現代ドイツの知恵と経験に学ぶ
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ドイツと比較しながら考える日本が抱える3つの課題
現代ドイツの知恵と経験に学ぶ(5)日本の三つの課題
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
ドイツと日本を重ね合わせる旅の中から、現代日本が直面する喫緊の課題、3点が浮き彫りになる。公立大学法人首都大学東京理事長・島田晴雄氏が指摘するのは、財政破綻リスクに対して本気で向き合う覚悟、近隣諸国との建設的関係構築への熱意、近現代国際関係史教育の重要性だ。(全7話中第5話)
時間:10分40秒
収録日:2017年9月12日
追加日:2017年11月12日
カテゴリー:
≪全文≫
 ドイツと日本の現代と歴史を振り返ってみた上で、もう一度日本の最近の動向について考えてみたいと思います。

 日本の最大のテーマは、「失われた20年」からの復活です。日本経済が1990年代初頭のバブル崩壊に続いて、90年代後半から長期デフレと停滞に沈んだことを「失われた20年」といいますが、安倍内閣は、この長期デフレから日本を脱却させることを最大の目標としてスタートしたわけです。


●アベノミクスの経緯と成果


 安倍政権ではその目的を達成するために、アベノミクスという大経済戦略を打ち出しました。それは3本の矢から構成されています。

 第一の矢は金融です。異次元金融緩和でベースマネーを大量に提供して、インフレマインドを醸成しようというものでした。異次元緩和は為替レートを引き下げ、株価を上昇させ、産業に活気をもたらす意味では大成功でしたが、本来の狙いは物価上昇であり、物価上昇を実現することで人々にインフレマインドを醸成させることでした。その過程でGDPに匹敵するほどベースマネーを提供してしまい、今や出口戦略ができるのかという不安があります。したがって、これは「mixed success」、成功もしたが大きな課題が残っているということでしょう。

 2本目は財政です。積極的・機動的な財政政策を展開するというもので、確かに景気を維持することへの一定の役割は果たしました。しかし、国際公約の財政健全化、つまり基礎的財政収支を2020年にゼロまたは黒字にするという目標はかなり遠のいてしまっています。

 3本目が成長戦略です。第一次アベノミクスでは資本市場、農業、労働など構造改革に注力しましたが、これらは成果が出るのに時間がかかります。第二次アベノミクスでは、「一億総活躍」の総称の下に、さらに環境を整えて労働力供給を増やす趣旨の改革を進めました。

 アベノミクスの成果を通観してみると、2013~2016年までは成長、物価、実質賃金それぞれの面で成果があまり出なかったといわざるを得ません。しかし、2016年の中旬ごろから、成長、物価、実質賃金それぞれに改善の兆しが見えてきました。これは、背景にある世界経済の大変な好調が影響しているのか、アベノミクス独自の成果なのかは、今後の評価が待たれると思います。


●懸念される財政破綻リスクのシナリオ


 以上のようにドイツと日本の歴史と現状を通観した上で、最後に日本の...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
多数派が多数でなくなるとき
悩める多数派…なぜ「多数は少数の集まり」と考えるべきか
曽根泰教
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
2025年、どん底日本を脱却する大戦略(1)日本が凋落した要因を総覧する
日本凋落の「7つの要因」と「10の復活大戦略」
島田晴雄
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎

人気の講義ランキングTOP10
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質
脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは
鎌田東二
編集部ラジオ2025(27)なぜ何回説明しても伝わらない?
なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
島田晴雄
デカルトの感情論に学ぶ(2)感情をコントロールするには
恐怖をなくす方法と感情のコントロール…デカルトの考え方
津崎良典
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(2)「ほめる」技術
男性は「ほめる」のが苦手?傾聴から始まる「ほめる」技術
三谷宏治
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ