●ウイルス問題終息の先にある米中のデカップリング
―― 非常に難しいのは、まさに世界的な大流行になってしまったので、終息時期が国によって変わってくる点です。中国は、とりあえず一旦終息したと判断し、宣言に向けて動いています。もちろん第二波、第三波の可能性はあります。日本は、4月上旬の段階で抑え込んできたものが、今後どうなっていくのかという問題もありますし、ヨーロッパやアメリカの拡大も注視する必要があります。さらに言えば、今はあまり取り上げられていませんが、南北問題ともいうべきか、途上国への波及も考えられます。
こうした世界全体で見た今後の展望はどのようなものなのか、それに対して日本はどのような手を打っていけば良いのかについて、ご意見を頂ければと思います。
小原 この問題は、米中関係に引きつけていえば、「デカップリング」といわれる現象に関わります。アメリカからすれば、中国の台頭ということで、中国との間では5Gなどに象徴されるような技術的覇権をめぐる闘争があります。ハイテク技術が経済面だけでなく、軍事的・安全保障的にも大きな役割を果たすようになってきています。
アメリカは現在、日本を含めた同盟国やパートナー国に、ファーウェイやZTE (中興通訊)のような中国企業に対してアメリカのテクノロジーを使わせないよう、要請してきています。こうした米中間でのデジタルなデカップリングが、感染症が起こる前から動いていました。これが、今回の感染症で進んでしまう可能性があります。これは、ソーシャル・ディスタンスにも関連します。社会の根底でも、距離を置くということがあるわけです。
―― まさに、中国からサプライチェーンを引き上げるということも含めてということでしょうか。
小原 そうですね。中国をサプライチェーンに入れないということが、本当にできるのかという点もありますが、ハイテクの世界ではすでに始まっています。しかし、医薬品では可能なのか、可能だったとしても実際に実現したらどうなるのか。アメリカの慢性病を抱えている人たちは、薬を失うことになるため、実際上そんなことはできないと思います。にもかかわらず、そうした議論をする人たちはいます。さまざまな議論があるなかで、今後気をつけて見ていかなければならないのは、こうしたデカップリングです。