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「幸せをめざす人は不幸、めざさない人は幸せ」という研究がある

「心から幸せになるためのメカニズム」を学ぶ(6)独立と自分らしさの「ありのままに因子」

前野隆司
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授
情報・テキスト
「独立と自分らしさの因子」、(ありのままに因子)が、幸せになるための4つ目の因子である。他人と比較しすぎず、自分らしくいることで、幸福度は高まる。4つの因子はどれも重要で相互に関係しているが、その一方で実は「幸せをめざす人は不幸、めざさない人は幸せ」という研究結果もある。それはどういうことなのか。(全7話中第6話)
時間:10:47
収録日:2020/07/01
追加日:2020/09/08
≪全文≫

●第4の因子は「ありのままに」因子


 さて、最後の4つ目は、「独立と自分らしさの因子」、(ありのままに因子)です。ここスライドに書いてあるように、人の目を気にしすぎない人は幸せです。これも、日本人は苦手な傾向があるのではないでしょうか。人の目を気にして、人と自分を比べてしまう人は、幸福度が低い傾向があるのです。

 これまでに第3話で言及した地位財は、金・物・地位などの、他人と比較して優越をつける財でした。地位財による幸せは長続きしないという指摘は、他人と比較しすぎてしまう人は幸せになれないことを示しています。逆に、人の目を気にしすぎず、人と自分を比べすぎず、人は人、自分は自分という価値観を持っている人は幸せなのです。

 隣に大金持ちがいれば、「あの人は良かったですね、でも私は違うことを目指しているのです」、隣に優れた能力のある人がいても、「私はあの人とは異なる自分の能力を生かそう」という考えを持てる人、他人と比べた優越ではなく、「他人は他人、自分は自分」という価値観を持っている人、自分らしさを持っている人、そして自分のペースを守れる人は幸せな傾向があるのです。

 これも前回お話ししたセロトニントランスポーターSS型と関係しているように思えます。人と自分を比べて、出る杭は打たれると昔はいわれていました。現代では逆に、出る杭になることを勧められることもありますが、1人で目立って出る杭になる遺伝子を持っていない可能性がある日本人は、集団で力を合わせて異なる方向を目指してもいいという国づくり、社会づくり、会社づくりをする必要があると思います。

 ただ1つ付け加えると、日本人は先天的に心配性だから仕方がないかというと、実は性格の半分は後天的に変わるという研究結果があるのです。これは雑駁な議論なので、心理学者からはより厳密な議論を求められていますが、ともかく先天的な要素と後天的な要素があるのです。先手的に、つまり遺伝子によって心配性な人はいます。両親が心配性だと、子どもも心配性になりやすいという遺伝特性です。

 それでも、半分は文化特性なのです。私はアメリカに住んでいたことがありますが、血は完全日本人だが、完全にアメリカで育った日系アメリカ人3世などと話してみると、「俺は自分の力で生きるぜ」などと、完全にアメリカ人の考え方です。つまり、先天的にはわれわれと同じセロトニントランスポーターSS型を持っていたとしても、後天的に社会の影響で変わることができるということなのです。

 つまり、全ての性格の半分は生まれたときに決まりますが、もう半分は自分の努力で変えられるということなのです。この点が、人間、そして人生の面白い部分です。

 次のスライドにも出てきますが、今までに説明した幸せの4つの因子に関して、これは高い、これは低いなどと、いろいろあると思います。その結果を受けて、自分はダメだと思うのではなく、半分は変わらないですが、残りの半分は変えられるのです。ぜひ自分で心の状態をコントロールして、幸せになっていただきたいと思います。


●4つの因子をマクロに見ると、個人主義と集団主義に分類できる


 このスライドは今までの話のまとめで、「やってみよう」「なんとかなる」「ありのままに」「ありがとう」、この4つの因子が重要ということです。上側に青で、下側に赤で書いてあります。青字で書かれた「やってみよう」「なんとかなる」「ありのままに」という因子は、ドーパミンの作用と結びついています。どれも強い感情ですよね。自分がなんとかなると感じて、ありのままに過ごして、挑戦してみた結果、新たに踏み出せるのです。したがって、上は個人主義的な幸せです。先ほど欧米で強いと指摘したものです。対して、下側は「ありがとう因子」、つながりと感謝と利他性です。社会のなかで他人とうまく付き合うという因子です。こちらは集団主義的な因子ですよね。

 上が3つだからといって、個人主義の方が影響が強いという意味ではありません。因子分析の結果、偶然3個と1個に分かれただけで、4つの因子をよりマクロに見ると、個人主義と集団主義の2つに分類できるということなのです。

 ここまでの議論をまとめると、上側の何かに挑戦する個人の強さを持つこと、それから下側の他人とつながることが達成できていれば幸せということを指します。何かにワクワクしながら他人とつながりを持っている人は幸せだというのが、最もシンプルな言い方ではないかと思います。


●4つの因子のうち、どの因子が最も幸せに影響を及ぼしているのか


 さて、いろんな研究をしたのですが、どの因子が高ければ最も幸せなのか調べました。例えば、「ありがとうタイプの...
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