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DATE/ 2017.02.15

バナナが食卓から消えるかも?その理由とは

「バナナが消えるかも」騒動

 2015年春ぐらいからささやかれている、「バナナがなくなる!?」という話、覚えているでしょうか。ニュースでもこの話題が取り上げられていたので、ご存じの方も多いと思います。

 おいしくて栄養価の高いバナナは日本でも人気の果物のひとつ。特にバナナ好きな人にとって、これはたいへんな事態です。青果店、スーパー、コンビニエンスストアを見てみると、今のところバナナは存在しています。いったいあのニュースは何だったのか、これからどうなっていくのか、バナナの今を探っていきたいと思います。

バナナを脅かす「新パナマ病」

 問題となっているのは、「新パナマ病」というバナナの病気で、最大のバナナ輸入国であるフィリピンで広がってしまい、生産量が減少しました。原因はカビによるもので、バナナの幹を黒ずませ、腐らせてしまうとのことです。

 「新」ということは、パナマ病もあるのかと思う方もいると思いますが、実はあるのです。バナナ生産会社の有名企業「Dole」のサイトにて、生物学者の福岡伸一氏が詳細を語っていますが、パナマ病が見つかったのは1900年代半ばのこと。ジャマイカ生まれでアメリカに広がったグロス・ミシェル種と呼ばれるバナナが大流行したさなかにこの病気が広がり、株分けしていたものもことごとく被害にあってしまったのだということです。

 このグロス・ミシェルに代わる「キャベンディッシュ種」というバナナが、今、私たちが口にしているバナナです。パナマ病に強いこの種がふたたびバナナ業界に息を吹き込んだ形になったわけですが、カビも進化するようで、今度はキャベンディッシュ種を脅かす「新パナマ病(パナマ病TR4)」が生まれてしまいました。実はこれも「新」といいつつ、1990年に見つかっているということで、もう四半世紀もたっているのですね。

有効な予防策はまだない

 そんな新パナマ病ですが、有効な予防策はまだないといいます。さらに農薬をもってしても駆除することができないという厄介な病気とのことで、幹が黒くなり腐ってしまうともはや、株ごと切り落とすしかなくなってしまいます。感染拡大を防ぐため、農園の隔離などの対策を行っていると聞いていますが、先は見えない様子です。

しかし、だからといって、バナナ自体、食べられなくなってしまうというわけではありません。バナナはキャベンディッシュのほかにも実に多くの種が生産されているからです。新パナマ病の被害が少ない南米でつくられたものはまだ食べることができるというわけです。

バナナの味が変わるかも

 ということで、これからもバナナを食べることはできるのですが、私たちが慣れ親しんだバナナの味が、今後変わっていく可能性はあります。以前グロス・ミシェルからキャベンディッシュに変わったように、違う種のバナナを受け入れることになるかもしれません。

 それがどんな味なのかはわかりませんが、どういう形であれ、これからもおいしくバナナを食べ続けていけることを願うばかりです。

<参考サイト>
・Doleホームページ(ドールバナナの歴史を紐解く バナナがかかる病気とは?)
https://www.dole.co.jp/special/banana_history/leader/fukuoka.html
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