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ロボットを取り巻くメーカー、行政、ユーザーの問題点

生活支援ロボットと人の共生(8)それぞれの問題点

村田知之
神奈川県総合リハビリテーションセンター 研究部リハビリテーション工学研究室研究員
情報・テキスト
生活支援ロボットが人と共生する社会を迎えるには、メーカー、行政、ユーザーのそれぞれが抱える問題点を見据える必要がある。まずは互いに互いを知り、どうすればロボットを有効活用できるかを模索することからだろう。ここでは最近動き始めている腰痛予防ロボットの事例をうかがっていく。(全9話中第8話)
※インタビュアー:谷口和弘氏(慶応義塾大学商学部教授)
時間:09:44
収録日:2018/12/06
追加日:2019/07/29
≪全文≫
●メーカー、行政、ユーザーのそれぞれが抱える問題点

谷口 神奈川県では「さがみロボット産業特区」に注力されている一環として、「2028年に人間とロボットが共生する社会がやってくる」という想定で、興味深い動画を発表しています。先生の考え方をうかがいたいのは、ロボットをつくるメーカー、ロボットの実証実験を制度化する行政、それからロボットを利用するユーザーの関係についてです。

 それぞれ固有の問題点はあると思うのですが、私はロボットをつくる側にとってロボットの開発自体が目的化してしまい、なかなか製品の改良に結び付かない点が気になります。フレキシビリティもないし、ユーザーフレンドリーではない部分もあります。

 行政は、神奈川県の場合は非常に力を入れていますが、5年+5年の2期と期限が限られています。資金的にもコミットできないような問題があり、県の方に話をうかがうと、「県がそこまでやる必要があるのか」と批判を受けていると聞きます。ロボットに力を入れても、費用対効果は見えにくい。ロボット産業育成のようなリスクの高いことを県が行う必然性が問われているのだということでした。

 一方で、利用する側のユーザーもロボットに対する理解が不十分なこともあれば、私のようにロボットに過剰な期待をかける人間がいることからも問題が生じます。先生ご自身では、メーカー、行政、ユーザーに対して、何か問題点をお感じになることはありますか。

村田 おっしゃるとおり、それぞれの分野がそれぞれのことをもっと知らないといけないということが、まずあると思います。ただ、最終的にはやはりユーザーのことをしっかり考えるべきでしょう。ユーザーに広がらない限り、企業としても売上が上がらないし、社会的にも広がらない。ユーザーは患者だけではなく、それを扱うわれわれのような医療従事者も含みます。そのような捉え方をして、使用状況を聞いて広めていかないと、なかなかロボット社会は進まないのではないかと思います。


●腰痛の社会問題化と腰痛予防ロボットの進展

村田 多様な種類のロボットがあるなかで、最近少し多いのは腰痛に配慮したロボットです。なぜかというと、2013年に厚生労働省が「職場における腰痛予防指針」というガイドラインを出したからです。いわゆる看護や介護職、あるいは運送業などに従事する人たちの腰痛が、社会問題と言えるレベルになってきている。だから、職場環境を改善して、腰痛を防ごうという声が上がったのです。

 それと同時に、腰痛予防系のロボットが出てきました。抱え上げの補助をしたり、物自体を抱え上げるロボットなどが出てきたのですが、それらがなかなか現場とリンクしてきませんでした。

 本来、ロボットの開発は文部科学省で進め、介護・医療系は厚生労働省で進めていく。それらが双方に動くので、非常に幅広い動きなのですが、私から見ていると、双方の成果がなかなかつながりづらいイメージがあったわけです。

 しかし、最近になって、それが少しずつ重なり出し、看護・介護・運送業などの腰痛予防に対して、少しロボットが入り始めてきました。これにはおそらく企業側のアプローチもあると思うのですが、物を広めていくときには、やはりユーザーのことを配慮して入れていかないといけない。そうした問題がいくつか解決されてきました。


●腰痛予防ロボットは脱着するタイミングが鍵になる

村田 看護や介護の職場に腰痛予防のロボットを導入するときに、企業側としては「持っていくので使ってください」と言いたいわけですが、現場としてはそう簡単にはいかない。

 一日のうちで、患者さんや入所者を抱える時間は固まっているわけではなく、24時間のなかに幅広く点在しています。そのたびごとにロボットを装着して抱え上げを行うのは、非常に手間がかかります。では常につけておけばいいかというと、あんな邪魔なものをつけたままで、いろいろな作業はできません。

 では、使わないときはどこかに置いておき、使うときだけ装着するのがベストのはずですが、ここが非常に難しい。あまりにも非効率な動きになってしまうからです。

 そういう現状を前にして、企業側も少し考えました。これまでは「使ってください」というアプローチだけだったのを、まず施設・病院側に「確認しましょう」というところから進めるようにしました。つまり、施設内の動きのなかで、腰痛のリスクがある作業は24時間にどう発生しているかをまず把握するわけです。

 また、仮にロボットを入れたとしても、リスクのある作業全てにそれを使うのではなく、そういう動きの最も多い朝や夕方などの時間帯だけ使ってみませんか、とアプローチする。そのような切り替えが現場の意見となじんできて、少し広がり始めたということが一点あります。


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