イノベーションの本質を考える
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
カシオのデジカメが起こしたイノベーション
イノベーションの本質を考える(3)イノベーション事例
経営ビジネス
楠木建(一橋大学大学院 経営管理研究科 国際企業戦略専攻 特任教授)
「何が良いか」という価値基準そのものを変えることがイノベーションであると楠木建氏は言うが、それではこれまでの歴史でどのようなものがイノベーションであったといえるのか。豊富な実例から解説する。(2018年9月7日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「イノベーションの本質」より、全8話中第3話)
時間:11分18秒
収録日:2018年9月7日
追加日:2018年11月29日
≪全文≫

●デジカメは、日常の記録という新しい用途を生んだ


 ここでイノベーションの例をいくつか紹介したいと思います。

 まず、カシオのデジタルカメラ「EXILIM」は、デジカメ最初期の大ヒット商品です。それまでは当然、多くの人がフィルムのカメラを使っていたので、初めてデジカメを見た時に多くの人が思ったのは、随分画像が粗いということです。まだ進歩が足りなかったのです。ですから、初期のデジタルカメラは画素数を上げていくという進歩の競争を展開していました。

 まだ、120万画素や200万画素にようやく到達した時代です。このままでは、結局画素数を上げていくというデバイスの勝負になってしまいます。そこで、カシオは「ちょっと待てよ」と思い至ります。ソニーといった横綱のような会社を敵に回して戦うのは面白くないと考えたわけです。そして、改めてフィルムのカメラとデジタルカメラの非連続性がどこにあるのかを考えました。彼らが注目したのは、撮影ではなく消去でした。デジタルカメラは撮った写真を「ばんばん捨てられる」という点がフィルムカメラと一番違うところなのだ、と考えたのです。そうすると、撮影の意味が変わるのではないかという仮説が立てられました。

 フィルムカメラでは、人は非日常の記憶のために写真を撮っていました。当時のコマーシャルを見ると、このことは一目瞭然です。「お正月を写そう」から始まって、次は成人式、お花見、運動会、旅行が、写真撮影の現場です。これらは全て非日常の記憶です。

 ところが、撮った写真をどんどん捨てられるということになると、撮った写真はごく日常の記録に変わります。これはまさに、今われわれがスマホで行っているスクリーンショットのようなものです。カシオは、このことを非常に早いタイミングで思いつき、例えば、名刺を書き移すのが面倒くさいので写真に撮っておいたり、レストランに行ったときにメニューを忘れないために撮っておいたりするなど、日常の記録に注目しました。当時、スマホはもちろん、携帯電話の写メもない時代です。

 日常の記録なら、画質は大して良くなくてもいいでしょう。大事なのはむしろ、ポケットに入る携帯性、そしてスイッチを入れてから写せるようになる起動時間が速いことです。こうした希望を叶えるために作られたのが、「EXILIM」なのです。画像は粗く、ズームも付いていません。ところが、薄...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「経営ビジネス」でまず見るべき講義シリーズ
ストーリーとしての競争戦略(1)当たり前の重要さ
柳井正氏の年度方針「儲ける」は商売の本筋
楠木建
キリンでつかんだ「幸せになる」仕事術(1)悩みの99%は他者との関係性
「使命観=パーパス」に立脚できないのは自分のエゴのせい
田村潤
重職心得箇条~管理職は何をなすべきか(1)時代に請われ、時代に応えた佐藤一斎
部下を育てるには、まず佐藤一斎に学べ!
田口佳史
サントリー流「海外M&A」成功術(1)ビーム社買収の裏側
私が直面したビーム社買収の「壁」
新浪剛史
イノベーションの本質を考える(1)イノベーションの定義
イノベーションの定義はパフォーマンスの次元が変わること
楠木建
ビジネス・エコノミクス(1)差別価格から学ぶダイナミックプライシング
差別価格の実例でダイナミックプライシングの真髄がわかる
伊藤元重

人気の講義ランキングTOP10
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(1)動物の配偶と子育てシステム
ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識
長谷川眞理子
未来を知るための宇宙開発の歴史(7)米ソとは異なる日本の宇宙開発
日本の弾道ミサイル開発禁止!?米ソとは異なる宇宙開拓の道
川口淳一郎
「集権と分権」から考える日本の核心(3)中央集権と六国史の時代の終焉
天平期の天然痘で国民の3割が死亡?…大仏と崩れる律令制
片山杜秀
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は数学と音楽でできている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
睡眠から考える健康リスクと社会的時差ボケ(5)シフトワークと健康問題
発がんリスク、心身の不調…シフトワークの悪影響に迫る
西多昌規
知識創造戦略論~暗黙知から形式知へ(1)イノベーションと価値創造
価値創造において重要なのは未来から現在を見るという視点
遠山亮子
DEIの重要性と企業経営(4)人口統計的DEIと女性活躍推進の効果
日本的雇用慣行の課題…女性比率を高めても業績向上は難しい
山本勲
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(3)これからの世界と底線思考の重要性
同盟国よもっと働け…急激に進んでいる「負担のシフト」
佐橋亮
モンゴル帝国の世界史(2)チンギス・ハーンのカリスマ性
自由な多民族をモンゴルに統一したチンギス・ハーンの魅力
宮脇淳子
睡眠と健康~その驚きの影響(1)睡眠が担う5つのミッション
寝ないとよく食べる…睡眠不足が生活習慣病を招く理由
西野精治