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学生とは違う「大人の学び直し」のポイントとは?

大人の学び直しのために(1)知識を知恵に変えていく

柳川範之
東京大学大学院経済学研究科・経済学部 教授
情報・テキスト
東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授の柳川範之氏が、「大人の学び直し」について解説する。スマホやタブレットですぐに情報が手に入るようになった現在、これから必要とされる「学び」は、得た知識を知恵に変えていくことだと柳川氏は語る。(全2話中第1話)
時間:12:42
収録日:2018/02/16
追加日:2018/03/24
カテゴリー:
≪全文≫

●変化の時代に大人の学び意欲が高まっている


 今日は「大人の学び」であるとか、これから社会で生きていく上でどのように考えていくことが必要なのかということについて、私なりに考えていることをお話ししたいと思います。

 今の時代はかなり変化の激しい時代だと言われていて、人工知能(AI)の話であるとか、あるいはロボットの話であるとか、世の中をにぎわしている変化に見られるように、いろいろと働く環境が変わっています。その中で、あるいは要求される能力が変わっていくと言われる中で、新しい知識を学ぶ必要があると考えている人は、非常に増えているのではないかと思います。また、この不確実な時代に、一体何を考えていけばいいのかと悩んで、いろいろ考えたい、勉強したいと思っている人も増えているのだと思います。そういう意味では大人の学びたい、あるいはしっかりと考えたいというニーズがとても高まっている気がします。

 しかしながらその一方で、当然大人の人たちは仕事をしているので忙しく、子どものときや学生時代と比べて、なかなか学ぶ時間が取れないという面もあります。


●大人の学び方スタイル-1.休み休み勉強する


 ですから、学び方のスタイルを、学生のときとは違った形で進めていく必要があるのではないでしょうか。たとえていうと、学生の時の試験勉強は短距離走のようなもので、一気にスピードを上げて走り、できる限り早くゴールにたどり着くということが必要になります。一方、大人の学びは長距離走のようなもので、時間をかけてじっくりと自分のものにしていく、場合によるとどこがゴールかも分からないけれども長距離を走っていく必要があるのだろうと思います。

 そうすると1つのポイントは、休み休み勉強するということです。もちろん、時間が余っていて余裕のある人は根を詰めて勉強すればいいのかもしれませんが、実は仕事をしながら勉強する、何かを学ぶということはそんなに簡単なことではありません。仕事が忙しくなるときもあるでしょうし、家庭の事情で勉強する時間が取れないこともあると思います。

 学生時代の勉強に慣れていると、そのように勉強が中断してしまう時期があると、どうしても「自分は駄目なんじゃないか」と思ってしまいがちですが、これは大きな間違いだと私は思っています。大人の勉強のスタイルは、そんなに四六時中勉強できるものでもありませんし、休み休み勉強するのが普通のスタイルなのだろうと思うのです。それがノーマルな状態だと割り切って、場合によっては1カ月、2カ月中断してしまってもいい、そこからまた再開すればいいというぐらいの、ある意味で肩を抜いたスタイルで学んでいくことが、むしろ勉強を長続きさせるためのコツなのではないかと思っています。


●大人の学び方スタイル-2.「覚える」を過度に重視しない


 それからもう1つ、大事なポイントともいえるのは、知識を覚える、あるいは何かをしっかり暗記するということに実はあまり重要性がなくなっているということです。これは実は大人の学びだけではなく、若い人であったり、あるいは子どもの学びにおいても今、重要視されている点なのです。

 昔は何かを知っている、覚えているということに大きな価値があった時代で、それがずっと長く続いていました。ところが今はスマホやタブレットを持っていれば、かなり複雑な情報まですぐ取り出して、相手に伝えたりすることができます。例えば、営業の現場で会社の製品やそれにまつわる法律などを説明しようという場合、以前であれば製品の細かい情報や関連する法律の内容をきちんと覚えていないと、なかなか取引相手、商売相手に説明はできませんでした。しかし、今はそうした情報がタブレットを1つ持っていればすぐに入手できるため、かなり詳細伝えることができます。そう考えると、仕事のビジネスの現場において、「覚えておく」ということの重要性が随分低下していることが分かります。


●知識・情報を消化して自分のものにすることが重要


 そうなると、「では、何も覚えていなくていいのか。それなら、何のために勉強するんだ?」と、質問する方が結構出てきます。そこで必要となるのはそういう情報や知識をきちんとした形で自分が使えるようにすることです。私はこれを「知識を知恵に変えていく」という言い方をしているのですが、情報や知識を自分のものにして、そこから相手に単なる情報以上のものを伝える、あるいは自分の中で単なる情報以上のものに仕上げていくことが、これから必要とされる「学び」のかたちなのではないかと思います。

 たとえていうと、今まで覚えておく必要があるといわれていた知識は、工場のインプット、つまり素材であって、素材だけでお客さんに物が売れるわけではありませんし、素材としての食材をそ...
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