古関裕而・日本人を応援し続けた大作曲家
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
B面だった「露営の歌」大ヒットの秘密…旋律と歌詞の意味
古関裕而・日本人を応援し続けた大作曲家(5)「露営の歌」の大ヒット
刑部芳則(日本大学商学部准教授)
1937(昭和12)年、日中戦争開始の年、ついに空前の大ヒット作が生まれる。発売数カ月で56万枚を記録した「露営の歌」だ。実はB面だったこの曲は、当時の大衆の圧倒的な支持を得て、戦時歌謡の一大ブームを巻き起こす。軍部の方針、レコード会社の販売戦略、そして戦地の兵士たちと古関の交流からヒットの舞台裏を探る。(全8話中第5話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:11分54秒
収録日:2020年8月18日
追加日:2020年10月27日
≪全文≫

●「露営の歌」がヒットした2つの理由


―― ちょうど前回スライドで見ていたところが1937(昭和12)年までということで、その年はまさに日中戦争が始まる年ですが、人によっては、古関裕而さんが本格的に出てきたのは、戦争が始まってからの戦時歌謡、軍歌で、そのことによって大作曲家の地位が確定したとおっしゃる方もいます。いずれにしても、ここで大ヒット曲が出ることになるわけですね。

刑部 この1曲でもって、古関さんの時代が来るといっても過言ではないと思います。「露営の歌」を聴いてもらうと分かるのですが、非常に勇壮なクラシックの格調の高さと、大衆が求める流行歌に見られる短調のメロディとが重なっているところが非常に大きい。

 それから、出征していく兵士たちにとっては、これから戦場に赴くという雄々しさと、なんとしても生きて故郷に帰りたいという望郷の念、その悲しさが折り重なっているのが、この曲の魅力だと思います。この曲が太平洋戦争が終わるまで絶大な支持を得たというのには、今言ったような2つの要素が含まれているからなのです。

―― 曲調も、まさにマイナー、短調の曲調ですね。「露営の歌」は「勝ってくるぞと勇ましく~」という跳躍がまた心に沁みて、心が高まるメロディですよね。しかも、「東洋平和のためならばなんで命が惜しかろう」という歌詞で終わる。当時の兵士の気持ちに寄り添っている部分が当然あるわけですよね。

刑部 そうですね。「死んで還れと励まされ」という歌詞が出てきますけど、兵士たちはなんとしても生きて帰りたいと思って出征しているわけです。古関さんは中国大陸に取材や慰問で行った時、会った兵士たちが「今、国の状況はどうですか」「私の出身地はここなのですけど、ここには私の妻がいます」「私には母がいます」「私には子どもがいます」と、自分の出身地が今、どういう状態にあるのかを気にかけていた、その声を聞いたそうなのです。古関さんとしてもそういう思いを受けとめて、「兵士たちは、自分たちの故郷というのが心配でならない。必ず生きて帰りたいのだな」と感じたと言っています。

―― 先生の『古関裕而』の中でも印象的なシーンがあります。戦地へ慰問に行かれた時の話で、ある陸軍病院で演奏会があった時、「露営の歌」を...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
ピアノでたどる西洋音楽史(1)ヴィヴァルディとバッハ
ピアノの歴史は江戸時代に始まった
野本由紀夫
万葉集の秘密~日本文化と中国文化(1)万葉集の歌と中国の影響
『万葉集』はいかなる歌集か…日本のルーツと中国の影響
上野誠
印象派の誕生~8人の主要な芸術家
マネ、モネ、ルノワール…芸術家8人の関係と印象派の誕生
安井裕雄
なぜ働いていると本が読めなくなるのか問答(1)読書と教養からみた日本の近現代史
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で追う近現代史
三宅香帆
クラシックで学ぶ世界史(1)時代を映す音楽とキリスト教
音楽はなぜ時代を映し出すのか?…音楽と人の歴史の関係
片山杜秀
ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯
ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生
江崎昌子

人気の講義ランキングTOP10
デカルトの感情論に学ぶ(1)愛に現れる身体のメカニズム
デカルトが注目した心と体の条件づけのメカニズム
津崎良典
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
認知バイアス~その仕組みと可能性(1)認知バイアス入門
誰もが陥る「認知バイアス」…その例とメカニズム
鈴木宏昭
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ