●メーカー、行政、ユーザーのそれぞれが抱える問題点
谷口 神奈川県では「さがみロボット産業特区」に注力されている一環として、「2028年に人間とロボットが共生する社会がやってくる」という想定で、興味深い動画を発表しています。先生の考え方をうかがいたいのは、ロボットをつくるメーカー、ロボットの実証実験を制度化する行政、それからロボットを利用するユーザーの関係についてです。
それぞれ固有の問題点はあると思うのですが、私はロボットをつくる側にとってロボットの開発自体が目的化してしまい、なかなか製品の改良に結び付かない点が気になります。フレキシビリティもないし、ユーザーフレンドリーではない部分もあります。
行政は、神奈川県の場合は非常に力を入れていますが、5年+5年の2期と期限が限られています。資金的にもコミットできないような問題があり、県の方に話をうかがうと、「県がそこまでやる必要があるのか」と批判を受けていると聞きます。ロボットに力を入れても、費用対効果は見えにくい。ロボット産業育成のようなリスクの高いことを県が行う必然性が問われているのだということでした。
一方で、利用する側のユーザーもロボットに対する理解が不十分なこともあれば、私のようにロボットに過剰な期待をかける人間がいることからも問題が生じます。先生ご自身では、メーカー、行政、ユーザーに対して、何か問題点をお感じになることはありますか。
村田 おっしゃるとおり、それぞれの分野がそれぞれのことをもっと知らないといけないということが、まずあると思います。ただ、最終的にはやはりユーザーのことをしっかり考えるべきでしょう。ユーザーに広がらない限り、企業としても売上が上がらないし、社会的にも広がらない。ユーザーは患者だけではなく、それを扱うわれわれのような医療従事者も含みます。そのような捉え方をして、使用状況を聞いて広めていかないと、なかなかロボット社会は進まないのではないかと思います。
●腰痛の社会問題化と腰痛予防ロボットの進展
村田 多様な種類のロボットがあるなかで、最近少し多いのは腰痛に配慮したロボットです。なぜかというと、2013年に厚生労働省が「職場における腰痛予防指針」というガイドラインを出したからです。いわゆる看護や介護職、あるいは運送業などに従事する人たちの腰痛が、社会問題と言えるレベ...