●火山灰の特徴
火山噴火に伴う現象を、これから順番に説明していきます。
まずは、火山灰と大きな噴石です。この写真は2000年の有珠山の噴火の時のものですが、アパートや民家の屋根が銀色に光っているように見えます。これは火山灰が降り積もった様子を表しています。10センチメートル以上も降り積もっているのですが、同時にそこに黒い穴が開いているのが分かると思います。これが大きな噴石です。大きな噴石が火口から大砲の弾のように撃ち出され、落ちてきてここに穴を開けました。アパートの天井を突き抜けて、部屋まで落ちたこともあります。道路の辺りにもたくさん噴石が落ちているのですが、これが人に当たった場合、すぐに命を落とすこともあり得ます。幸いにして、2000年の有珠山噴火では、噴火前に1万6000人が避難をしていたので、1人のけが人も出ませんでした。
次に、火山灰の特徴をお話しします。火山灰とは、急冷されたマグマや岩石が砕かれてできた破片のうち、サイズが2ミリより小さいもののことです。つまり、基本的には石のかけらです。ですから、木や紙を燃やしてできる灰とは全く異なります。降り積もると重いのです。
また、火山灰は石のかけらなのでトゲトゲしており、目の中に入ったりすると、角膜を傷つけることもあます。そして火山灰には有毒なガスが吸着されているので、水に濡れると電気を通しやすいものになります。例えば、碍子に降り積もったところに雨が降ると、硫酸の薄いものができます。このためにショートが起こり、停電が起こることもあります。さらに、乾燥しているときに地面にうっすらと火山灰がある状態でも、車が通るとそれらがすぐに舞い上がり、周りがほとんど何も見えなくなることも起こります。
積もるという点では雪と似ていますが、雪と違うのは、いったん降り積もったら、溶けることはないということです。人力で除けない限り決してなくならなりません。そのため、鉄道などに降り積もったものも全て除去しないと、動かせません。
この写真を見ると分かりますが、火山灰が降っている最中は、その真下が真っ暗になります。それに対して、火山灰が降っていないところは、非常に明るいということが分かります。これがちょうど馬の背を分けるようになっているのです。
●火口からの距離によって火山灰被害は異なる
次に火山灰による被害の特徴なのですが、火口に近いところではたくさんの火山灰が降ります。離れるにつれて、どんどん量が少なくなっていきます。それと同時に、火山灰の粒子の大きさも変わります。遠くに行くと直径が小さくなり、非常に細粒のものになっていきます。
しかし細粒のものは、かえって人体などには影響を及ぼしやすいという特徴があります。山に近いところだと、さらさらしているので、すぐに払いのけたりできるのですが、細粒になるとそれができません。
さらにその途中では、いろいろな災害をもたらします。火口に近いところで数十センチメートル以上火山灰が降り積もり、さらにそこに雨が降ると、ものすごく重くなるので、家の屋根がつぶれます。日本家屋だと、30センチメートルほど降り積もった場合、すぐに除去しないと、屋根がつぶれてしまうことも起こります。また、降り積もった厚さがもっと薄かったとしても、作物などには大きな影響があります。
また、火山灰が空にある間は、飛行機は決して飛べないということも覚えておくべき重要な情報です。飛行機は火山灰を吸ってしまうと、エンジンが止まってしまうので、墜落してしまいます。そのため、飛行機会社は決して飛行機を飛ばしません。
2010年にアイスランドの火山が噴火した時、ヨーロッパ中の飛行機が4日間ほど運航を停止したという事件がありました。これは飛行機が仮に飛んだとしても落下したら困るからという理由で飛ばさなかったのです。
飛行場についても同様で、例えば1ミリでも火山灰が積もると、それを完全に除去するまでは飛行場や滑走路は使えなくなります。そのため、火山灰があると、大混乱が起こることは間違いありません。
また、先ほども述べましたが、火山灰が水に濡れると電気を通しやすくなるので、碍子に積もった火山灰がショートを引き起こし、大規模な停電につながるということも、実際に起こっています。
特に大きな噴火では、噴煙が成層圏までいったん吹き上げられます。そうすると、成層圏にはジェット気流がものすごい速度で西から東に流れていますので、大部分の火山灰は全て東の方に流されてしまいます。それで降り積もるのです。