テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2021.11.25

人はなぜ「ディズニーランド」に行きたくなるのか?

 2021年10月からチケットが値上がりしたディズニーランド。毎年のように値上げが敢行され、2011年から2016年の間に約1200円も上昇、そこからさらに2021年の2回の値上げでも合計1200円上昇しています。そんな状況に不満の声が広がる一方、「二度と行かない」という言葉は耳にしません。決して安くはない金額を払っても、通い続けるリピーターが多いことも事実です。

 今回はそんなディズニーファンの人たちに、その魅力を調査。15歳の女子高生から50代の主婦まで計15人の女性に、「あなたはなぜディズニーランドに行くのか?」というテーマでお話をうかがいました。

ワクワク、キラキラ、ドキドキ‥感情体験がクセになる

 まず、多くの方から第一声として「擬音語」が出てくるという特徴が。

・「ショーを観たりアトラクションに乗るとワクワク・ゾワゾワします。そのワクワク・ゾワゾワは、ディズニーでしか味わえないから行くんです」(15歳・女子高生)

・「キラキラした夢のような空間で、頭を空っぽにして楽しめるから」(40歳・歯科助手)

・「ランドに居る間はずっとドキドキしていられるので。その高揚感と多幸感って、自分の結婚式と同じくらい特別なもの」(41歳・インテリアデザイナー)

 なぜ自分がディズニーランドに行きたいのか考えたこともなかった、と改めて魅力を語ろうとすると、皆さんの口から出てくるのが擬音語。これは言葉で説明しにくいエモーショナルな体験が、ファンを引きつけている証ともいえます。普段あまり感情をあらわにできない大人も、「ディズニーランドでは感情に素直になれる」というポイントが大きいようです。

物語の世界観を体感できる、非日常的な喜び

 実際にディズニーランドでキャストとして働いていた2人の女性にも取材。作り手の側からも、その魅力を語ってもらいました。

・「アルバイト時は、現実を忘れてもらう会社の努力を感じていました。外が見えないように壁を高くし、できるだけゲスト自身が自分を映す鏡を置かない。自動販売機の導入が検討された時も、世界観を壊すともめたことも」(30歳・元キャスト)

・「シンデレラ城で案内係をしていました。自分が恥ずかしがるとゲストにも伝わってしまう。キャストが堂々と別世界の住人を演じることで、ゲストもその世界に連れていけると信じていました。いま自分が客側になっても、非日常を求めて来園していますから間違っていなかったと思います」(43歳・元キャスト)

 今では客としても来園するふたりが語るのは、非日常の世界観について。ここに来ないと、身を置くことの出来ない夢の世界が徹底して作り上げられていることが、ディズニーランドの特別感を高めているようです。

 「たとえば『不思議の国のアリス』。その鏡の中の世界に実際に行けたような感覚に。本の中にしか存在しなかった場所に手が届く満足感がたまりません。」そう語るAさん(50歳・主婦)の部屋を見せてもらいましたが、そこはまさにプリンセスの寝室のように現実離れしたインテリアに囲まれていました。女性の多くには、いくつになってもそんな別世界への憧れがあり、それを叶えてくれるのがディズニーランドという存在なのかも知れません。

老若男女、自分に合った楽しみ方が許される”ゆるさ”

 リピーターの皆さんのなかには、幼少期からアラフォーまでの長いファン歴を持つ人も多くいます。それだけの長期間、飽きずに通い続ける場所や好きでい続ける対象は、他にはなかなか思いつきません。

・「子どもの頃は家族と、学生時代は友人や恋人と、そして結婚・出産を経てまた自分の子どもと行っています。暴力・悪意などネガティブ要素が一切ないので、老若男女誰とでも行けるのも大きいです」(37歳・主婦)

・「他の遊園地って、大人だけじゃ行きにくい。でもディズニーは大人になっても楽しめる場所だから受け入れられている感じがします」(29歳・ダンス講師)

「アトラクションやショー、キャラクターなど行くたびに小さいけれど新しい発見や刺激があります。1日では回り尽くせないし、また来たい、今度はいつ誰と来よう、と次回が楽しみになりリピーターになりました」(27歳・販売員)

 年齢、性別、立場、同伴者に関わらず、そのときの自分に合った楽しみ方ができるのが、何度も飽きずに足を運んでしまう魅力のようです。ディズニーランド自体に大きなインパクトを求めて行くのではなく、自分に合わせた付き合い方が無理なく選択できることが継続性を生んでいるよう。

 今回色々な方に取材をして少しずつわかってきた、ディズニーランドに行く理由。それは、エモーショナルな感動体験、現実逃避、そして誰もが自分なりに楽しめる自由と平等。これらは、ディズニーランドから一歩外に出れば、毎日忙しく、理不尽なことや不条理なこととも戦わなければいけない現代人にとって、もしかしたら今一番欲しいものなのかもしれませんね。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
自分を豊かにする“教養の自己投資”始めてみませんか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

生と死が明確に分かれていた…弥生人が生きていた世界とは

生と死が明確に分かれていた…弥生人が生きていた世界とは

弥生人の実態~研究結果が明かす生活と文化(9)弥生人の「生の世界」

弥生時代の衣食住には、いったいどんな文化があったのだろうか。土器やスタンプ痕の分析から浮かび上がる弥生人が生きていた世界、その生活をひもとくと、農耕の発展の経路や死生観など当時のさまざまな文化の背景が見えてくる...
収録日:2024/07/29
追加日:2025/05/14
藤尾慎一郎
国立歴史民俗博物館 名誉教授
2

運動では減らないコレステロール…食生活の見直しで対策を

運動では減らないコレステロール…食生活の見直しで対策を

健診結果から考える健康管理・新5カ条(5)コレステロールは運動では減らない

コレステロールは中性脂肪と混同されがちだが、まったく異なる性質の脂(あぶら)である。コレステロールには、消化酵素になるなど3つの使い道があるが、摂り過ぎると運動しても簡単になくならないため、血管の変化を引き起こし...
収録日:2025/01/10
追加日:2025/05/13
野口緑
大阪大学大学院医学系研究科 公衆衛生学 特任准教授
3

「法華経はSFだ!」というナラティブの神秘的体験

「法華経はSFだ!」というナラティブの神秘的体験

おもしろき『法華経』の世界(1)法華経はSFだ!

『法華経』といえば紀元1世紀から3世紀に成立したといわれる大乗仏教の代表的経典である。厳しい修行や哲学的思索を行う出家が中心だった当時のインド仏教に対し、誰もが平等に成仏できると説く『法華経』は画期的なものだった...
収録日:2025/01/27
追加日:2025/05/04
鎌田東二
京都大学名誉教授
4

イスラエルの歴史を学ぶ~シオニズム運動と英国の三枚舌

イスラエルの歴史を学ぶ~シオニズム運動と英国の三枚舌

近代イスラエルの誕生:その苦闘の背景(1)

 国防において、科学・芸術・産業の追究において、イスラエル人が示す桁外れの熱意。その根源は、民族がたどった歴史にあると島田晴雄氏は言う。現代のイスラエル精神に直接影響を及ぼした近代イスラエルの成立過程を2回に分...
収録日:2013/10/04
追加日:2014/07/17
島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授
5

米国史の教訓…ドル基軸通貨体制の信認を問う大転換に?

米国史の教訓…ドル基軸通貨体制の信認を問う大転換に?

株価と歴史…トランプ関税の影響を読む(1)アメリカ史の教訓とは

トランプ関税の影響は、今後、どのように広がっていくのだろうか? 過去の大きな構造変化や金融環境の変化が各国の「株価リターン」にどのような影響を与えたのかを分析しつつ、今後を考えるヒントがないかを検証していく。第1...
収録日:2025/04/18
追加日:2025/05/02
養田功一郎
元三井住友DSアセットマネジメント執行役員