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火山灰と噴石による被害の特徴や与える影響とは

火山防災のため知っておくべきこと(2)火山灰と噴石

藤井敏嗣
東京大学名誉教授
概要・テキスト
火山噴火に伴う現象として、まずは火山灰と噴石が挙げられる。火山灰とは急冷されたマグマが砕かれてきた小さな破片のことで、それが降り積もるものだ。他方、噴石とは火口から大砲の弾のように飛んでくる石のことである。両者とも火口からの距離によって被害は異なるが、留意していないと非常に危険な帰結を招く。(全6話中第2話)
時間:12:06
収録日:2019/03/29
追加日:2019/05/29
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≪全文≫

●火山灰の特徴


 火山噴火に伴う現象を、これから順番に説明していきます。

 まずは、火山灰と大きな噴石です。この写真は2000年の有珠山の噴火の時のものですが、アパートや民家の屋根が銀色に光っているように見えます。これは火山灰が降り積もった様子を表しています。10センチメートル以上も降り積もっているのですが、同時にそこに黒い穴が開いているのが分かると思います。これが大きな噴石です。大きな噴石が火口から大砲の弾のように撃ち出され、落ちてきてここに穴を開けました。アパートの天井を突き抜けて、部屋まで落ちたこともあります。道路の辺りにもたくさん噴石が落ちているのですが、これが人に当たった場合、すぐに命を落とすこともあり得ます。幸いにして、2000年の有珠山噴火では、噴火前に1万6000人が避難をしていたので、1人のけが人も出ませんでした。

 次に、火山灰の特徴をお話しします。火山灰とは、急冷されたマグマや岩石が砕かれてできた破片のうち、サイズが2ミリより小さいもののことです。つまり、基本的には石のかけらです。ですから、木や紙を燃やしてできる灰とは全く異なります。降り積もると重いのです。

 また、火山灰は石のかけらなのでトゲトゲしており、目の中に入ったりすると、角膜を傷つけることもあます。そして火山灰には有毒なガスが吸着されているので、水に濡れると電気を通しやすいものになります。例えば、碍子に降り積もったところに雨が降ると、硫酸の薄いものができます。このためにショートが起こり、停電が起こることもあります。さらに、乾燥しているときに地面にうっすらと火山灰がある状態でも、車が通るとそれらがすぐに舞い上がり、周りがほとんど何も見えなくなることも起こります。

 積もるという点では雪と似ていますが、雪と違うのは、いったん降り積もったら、溶けることはないということです。人力で除けない限り決してなくならなりません。そのため、鉄道などに降り積もったものも全て除去しないと、動かせません。

 この写真を見ると分かりますが、火山灰が降っている最中は、その真下が真っ暗になります。それに対して、火山灰が降っていないところは、非常に明るいということが分かります...
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