パリ同時多発テロ
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敵の敵は味方―アサドと米欧が組むことはあり得るか?
パリ同時多発テロ(3)欧米諸国が直面する問題
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
世界に大きな衝撃を与えたパリ同時多発テロ。オランド大統領は、フランスが過激派組織「イスラム国(IS)」との「戦争状態にある」として、全土に非常事態宣言を発し、シリア空爆の強化に踏み切った。誰もが注意深く考えたいのは、この事件が世界大戦につながる可能性があるのか否かであろう。歴史学者・山内昌之氏はどう見ているのか。中東史研究第一人者としての視点に注目したい。(全3話中最終話)。
時間:11分45秒
収録日:2015年11月18日
追加日:2015年11月26日
カテゴリー:
≪全文≫

●パリの悲劇に対抗するパラダイム転換は起こり得るか


 皆さん、こんにちは。

 私は、この間起こったパリの大虐殺という今回の悲劇について、グローバルに考えれば「新しいポストモダンの世界戦争」ともいうべきものが、国家対国家という形ではなく、むしろ非国家主体、あるいは文化的な装いを持ったような集団の中で起こっていると述べました。テロリストたちは、イスラムの過激派を名乗り、自らの行為を正当化していますが、まじめなイスラム教徒たちから見ると、彼らにイスラムを名乗ってほしくないというのが本心ではないかと思います。

 このような事態に直面した今は、新しいものの考え方が必要になるはずです。しかし、危険極まりないISに対して、自分たちを新しい知的なパラダイムで武装し、世界を率いて指導しようという政治家やトップリーダーたちが少ないというのも現実です。

 現在の欧米諸国は、むしろ自国の安全や自国民の所得や福祉についてのみケアする国々がほとんどになりつつあります。このことも、今回のような事件の背景にあるのではないでしょうか。西欧諸国の市民たち(タックスペイヤー、納税者)の間では、自分の支払った税金が他国や他国民のために使われることに難色を示し、難民や移民に金を費やすのを望まないという風潮が出てきているからです。


●政治哲学や世界観を欠いた米欧のトップリーダーたち


 こうした傾向ないし潮流に最もフィットしているのが、バラク・オバマ大統領やアンゲラ・メルケル首相のような政治家たちなのでしょう。しかしながら、超大国、あるいは責任ある大国のリーダーとして彼らを評価するならば、例えばオバマ大統領の場合、グローバルに記憶されるほどのまじめな遺産や業績をつくったとは言い難いのではないかと思います。なぜかノーベル平和賞が、まったく根拠不明であまりにも早過ぎるタイミングにおいて与えられたことも、記憶には新しいところです。

 オバマ大統領のような政治家は、経済・技術・テクノロジーなどを結び付けたり、それらに依拠したリーダーとしては最適の人物なのでしょう。しかし、かつてのウッドロウ・ウィルソンの国際平和主義やフランクリン・ルーズベルトのニューディール政策といった、世界史を変えていくような哲学的政治には、程遠いところがあります。

 メルケル首相にしても、かつてのコンラート・アデナウアー...

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