●地球温暖化は温室効果が強まることで起こっている
今回は地球温暖化と温室効果について整理しておきたいと思います。温暖化を論じるには、まず温室効果について理解をしなければなりません。これは、地球の気候を今あるように成り立たせている、非常に重要なプロセスです。
上の図は地球の大気について簡単に書いたものですが、太陽からの可視光線に対してはかなり透明度が高いということです。ですから、太陽からのエネルギーは、雲、あるいは白い雪や氷によって反射される以外は、そのほとんどが直接に地表を温めることになります。暖められた地表面からは、目に見えない長い波長の赤外線が上向きに出されます。
地球の大気には、「温室効果ガス」と呼ばれる水蒸気、二酸化炭素、あるいはメタンなどの気体が含まれています。これらの気体は、赤外線を効率良く吸収します。そして、自分の温度で赤外線を射出するという性質を持っています。ですから、地表面から直接出された赤外線は、ほんのわずかな部分しか宇宙空間には出されません。多くは大気、あるいは雲に吸収されてしまいます。
また、大気や雲が宇宙空間、あるいは下向きに赤外線を出すということで、地表面は太陽放射だけではなく、大気からの赤外線も受けて、暖められているということになります。もし仮に大気による温室効果がなければ、地球全体の平均気温は理論的にマイナス18度まで下がってしまいます。ですから、われわれが今の生活を営める自然条件は、実はこの温室効果があるから成り立っているものなのです。このように温室効果自体は、われわれの生活、あるいはこの自然を維持するために、なくてはならないものです。
地球温暖化という問題は、われわれ人類の営み、例えば化石燃料の消費、あるいは森林伐採といった活動の影響によって、大気中の二酸化炭素あるいはメタンなどが急速に増加して、それに伴って温室効果が非常に急速に強まり、気温を上昇させてしまうということです。
●数値気候モデルで気候システムをシミュレートする
温室効果が強くなるというこの地球温暖化が、現在予測されているわけです。そして、これからの将来においてどのように温暖化が起こっていくのかを予想する、あるいは現在までに温室効果がどれだけ効いてきたのかを評価するには、「数値気候モデル」というものを使います。
数値気候モデルとは、スーパーコンピューターの上に物理法則等を用いて構築された、仮想地球のシステムです。大気、海洋、陸域におけるプロセスが全て含まれています。雲や降水、大気の流れ、太陽放射、その赤外線の放射の過程など(注:雪氷も)、そういったものが全てきちんとコンピューターの中に表現されているものです。
さらには、こういった気候システムへ外部強制を加える必要があります。それには、太陽活動の変動、過去の火山噴火、エアロゾルの放出、温室効果気体の放出などが含まれます。エアロゾルとは大気中の微粒子のことで、人為的にも放出されています。温室効果気体は二酸化炭素やメタン等です。ここで重要になるのは、人為起源の外部強制です。特に将来の状況がどうなるかは、今後の人間活動、つまりわれわれがどのように温暖化対策を施すかということに強く依存しています。
●数値気候モデルによる実際の気温上昇の説明
ここでは、この数値気候モデルを用いたアプローチを使って、現在までの気温上昇が温室効果によってどの程度まで説明できるのか、紹介したいと思います。これは先ほど触れましたIPCCにとって、活動のメインとなっています。上の図の左にあるグラフは、20世紀から21世紀初頭にかけての、全球(地球全体)における地表の平均気温です。黒い線の部分が観測で得られたもので、これを見ると明らかに地球気温の上昇傾向を描いています。
左のグラフは、2007年にIPCCの第4次評価報告書で示された結果です。この時は、23あるいは24の異なる数値気候モデルを用いて過去の気候の再現が試みられました。この結果、先ほど申し上げたような理由(注:各数値気候モデルごとのエアロゾルや雲、両者の相互作用などの表現の仕方の微妙な違い)によって、ばらつきが生じています。それが黄色い線で示されています。その振れ幅が不確実性に当たるわけです。現在の気候に関するこの振れ幅が、橙色の矢印で表されています。
不確実性のある振れ幅から平均を取ったものが、もっともらしい推定値というものです。グラフでは赤い線で書いてあります。この線がほぼ、過去の気候における気温上昇の変化傾向を的確に表しているということが言えます。
グラフの下に文字で示され...