社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2017.01.23

会社で部下に「やる気」を出させるには?

 会社や学校など、上司や先生の一言で「やる気」が失せるような経験をしたことはないでしょうか。悔しさを焚きつけてやる気を出させるつもりが、全く逆効果になってしまうことも少なくありません。

 個人に成績をつけていくテストや人事評価システムも同様に、本来のポテンシャルを引き出すどころか、マイナスに働くケースがあります。学校や会社で「やる気」をアップさせるためにはどうしたらよいでしょうか。

評価内容の伝え方が「やる気」を生み出すポイント

 会社における評価制度が社員のやる気やモチベーションアップに貢献するのは、評価そのものがポジティブかつ正確・公平であり、その内容が対象者にとって納得できるものにならなければなりません。ネガティブに響く評価内容や方法は、一時的な反骨心を生むことはあっても、長期的な「やる気」アップにはつながりません。

 評価は対象者にとって前向きにとらえられる必要があるのです。したがって、評価内容をどのように伝えるかが「やる気」を生み出すポイントになります。そこには、評価内容と伝達の方法が絡み合うことから、コミュニケーション技法として難度が高いといわざるを得ません。その難度は、評価方法と伝達方法が結びついていないことの難しさといってもよいでしょう。

 親であれ、先生であれ、管理職であれ、それぞれ目的があり、子どもや生徒や部下にさまざまな評価をする機会があります。褒める場合もあれば、叱る場合もでてくるでしょう。褒めて育てることが有効との話もよく聞きますが、やみくもに褒めるだけでは片手おちになりまねません。また、叱る場合などは、事前の雰囲気から緊張感が走ります。時には必要なコミュニケーションとはなりますが、単純に感情を爆発させるのではなく、ロジカルに何をどう改善していけばよいかを相互に納得できる機会としましょう。

「やる気」を引き出すために必要な3つのコミュニケーション

 そうした、評価から「やる気」を引き出すコミュニケーションに必要なのはどんなことでしょうか。ベルリッツグローバル・ブログでは、「部下をやる気にさせる良質なフィードバックの3ステップ」と題して、以下の3つを挙げています。

1.土台作り
2.課題の共有
3.アクションプランを立てる

 これは、第一に必要なのは評価する者・評価される者の相互理解と信頼感だということではないでしょうか。こうしたベースができて、はじめて「やる気」に結びつくフィードバックの可能性が開くということです。二番目は課題の共有ですが、同時に評価のベースとなる価値観の共有も大事でしょう。価値観と課題が共有できなければ、評価の方向性が失われるからです。そして三番目ですが、これは評価によってめざすべきアクションプランの共有を意味するでしょう。評価者は目標と枠組みを提示し、評価対象者が具体的なプランを実行するというプロセスです。評価される者は、フィードバックの対話の中で、評価者に認められることで自信につながります。

 そして、「良質なフィードバックを与える方式の『枠組み』」として、ベルリッツグローバル・ブログでは、以下の7つを挙げています。

1.組織の価値観を判断軸にする
2.結果ではなく、挑戦する努力に対して評価する
3.個人を評価・批判するのではなく、言動を評価・批判する
4.メンティーの課題解決の動機付けをする
5.メンティーに課題を自ら言語化させる
6.メンティーにアクションプランを立てさせ、自ら宣言させる
7.達成期限と達成度を測定する仕組みを設ける
※メンティーとは、「フィードバックを受ける側」のこと

 いかがでしょう。こうしてみると、評価を「やる気」につなげるフィードバック、そのプロセスの重要性を改めて実感することができるのではないでしょうか。評価は内容だけを突きつけるだけでは「やる気」は生まれません。結果を生むためのプロセスとしてのコミュニケーションに留意することで、意味のあるものになるでしょう。

<参考サイト>
・ベルリッツグローバル・ブログ「部下をやる気にさせる良質なフィードバックの3ステップ」
http://www.berlitz-globalblog.com/feedback
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
物知りもいいけど知的な教養人も“あり”だと思います。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み

なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み

何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み

なぜ「何回説明しても伝わらない」という現象は起こるのか。対人コミュニケーションにおいて誰もが経験する理解や認識の行き違いだが、私たちは同じ言語を使っているのになぜすれ違うのか。この謎について、ベストセラー『「何...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/11/02
今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授
2

ケルト神話とは…ダーナ神族、アルスター神話、フィアナ神話

ケルト神話とは…ダーナ神族、アルスター神話、フィアナ神話

ケルト神話の基本を知る(1)ケルト地域と3つの神話群

ケルト神話とは何か。ケルトという地域は広範囲にわたっており、一般的にアイルランドを中心にした「島のケルト」と、フランスやスペインの西北部などに広がった「大陸のケルト」があるが、神話が濃厚に残っているのはアイルラ...
収録日:2022/04/12
追加日:2023/07/23
鎌田東二
京都大学名誉教授
3

「土地勘のあるところ、自分たちの武器を持っていく」

「土地勘のあるところ、自分たちの武器を持っていく」

エンタテインメントビジネスと人的資本経営(5)「チーム戦と新規ビジネス」の要点

経営は個人戦でなくチーム戦であり、経営メンバーは「人材の組み合わせ」が大事である。かつて本田宗一郎には藤沢武夫、井深大には盛田昭夫がいたからホンダもソニーも大きくなれた。また、新規ビジネスを始めるときは大事なの...
収録日:2025/05/08
追加日:2025/11/03
水野道訓
元ソニー・ミュージックエンタテインメント代表取締役CEO
4

なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ

なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ

学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ

算数が苦手な子どもが多く、特に分数でつまずいてしまう子どもが非常に多いというのは世界的な問題になっているという。いったいどういうことなのか。そこで今回は、私たちが言語習得の鍵となる「スキーマ」という概念を取り上...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/10/06
今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授
5

宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由

宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由

徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題

半世紀ほど前、松下幸之助に経営者の条件について尋ねた田口氏は、「運と徳」、そして「人間の把握」と「宇宙の理法」という命題を受けた。その後50年間、その本質を東洋思想の観点から探究し続けてきた。その中で後藤新平の思...
収録日:2025/05/21
追加日:2025/10/24