原氏が8年がかりで書き上げた著書『外交とは何か 不戦不敗の要諦』(中公新書)。小原氏曰く、外交とは「つかみどころのないほど裾野が広い...
収録日:2025/04/15
追加日:2025/09/05
小原雅博
東京大学名誉教授
5

「国際月探査」とは?アルテミス合意と月探査の意味

「国際月探査」とは?アルテミス合意と月探査の意味

未来を知るための宇宙開発の歴史(9)宇宙開発を継続するための国際月探査

現在の宇宙開発は「国際月探査」を合言葉に掲げている。だが月は人類の移住先にも適さず、探査にさほどメリットがない。にもかかわらずなぜ「月探査」が目標として掲げられているのか。それは冷戦後、宇宙開発の目標を失った各...
収録日:2024/11/14
追加日:2025/09/16
川口淳一郎
宇宙工学者 工学博士