●「モノづくり立国」の産業価値観を生んだ70年代の経済成長期
サービソロジーが企業経営や経済にとっていかに重要であるかをお話しするために「経済はサービスで動いている」というテーマを取り上げたいと思います。
これは1955年からほぼ10年おきに日本の産業構造を表した図表です。これを見ると、産業というものがあたかも意志を持った生きもののように、環境に合わせて、明快な戦略を持ってどんどん変わっていっていることが、非常によく分かります。
この系列のデータが取られはじめた1955年の段階では、日本経済の2割近くを農業が占めていました。製造業と建設業などの第二次産業を足すとおよそ53パーセントで、サービス産業は47パーセントほどしかありませんでした。
1955年から1970年にかけては、日本経済が「奇跡の経済成長」を経験する時期です。その主役になったのは製造業で、55年におよそ27.5パーセントだった製造業は、70年にはおよそ34.8パーセント、つまり35パーセント近くまで拡張していきました。破竹の勢いの成長だったわけですが、おそらくこの時期に日本では「モノづくりが大事だ」「モノづくり立国」だという産業価値観が形成されていったのではないかと思います。
●2010年代現在、日本でも世界でも経済はサービス軸で動いている
このように1970年の時点で製造業は拡大したのですが、サービス産業はおよそ47パーセントから51パーセントとほとんど変わりませんでした。ところが1980年代に入ると、製造業の方は韓国や台湾、中国との競争にさらされ始めて、どんどんシェアを落としていくのです。
サービス産業は、およそ51パーセントから58.6パーセント、60.9パーセント、69.8パーセントと拡大して、2014年時点で74パーセント。つまり経済のおよそ4分の3がサービスに占められている状態になっています。一方の製造業は、1955年の27.5パーセントよりもシェアが小さくなり、およそ18.7パーセントです。現在の日本経済は「サービスで動いている」といっても過言ではない状態になっています。
これは、日本だけの現象ではありません。日本の74パーセントに対して米国は78パーセント、英国は78.4パーセント、ドイツは69パーセントと、サービス中心の経済構造が定着しています。先進国だけでなく途上国も入れた世界全体で見ても、現在第三次産業は64.4パーセントを占めています。世界...