●2020年代、都市部での目視外の自動飛行が実用化される
官民協議会では、安全にドローンを活用するためのさまざまな技術や、制度のロードマップ、つまり目標計画が検討されています。このロードマップは2016年に作成され、2017年に改定されました。そこではドローンの飛行による利活用が、レベル1から4までの4段階に分けられています。
レベル1は、目視内の範囲で遠隔・手動操作をするという、現在すでに行われている段階です。レベル2は、やはり見えている範囲で自動操縦を行うという、これもすでに一部で行われている飛ばし方です。
それに対してレベル3は、今後の課題です。つまり、無人地帯において、目視外で自動操縦で飛ばすという段階になります。例えば、物流で利用する場合には、こうした飛ばし方が必要でしょう。レベル3は、2018年頃をめどに実用化しようと、目標が立てられています。最後にレベル4は、こうした目視外の自動飛行を、都市部でも行うというものです。これは、2020年代以降の実用化が目標とされています。こうした目標を達成するためには、新たな技術開発だけでなく、それを社会で利用していくための制度の充実が求められるでしょう。
●GPSが使えない環境での自動飛行を可能にする技術
技術的に大きな課題となるもの、新たな技術開発が必要なものとして、まずは、GPSが使えない環境での自動飛行が挙げられます。GPSはカーナビなどで広く普及している技術ですが、その信号は非常に微弱です。建物の中では利用できません。また、屋外でも、建物の近くや橋の下、トンネルの中などでは、GPSが機能しないこともあります。
こうした状況においても、自動飛行を可能にするために、さまざまな技術が今、開発されています。ここでは4つの新たな技術を紹介しましょう。
第1に、モーションキャプチャーという技術があります。それは、建物の中でドローンを飛ばす際に、部屋の天井の周囲にカメラを設置して、その映像を基に、機体の位置を計測するという仕組みです。モーションキャプチャーを機能させるためには、部屋の中のインフラが必要です。
そこで第2に、新しいインフラを必要としない技術も開発されつつあります。機体に搭載したセンサーで周囲を把握し、自動で飛行させるという技術です。例えば、レーザー測距計を用いることで、障害物までの距離を検知することが試みられています。
第3に、機体に搭載したカメラで、移動時の画像の動きを検出して移動速度を求める、オプティカルフローという技術があります。移動距離が自動的に計測されて、自動飛行が可能になるのです。
第4に、ステレオカメラを機体に搭載し、周囲の環境を計測するという技術です。
●ステレオカメラを用いた自動飛行や障害物検知、自動回避
私たちはリコー株式会社、そしてブルーイノベーションと共同で、ステレオカメラを用いた自動飛行や障害物検知、自動回避のデモンストレーションを行ってきました。超広角のステレオカメラをドローンに搭載しておけば、その映像から周囲の特徴点の移動速度が検出できます。それによって、ドローンは自分の飛行経路を算出し、目標位置に自動で飛行していくことができるのです。
さらに、特徴点までの距離を認識することによって、障害物が前方にあるかどうかを自動的に判断することもできます。障害物があった場合、それを自動で回避するという飛行実証も行いました。2016年と2017年のジャパン・ドローン展で行った、実証実験の動画をご覧ください。
超広角のステレオカメラによって、周囲の特徴点の移動速度を検出し、自分がどこまで進んだのかを推定しています。この機能を用いれば、GPSの使えない、例えば室内のような環境でも、目標地点に自動で飛行させることができます。また、障害物を自動的に検知し、回避させる技術も開発中です。これが実用化されれば、自動飛行を利用して、室内の点検を行うことも可能になります。
動画でお分かりのように、ドローンが帰還する際に、障害物を自動的に検知して回避するという実証に成功しました。この実験の大きな特徴として、ドローンに搭載されたセンサーとコンピューターによって全てが実行されている、という点が挙げられます。
●2017年3月、ドローンの運行管理飛行試験が実施された
さらに、もう一つの技術開発として、無人航空機の運行管制を取り上げましょう。
一般の旅客機の場合、飛行機は完全に航空管制官の指示に従います。旅客機は、飛行前に飛行計画書を提出し、それに基づいて決まった経路を飛行しなければなりません。離陸した飛行場では、ターミナル管制官の飛行場管制指示を受け、また飛行経路上でも、常に飛行位置がレーダーによってモニターされ、その管制を受けます。最後に、着陸する際には、着陸す...