●中国経済の要は失業者への対処である
―― 先ほど、ガバナンスの問題と経済の問題を議論されていました。これらについて、より詳しくお話し頂ければと思います。まず経済についてですが、今後どのようになっていくと分析されていますでしょうか。
先ほどのお話にもあった通り、中国はウイルスの抑え込みがなされており、2020年4月上旬の時点で、経済の工場も順調に動いているという情報も入ってきています。これをどう見ていくかという点です。それに加えて、世界経済がどうなっていくのかという部分です。
小原 まず中国経済についてです。2020年1月~2月の時点で、中国経済の状況は非常に悪化していました。3月から正常化に向かい動き出しましたが、中国の経済担当官庁やその上にいるリーダーは、失業の発生を最大のリスクと考えていました。中国の場合、13~14億の国民に飯を食わせるという、非常に大変な課題を中国共産党が達成したからこそ、ソ連が崩壊してから何十年たってもいまだに、政権を維持できています。そのため、失業者が増えれば、社会的な不安が生まれかねません。
そして、職を与えるという観点からすれば、いつまでもソーシャル・ディスタンス(社会的距離)を保つ規制を続けることは、合理的ではありません。こうした規制は感染症対策にとって最も効果的なのですが、これを続けると、経済がうまく回っていかないからです。
●特に最近成長しているサービス産業への打撃が大きい
―― ソーシャル・ディスタンス(社会的距離)とはここでは、物理的な距離を取ることだけではなく、活動を止めてしまうということも含めてのお話でしょうか。
小原 社会的な距離を取るということが特に重大な意味を持つのは、サービス産業などです。例えば人が集まってご飯を食べるような飲食店では、人との距離が近くなるので、これを通じて感染が拡大します。日本では「クラスター」という言葉も使われていますが、人が一箇所に集まり、近い距離で食事やイベント活動を行うのを止めるよう、要請がされています。
中国人はこうした活動が大好きなので、レストランや観光などサービス産業への打撃は大きいのです。航空機などの交通関係や、映画館や遊技場などのイベント関係なども、一斉にお客を失います。彼らの場合には自転車操業を行っているので、毎日の売り上げがないと、手元資金がなくなります。そ...