●アシックスの三次元足型計測技術による利用価値共創事例
サービソロジーによるサービスイノベーションの事例についてお話をしていますが、今回は「利用価値の共創と満足度評価」についてです。
まず、利用価値の共創ですが、これは顧客の事前期待と企業の価値提案の間のダイナミックな相互作用をどう創り出すかということです。それが価値共創ということになるのですが、では「価値共創、価値共創」と言うけれど、どうやってやればいいのでしょうか。そのニーズに応えようということで、サービスをエンジニアリングの対象にしようとするサービス工学のアプローチの事例を用いたいと思います。
では、産業技術総合研究所のサービス工学研究センター長だった持丸正明氏が参画したプロジェクトを紹介します。これは、スポーツシューズメーカーのアシックスのケースなのですが、スポーツシューズメーカーにとって三次元の人体計測技術は、研究開発分野で非常に重要な意味を持っています。オリンピック選手のスポーツシューズをどのようにデザインするかということを考えるときに、この技術が大活躍するのですが、アシックスはこの技術を顧客接点の店頭に持ち込みました。自分の足型に合った靴を買いたいという顧客の事前期待に対応するために可視化をしているのです。
●店頭で徹底計測、データを可視化、微調整で最適な靴を作る
例えば、アシックスの銀座の店に行くと、四角い箱がありますので、片足ずつ足を入れると、そこに4方向からレーザー光が当たり、それを8つのCCDカメラで撮ることによって、片足の立体形状のデータを5秒程度で取ることができるのです。それは実に7万カ所のデータになるそうです。こうしたことを両足で行います。7万カ所のデータが出るとそれを加工して、25センチ、26センチといった足のサイズ、4Eとか3Eといった足幅だけではなく、足の甲の高さやかかとの傾斜角、足指の長さや形、あるいはフットプリントといったものを、片足ずつ分かりやすく正確に可視化してくれます。
こうした可視化が行われると、足の幅やサイズだけではなく顧客の土ふまずの形とか、標準的な靴と顧客の足の間の隙間のどこが広いか、指の形状にどうやって合わせるか、というようなことが分かってきます。シューズメーカーはいろいろなフィッティングパーツを持っているのですが、そうしたデータによって、どうい...