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新型コロナウイルスが経済に及ぼす最悪のシナリオとは?

新型コロナウイルスと経済問題(1)経済悪化のメカニズム

柳川範之
東京大学大学院経済学研究科・経済学部 教授
情報・テキスト
新型コロナウイルスの影響で、経済状況は悪化の一途をたどっている。歴史上稀に見る世界レベルでの供給サイドの停止は、今後どのような経済不況につながっていってしまうのか。そして、これに対処し得る方策とはどのようなものなのか。(全3話中第1話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10:10
収録日:2020/03/12
追加日:2020/03/29
≪全文≫

●新型コロナウイルスがもたらす経済的打撃


―― 皆さま、こんにちは。本日は、柳川範之先生に、今般の新型コロナウイルスの状況を、いかに経済的に考えていけば良いのかについて、お話を伺います。先生、よろしくお願い致します。

柳川 よろしくお願いします。

―― 現在(3月12日)、新型コロナウイルスが世界中にどんどん広がっています。これによって物流が停滞したり、経済活動が縮小したりという状況が続いています。日本の経済界でも、これが想定以上の大きな問題になるのではないかと懸念されています。リーマンショックの時には、金融市場でのバブル的なものがはじけましたが、今回の場合は、実体経済自体が世界的に停滞しています。これは下手をすると相当尾をひく問題になるのではないかという意見もあります。このあたりについて、先生の見立てはいかがでしょうか。

柳川 そうですね。やはり実体経済、特に人の移動、あるいは観光やイベントなどがかなり止まってしまっているということが、経済現象に非常に大きなショックをもたらしています。今の時点では、観光業やイベント業、航空業は収益が相当下がっています。これは日本だけではなく、世界中に広がりつつあります。経済的にマイナスなショックが働いているのだと思います。


●史上稀に見る、世界的な供給サイドのブレーキが起きている


柳川 よくよく考えてみると、もし今想定されているようなことが世界中に広がっていくとすると、これだけ世界中の供給サイドに大きなブレーキがかかったという例は、過去ほとんどなかったのではないかと思います。想定されるとすれば、日本であれば東日本大震災が非常に大きなインパクトをもたらしました。東北地方が全ての物流が止まってしまいましたし、しばらく生産もできませんでした。

 しかしそれでも、電力の問題はあったにせよ地震の影響は大きくない地域もありました。例えば関西では、物が生産できたので、そこから一気に物資を送ったりして、経済を盛り上げることができました。それに対して今は、日本全体、世界全体に被害が広がっています。

 もう一つ、思い起こすと大きなインパクトがあったと思われるのは、アメリカの9.11の時です。やはりこの時には、ニューヨークやワシントンで一気に経済が止まりました。ある種のテロリスクを受けて、航空需要も大きく冷え込みました。しかしやはり、このインパクトは航空需要に限定されており、例えば日本で、鉄道に乗るのが怖いというような状況はほとんどありませんでした。その意味では地域的には限定的で、世界中でテロが起きるだろうとも考えられていませんでした。時間的にも限定的だったと思います。

 それに対して今回の場合、世界中にウイルスが蔓延してしまったので、人の移動が停止したり、生産がうまくいかなくなったりして、しかもその期間が見通せなくなってしまいました。その意味では、今までに例を見ない、グローバルなサプライサイドのショックが起きています。このインパクトはかなり大きいのではないかと心配されています。


●経済悪化のシナリオはどのようなものか


―― 当初、問題となったのはサプライチェーンでした。例えば中国・武漢にあった工場が動かなくなり、サプライチェーンが切れてしまうことが指摘されていました。しかし今後、この新型コロナウイルス問題がもし長引いてしまったら、どのような道筋で経済が悪くなってしまうのでしょうか。

柳川 このあたりは、経済が大きな危機に陥るかどうかの分かれ道なので、少し丁寧に説明する必要があるかと思います。何かを生産できない事態が生じたとき、その期間に物流や交通が止まってしまうのは、残念ながらしょうがありません。経済が大きく問題を起こすのは、そのショックが起きた後、その影響を引きずってしまうときです。場合によっては、そういった事態が終息してもその影響が残るだけでなく、悪循環を起こして、さらに大きな被害が広がっていく可能性もあるということです。

―― それは具体的にはどんなものなのでしょうか。

柳川 例えば、あるショックで物が売れなくなって工場が止まったとします。何事もなく問題が解消すれば、工場は生産を再開できるのですが、この売れない期間に会社(工場)が潰れてしまったらどうでしょうか。この場合、生産が再開し人が戻って、輸送ができるようになったとしても、会社自体がなくなっているため、どうしようもありません。

 さらに、その会社が倒産したことによって、そこに物を卸していた部品会社が倒産することもあります。そうなると、その部品会社は他の会社にも物を卸していた場合、もともとなんともなかった会社も部品が手に入らなくなり、生産ができなくなります。結果として、その会社もうまくいかなくなるかもしれません。

 さらに...
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