●食産業を含むサービス産業の労働生産性を高めるのが喫緊の課題
立命館大学食マネジメント学部教授の井澤裕司です。今日は、「食関連産業におけるマネジメントスキルの重要性」について、お話ししたいと思います。
食産業は、わが国のGDPのうち、約10パーセントから15パーセントを占める、非常に重要な産業です。また、世界経済を見渡してもそれは顕著で、農林水産省の推計によれば、2020年には食の市場規模が約680兆円となり、10年間で倍増すると予測されています。
このように食産業は、まさに世界経済の成長を担う基幹産業であると言うことができます。わが国に戻って考えてみましても、日本のGDPの75パーセントはサービス産業ですが、そのサービス産業の中でこれから成長を担っていくのは、食・観光・医療などを含むホスピタリティー産業であると考えられています。
今後、少子高齢化を迎える日本経済において、基幹産業となるサービス産業の生産性を向上させることは、まさに喫緊の課題です。
経済産業省の推計ですが、日本の労働生産性の現状を上のグラフで見てください。例えば、アメリカと比較すると、日本の飲食業の労働生産性は、約50パーセントの水準でしかありません。しかも単に低いというだけではなく、この10年間、労働生産性はますます低くなっているという現状があります。マネジメントあるいは経営を考える際の第一歩は、労働生産性をいかに向上させるかということに尽きると思います。
労働生産性は、投入された労働者一人当たりの付加価値で計算することができます。付加価値は、売り上げから原材料等の費用を差し引いたものになります。ですから、労働生産を上げるためには、いかに付加価値を上げるかが重要となります。もっと細かくいえば、いかに売り上げ額を増やしていくかということが、マネジメントを考える上での第一歩になってくるということです。
●付加価値の増大と技術的な効率性の追求で労働生産性は向上する
先述したように、労働生産性を上げるために重要な付加価値は、売り上げ額から費用を差し引いたものです。売り上げ額を増やすということは、顧客により高い値段で買って...