イノベーションの本質を考える
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イノベーションの一番良い日本語訳は「路線転換」
イノベーションの本質を考える(4)カテゴリーをつくる
楠木建(一橋大学大学院 経営管理研究科 国際企業戦略専攻 特任教授)
イノベーションの究極の形が新しいカテゴリーの創出にあると、楠木建氏は指摘する。ウォークマンやワンカップ大関などに見られるという「カテゴリーイノベーション」とはいかなる特徴を持つのか。(2018年9月7日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「イノベーションの本質」より、全8話中第4話)
時間:11分44秒
収録日:2018年9月7日
追加日:2018年11月29日
≪全文≫

●イノベーションは路線転換を意味する


 よく、イノベーションには「技術革新」という訳語を当てます。これは間違いではないのですが、僕が考える一番良い日本語訳は「路線転換」です。つまりイノベーションとは、路線が変わるということなのです。この路線が、これまでお話ししている「何が良いか」ということです。


●レイコップに見る「売る側」のイノベーション


 そうした意味でのイノベーションは、メーカー等の供給側が起こすとは限りません。例えば、レイコップという会社があるのですが、そこが小型掃除機を作りました。しかし、売り出しても全く売れなかったそうです。そのため、在庫がたまっていきました。


 しかしこの後、イノベーションが起きました。起こした人は高田明社長(当時)です。ジャパネットたかたがこれを売る時、高田社長(当時)は布団専用掃除機として再定義しました。「お布団の掃除は、ついつい面倒くさくて後回しになっちゃいますよね。この布団専用掃除機があれば毎朝シューっとやるだけで、ほこりも全部取れてしまいます。どうです、すごいでしょう」と売り出したのです。これにより、在庫の山であったレイコップは220万台も売れたそうです。

 つまり、ここでイノベーションを起こしているのは、売る側である髙田氏です。ここでも「何が良いか」が変わっています。


●ウォークマンは音楽鑑賞に関する新しいカテゴリーをつくった


 この非連続性は究極まで行くと、新しいカテゴリーをつくるまでに至ります。少し理屈っぽい話になりますが、ここで「カテゴリー」とは、ディメンション(次元)とは異なるものです。人間でいえば、身長、年齢、体重、視力等は次元です。それに対して、「男」と「女」はカテゴリーです。こうした存在するカテゴリーに、例えば「ニューハーフ」という新しいカテゴリーを生み出すとすると、それは最も非連続性が高いものなのです。そうした意味で、イノベーションとは、カテゴリーをつくるということであるといえます。

 僕はウォークマン世代なのですが、高校生の頃に初めて買ってもらった時は、やはり感動しました。ウォークマンのような機器は今では当たり前になりましたが、当時は画期的でした。それまでは、人間がスピーカーの前で音楽を聴いていたわけですが、ウォークマンの登場により、物理的...

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