ワシントン発、安全保障の未来像
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対ロシア情勢認識はこの5年間でガラリと変化
ワシントン発、安全保障の未来像(4)米国の安全保障戦略
吉田正紀(元海上自衛隊佐世保地方総監/一般社団法人日本戦略研究フォーラム政策提言委員)
オバマ政権が出した安全保障戦略を分析すると、ここ5年でアメリカにとっての安全保障上の脅威は大きく変化したことが分かる。ロシアは明確な抑止対象になり、中東では包括的なテロ対策が必要となった。中国の軍備増強も油断できない。元海上自衛隊佐世保地方総監・吉田正紀氏が、アメリカを取り巻く情勢変化を明快に論じる。(全5話中4話目)
時間:5分35秒
収録日:2015年11月11日
追加日:2015年12月28日
≪全文≫

●厳しさを増すアメリカの対ロ認識


 2009年に成立したオバマ政権が、2010年に出した初の国家安全保障戦略2010と、今年(2015年)の2月に出した国家安全保障戦略2015を、現在の情勢を前提にして比較してみると、面白いことが分かります。

 2010年時点の国家安全保障戦略では、オバマ政権はロシアに対し、安定かつ実務的で多次元の関係を構築すると述べています。しかし、2015年2月の段階になると、ロシアの侵略を抑止し、代償を科すため厳しい制裁を実施するとあります。このように、明らかにロシアの脅威というものを正面で受け止めて、国家安全保障戦略そのものを変えている。さらに、2月以降のロシアの行動等によって、これはさらに激化しているという状況です。

 実際ワシントンにいますと、本当にロシア関係、あるいは核抑止の関係、まさに冷戦が戻ったのではないかといったようなコンフェレンス(会議)やシンポジウムが、色々なシンクタンクで行われています。これは、日本が全く関与していない核抑止の構造の中で、40年を超える冷戦という時代をただ単に平和な時代として認識していた日本と、冷戦というものを、まさに一歩間違えると自分の国が滅んでしまうかもしれないという認識の中で核抑止に取り組み、冷戦を戦ってきたアメリカとの間で、大きなパーセプション(認識)・ギャップが生じていることを示してはいないでしょうか。一言でいうと、米国人は心底ロシア人が嫌いであり、彼らを信用していないなと感じています。


●不確定要素が依然として多い中東情勢


 次に中東方面、特に今回の場合は、明確に対テロという脅威について明確化すると、対テロについても、2010年の国家安全保障戦略と今年出た国家安全保障戦略とでは、情勢認識は格段に厳しくなっています。今年の夏に成立したイランの核開発規制合意により、中東情勢全体には大きく変化する可能性が生じています。

 確かにオバマ政権の思惑通り、イランの核開発とテロリスト支援を同時に中止させることができれば、情勢は改善される方向に進みます。しかし、この後の米国議会の状況や、あるいはIAEAの査察の実効性やイランの対応等については、さまざま不確定要素が多い状況です。また、先ほど述べたシリア情勢の悪化から、現時点では改善と悪化の双方の可能性があると言わざるを得ないと思います。

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