●他人に感謝して利他的な心を持っている人は幸福度が高い
さて、2つ目は「つながりと感謝の因子」、「ありがとう因子」です。つながりと感謝のある会社は幸せです。会社だけではなく、私生活にも当てはまります。また、下に書いてあるとおり、利他性も重要です。
まず多くのことに感謝する人は幸せです。皆さん、感謝していますか。上司への感謝などしているでしょうか。おべっかのようなもので、あまりしたくないという人もいるかもしれません。家庭でパートナーや子どもに感謝していますか。もういまさらいえないという人もいますが、ぜひ感謝してください。そうすると、幸せになります。
本当に心から「ありがとう」と思うと、優しい気持ちになります。このようなときには、オキシトシンとセロトニンという脳内物質が出てきます。これらは「愛情ホルモン」と呼ばれています。先ほど指摘したドーパミンは、強い幸せを感じるときに出る物質でしたが、オキシトシンとセロトニンは優しい幸せを感じるときに出るのです。部下の皆さんの成長を、心から喜ぶような状態になると、「ありがとう、頑張ってくれたな」と自然と感謝できるようになります。そのような場合には、オキシトシンとセロトニンが分泌されるのです。
その結果、2つ目に挙げている通り、親切で利他的になります。他の人が頑張っているのだから、今度は自分がみんなに恩返ししようという、社会に貢献したいという気持ちが出てきます。そうなると幸せになります。この利他的な気持ちを、若いうちから強く持っている人もいます。看護師や介護士など、人のためになる仕事に就く人のなかには、子どもの頃からそうした仕事に就きたいと思っている人もいるのです。
一方で若い頃には、他の人のために行動することにあまり興味がなく、自分が立派になることや金持ちになることを目ざす人がいます。しかし実は、利他性は年齢とともに緩やかに上昇する傾向があるのです。やはり社会で恩恵を受けると、他の人のために生きなければならないという利他性に気づくように、人間は作られているようです。
もちろん個人差はあります。若いうちから利他的な人もいれば、残念ながら高齢になっても利他的にならずに、いつまでも自分が一番という人もいます。利己的な人は、幸福度が低いことは、データからも明らかです。自己主張ばかりするのか、それとも他の人に感謝したり、あるいは優しくしたりするのか、悩んだときには、後者の利他的で良い人を目ざしたほうが、実は幸せになるのです。
●友人は多いほうが幸福度は高い傾向がある
加えて、そのような良い人には、多様な友だちがいます。利己的で自分勝手、自分のことばかり考えている人は孤立します。孤立するとつながりがなくなり、幸福度は低くなります。実は、孤独は幸せの大きな敵なのです。
以前、博報堂と一緒に全国調査を行いました。その際に、1万人の被験者に友だちの数を尋ねました。すると、「友だちはいない」と書いた人が約9パーセントいました。今1億3000万人の日本人がいるうち、1000万人程度は「友だちはいない」と回答すると考えられるのです。さらに、その人たちの幸福度を調べると、非常に低いのです。本当に友だちがいないのか、実際にはいるけど「友だちではない」と低めに見積もっているのかは分かりません。しかし、低めに見積もるというのも、幸福度が低い証拠なのですよね。
ですので、孤立して一人ぼっちになっている人がいれば、その人に声をかけてあげたほうがいいでしょう。会社でも、社会でも、コミュニティも家庭もそうですね。もちろん、何かに熱中して1人でいるという場合は大丈夫です。健全な一人ぼっちという状態があり、例えば仕事に集中して、人と話すのさえも面倒くさいという人もいます。しかし、仕事を終えて一息つこうというときには、1人でいるよりも、お茶を飲む友だちや酒を飲む友だちなど、多様な人とコミュニケーションをとったほうが、幸せを感じるようなのです。
●多様な友人を持っていると人はレジリエンスが強い
友人の多様性については、あまり言及していませんでした。友達の数は少ないより多いほうがいいのですが、それよりも友だちの多様性のほうが幸せに寄与するのです。したがって、やたらと友だちが多いよりも、多少少なくてもさまざまな種類の人と付き合っているほうが幸せになるのです。
同じような気の合う仲間とだけ過ごしていたほうが、「気は楽だ」という人がいます。しかし、少し気が合わないかもしれませんが、そのような人も含めて、さまざまな人と接しているほうが、実は幸福になるのです。その理由は、いざというときに強いということです。折れそうになったときに立ち直る力を指す、レジリエンス(resil...