●新型コロナウイルスがもたらす経済的打撃
―― 皆さま、こんにちは。本日は、柳川範之先生に、今般の新型コロナウイルスの状況を、いかに経済的に考えていけば良いのかについて、お話を伺います。先生、よろしくお願い致します。
柳川 よろしくお願いします。
―― 現在(3月12日)、新型コロナウイルスが世界中にどんどん広がっています。これによって物流が停滞したり、経済活動が縮小したりという状況が続いています。日本の経済界でも、これが想定以上の大きな問題になるのではないかと懸念されています。リーマンショックの時には、金融市場でのバブル的なものがはじけましたが、今回の場合は、実体経済自体が世界的に停滞しています。これは下手をすると相当尾をひく問題になるのではないかという意見もあります。このあたりについて、先生の見立てはいかがでしょうか。
柳川 そうですね。やはり実体経済、特に人の移動、あるいは観光やイベントなどがかなり止まってしまっているということが、経済現象に非常に大きなショックをもたらしています。今の時点では、観光業やイベント業、航空業は収益が相当下がっています。これは日本だけではなく、世界中に広がりつつあります。経済的にマイナスなショックが働いているのだと思います。
●史上稀に見る、世界的な供給サイドのブレーキが起きている
柳川 よくよく考えてみると、もし今想定されているようなことが世界中に広がっていくとすると、これだけ世界中の供給サイドに大きなブレーキがかかったという例は、過去ほとんどなかったのではないかと思います。想定されるとすれば、日本であれば東日本大震災が非常に大きなインパクトをもたらしました。東北地方が全ての物流が止まってしまいましたし、しばらく生産もできませんでした。
しかしそれでも、電力の問題はあったにせよ地震の影響は大きくない地域もありました。例えば関西では、物が生産できたので、そこから一気に物資を送ったりして、経済を盛り上げることができました。それに対して今は、日本全体、世界全体に被害が広がっています。
もう一つ、思い起こすと大きなインパクトがあったと思われるのは、アメリカの9.11の時です。やはりこの時には、ニューヨークやワシントンで一気に経済が止まりました。ある種のテロリスクを受けて、航空需要も大きく冷え込みました。しかしやはり、こ...