ワシントン発、安全保障の未来像
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
中国の海洋進出を「覇権に対する挑戦」と受け止める米国
ワシントン発、安全保障の未来像(3)東アジア情勢
吉田正紀(元海上自衛隊佐世保地方総監/一般社団法人日本戦略研究フォーラム政策提言委員)
元海上自衛隊佐世保地方総監・吉田正紀氏が、アメリカが抱く東アジアの認識を解説する。アメリカにとって北朝鮮は、核保有だけでなく、その拡散が新たな懸念事項となっている。そして、年々増額される国防費を背景に、中国が展開する強気の海洋進出は、アメリカにとって同国のアジア覇権に対する挑戦と見られている。(全5話中3話目)
時間:7分57秒
収録日:2015年11月11日
追加日:2015年12月24日
≪全文≫

●アジア情勢分析1:弾道ミサイル開発と拡散が懸念される北朝鮮


 それでは、こうした二つの地域ではない、我が国周辺のアジアの情勢についてはどうかということを申し上げます。

 まず北朝鮮です。北朝鮮は、慢性的な経済難に起因する食料不足やエネルギー不足を回避するため、中国やロシアから経済援助を獲得するとともに、アジア太平洋諸国、中東およびアフリカ諸国に、武器や軍事技術を輸出することで外貨獲得を図っています。北朝鮮は、当面の目標を金正恩体制の安定的生存としています。それに最も重要なことは、国内的には現体制の基盤強化、国外的には米国からの体制保障の獲得です。このための弾道ミサイル技術の獲得であり、さらに核開発を進めた上で、核の小型化によって米国に到達し得る核弾頭弾道ミサイルを開発することに、全力を傾注しているという状況です。

 さらに北朝鮮が、これまで弾道ミサイル開発を急速に進展させることができた背景には、外部からの各種の資材および技術の移転があったと見られています。北朝鮮は、1980年代には、イラン・イラク戦争に乗じてミサイルの輸出を開始し、それによって弾道ミサイル技術は拡散しています。最初にスカッド技術を輸入したエジプトの他にも、先ほど中東で述べたリビア、シリア、イエメン、イラン、パキスタン等の国々と、ミサイル技術に関する関係があったと見られています。北朝鮮は、こうした移転や拡散によって得た利益で、さらにミサイルの開発を進めていると見られる他、弾道ミサイルの輸出先で試験を行い、その結果を利用しているとの指摘もあります。

 そのため、北朝鮮による弾道ミサイルについては、その開発および配備の動向のみならず、移転や拡散の観点からも懸念があり、引き続き注目していく必要があります。米国にとっての北朝鮮の脅威は、先ほど述べた、米国に到達し得る核を搭載した弾道ミサイルといった国土防衛上の懸念のみならず、中東の紛争当事国やテロ集団への弾道ミサイルや核技術の拡散という側面が大きいということを留意しなければなりません。


●アジア情勢分析2:国防費の継続的拡大を続ける中国


 次に中国です。中国が国際情勢をどのように見ているかという認識ですが、彼らは、世界の多極化と経済のグローバル化が進展しており、各国の相互依存が強くなって、共通の利益関係が進化していると見ています。他方...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
本当によくわかる経済学史(1)経済学史の概観
経済学史の基礎知識…大きな流れをいかに理解すべきか
柿埜真吾
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(1)米国の過激化とそのプロセス
MAGA内戦、DSAの台頭…過激化が完了した米国の現在地
東秀敏

人気の講義ランキングTOP10
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(2)MAGAの矛盾と内戦の現状
MAGA内戦勃発…なぜトランプがMAGAの敵になってしまうのか
東秀敏
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(4)信長の直臣、秀吉の与力としての秀長
最初は信長の直臣として活躍――武闘派・秀長の前半生は?
黒田基樹
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
平和の追求~哲学者たちの構想(5)カント『永遠平和のために』
カント『永遠平和のために』…国連やEUの起源とされる理由
川出良枝
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
第2次トランプ政権の危険性と本質(1)実は「経済重視」ではない?
ブレーキなき極右ポピュリズム…文化戦争を重視し経済軽視
柿埜真吾
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(2)プロテスタントと「予定説」
カトリックとプロテスタントの違いは?「救済予定説」とは?
橋爪大三郎
人の行動の「なぜ」を読み解く行動分析学(1)随伴性
「なぜ人は部屋を片付けられないか」を行動分析学で考える
島宗理