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幸せも不幸せも伝染する――幸せの輪を広げて世界平和へ

「心から幸せになるためのメカニズム」を学ぶ(7)幸福度を高める方法

前野隆司
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授
情報・テキスト
幸福度はどうすれば高めることができるのか。その方法として、4つの因子を意識するといいのだが、それぞれ些細なことでも少しずつ積み重ねていくことが大事だ。また、つらいときには「メタ認知」を行うといい。自分を上から見ることによってそうした状態を乗り越えられたとき、元の状態に戻っていくことができる。実は、幸せも不幸せもうつっていく。つまり、個人が幸せになれば、その幸せは周りにも伝染していくのだ。(全7話中第7話)
時間:07:26
収録日:2020/07/01
追加日:2020/09/15
キーワード:
≪全文≫

●「幸せの4つの因子」の実践方法


 最後にまとめとして、幸福度を高める方法についてお話しします。先ほどから述べているように、「やってみよう」「ありがとう」「なんとかなる」「ありのままに」という4つの因子を意識すると幸せになるわけですね。すでに述べたことも多いのですが、ここでまとめてみます。

 まず、「やってみよう」因子は夢や目標を明確化して、これワクワクすることに取り組んでみてください。夢や目標の明確化が苦手だという人は、放置しておいても構いません。強みを明確化するのもいいのです。本当は強みがあるといいですが、強みがないことをネガティブに思わないように、強みを磨こうと思うのでもいいのです。次に、成し遂げたことを明確化する。モチベーションを向上させるために行動を起こすこともいいでしょう。このように、「やってみよう」と思える人は幸せです。この点にワクワクした人は、この「やってみよう」に取り組んでみてください。

 2つ目の「ありがとう」因子に移ります。感謝を可視化するワークがあります。今日1日感謝したことを3つ書いてから眠りにつきましょう。これによって幸福度が高まることが分かっています。感謝不足だと思う人、さらにそうでない人でも、ぜひ一度取り組んでみることをお勧めします。とても優しい気持ちになって、「今日も良いことあったなあ」と幸せな気持ちで眠りにつけるのです。人間には心配事がたくさんあるので、失敗した、どうしようなどと思いがちですが、そういった嫌な気持で眠りにつくよりも、感謝で1日を終えて幸せな気持ちで眠りにつくと、次の朝も目覚めが良いのです。

 次に、利他的な行動を取るといいでしょう。立っている人に席を譲るなど、小さなことでも構いません。より大きなボランティアなどさまざまなことがあるでしょうが、利他的な行動を取ると幸せになります。対話、傾聴、許容が重要です。嫌いな人のことは話さないようにするのではなく、あの人も一生懸命取り組んでいるのだから許してあげようというような優しさを持つのです。加えて、ユーモア・冗談・笑いも重要です。さらには、笑顔・ハグ・スキンシップにも効果があります。これは最近では「3密(を避ける)」ということで家庭でないと難しいでしょうが、とにかくコミュニケーションは幸福度を高めることが分かっています。これが「ありがとう」因子ですね。

 3つ目の「なんとかなる」因子に関しては、私が主宰しているワークショップについてお話しします。過去の転機から得た強みを明確化することに取り組んでいるのですが、これは結構面白いのです。雑談を通じて、自分の転機(ターニングポイント)について考えるのです。「あのとき、大変なことがあったんだよ」と思い出すでしょうが、そこで何か強みを得られていないか、考えてみるというワークショップで、これがとても効果あるのです。

 日常会話で自分の過去の転機やつらかったことについて話すことは意外と少ないですが、これを共有するのです。例えば、私も転職した際には苦労しましたが、それを乗り越えるために一生懸命勉強したから能力も伸び、人間関係も築けて、大きな財産になったと思うと、それは良いことじゃないですか。つらかったけど良い経験だったという話、つまり「なんとかなった」経験を共有すると、非常に幸福度が高まります。

 さらに、課題・悩みを可視化、ポジティブな行動・ポジティブな表現と続きます。先ほども言及した、ポジティブな表現が重要です。ぜひ、今週1週間ネガティブな「でも」や「だって」という表現をやめてみてください。ネガティブな表現は癖になってしまいます。これを少し控える訓練をして、ポジティブな表現に変えていくと、個人の幸福度や周りの人たちの幸福度も高まります。

 最後に「ありのままに」因子ということですが、スキット・歌・ダンスなどを演じるといいです。これもワークショップで行っています。勧められてもなかなか難しいかもしれません。私が主宰している「ハッピーワークショップ」では、ここに挙げたさまざまなワークに取り組んで、最後に劇の発表をします。良かったケースや、幸せになったケース、将来の夢などを劇で演じると、幸福度が高まるのです。ぜひ機会があれば試してみてください。宴会のときでも構いません。


●メタ認知はつらいことを乗り越えるために有効


 それから、新たな一歩を踏み出してみる・自分を知る・メタ認知とありますが、最後にメタ認知の話をして終わりましょう。

 メタ認知とは、自分を上から見ることです。例えば、カッと怒りの感情が高まる瞬間がありますね。カッとなってそのまま怒るとハラスメントとなるかもしれませんが、そのときに5秒待ってください。「今、自分はカッとなっている...
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