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「神の国は近づいた」…では、それはどこにあるのか?

キリスト教とは何か~愛と赦しといのち(2)「神の国」はどこにあるのか

竹内修一
上智大学神学部教授/カトリック司祭(イエズス会)
概要・テキスト
最後の審判 (ミケランジェロ)
イエスが伝道を始めた最初の言葉は、「神の国は近づいた」だった。では神の国とはどこにあるのか。この問いは重要だ。上智大学神学部教授・竹内修一氏によれば、神の国とは私たちが想定するような「あの世」ではない。神の国は、人々の間に出現する。よってそれは怖がるものではなく、希望に満ちた場所だ。(全6話中第2話)
時間:12:27
収録日:2016/12/26
追加日:2017/03/07
カテゴリー:
≪全文≫

●多くが不明なキリストの前半生


 次に少し項目を変えて、イエスが一体何を目指していたのかについてお話しします。

 最初に述べたように、彼の「イエス」という名は、ユダヤ人の間では珍しいものではありませんでした。そしてその意味は「主は救い」です。正確には「アドナイ」という言葉が使われていますが、「神」という言葉で置き換えてもいいと思います。「神は救い」あるいは「神は救う方である」という表現でもいいと思います。もう一方の「キリスト」というのは、人名ではなく、「油を注がれた者」です。ヘブライ語で「メシア」です。ヘンデル作曲の有名な「メサイア」に連なる言葉で、それのギリシャ語です。

 イエスの生涯は短く、およそ33年くらいだろうと思いますが、その彼が赤ちゃんとして生まれ、そして30歳くらいになるまでの間、彼の生活がどういうものであったかについて、私たちはほとんど知りません。聖書の中にもそういう記述はありません。彼が生まれたクリスマスの物語はありますが、唯一の例外として12歳の時に神殿に詣でたという話があります。しかしそのくらいであって、30年間の素朴な生活についての資料はないのです。

 そして30歳になった辺りに、彼は弟子たちを集めます。有名な12人の弟子を集めて、活動を始めます。彼の始めた活動のことを「公生活」といいます。「パブリック・ライフ」です。それ以前、30歳になる前のことは、私的な生活ですから「プライベート・ライフ」と表現することもあります。彼がその公生活を始めた時のことについて、マルコの福音書1章の言葉には、こういう表現があります。

 「時は満ち、神の国は近づいた。悔い改めて福音を信じなさい」。

 これが、イエスの公生活における最初の言葉であると、マルコは記しています。


●キリストの到来は、充実した時の現われ


 福音書について簡単に説明します。新約聖書を開くと、最初に四つの福音書が出てきます。マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネです。その後「使徒言行録」があり、その後「ローマ人への手紙」をはじめとして、たくさんの手紙が書かれていきます。ほとんどがパウロという人が書いた手紙です。

 新約聖書の中でも、特に最初の四つの福音書がとても大事だと言われています。なぜならその福音書には、イエスがどういう言葉を語ったかという語録、そして彼がどういう行いをしたかという記録が...
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