古関裕而・日本人を応援し続けた大作曲家
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「努力する天才」が最初に世に知られたのは早稲田の応援歌
古関裕而・日本人を応援し続けた大作曲家(3)大衆性の意味を知る
刑部芳則(日本大学商学部准教授)
コロムビアの作曲家になった古関裕而を待ち受けていたのは、自分の求める音楽性と、ヒット作に求められる大衆性との矛盾だった。葛藤すること8カ月、苦悩しながらレコード化に漕ぎ着けるも、鳴かず飛ばずの日々。そんな時に出会ったのが、作詞家の高橋掬太郎。彼との取材旅行、そしてディレクターの一言が大ヒットを生み出すことになる。(全8話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:16分24秒
収録日:2020年8月18日
追加日:2020年10月13日
≪全文≫

●なぜ、8カ月もレコード化されなかったのか


―― ただ、いざ、作曲家になった最初のうちは、かなり苦労が多かった。先生がこのご本(『古関裕而――流行作曲家と激動の昭和』)でも書いていらっしゃるように、なかなかヒット曲が出なかったということですね。

刑部 そうなのです。古関さんも最初から恵まれていたわけではありません。彼はクラシックの作曲家を目指していたから、国内では山田耕筰、ロシアではストラヴィンスキーを非常に尊敬していた。そういう作曲家に自分もなりたいと思っていたわけです。ところが、古関さんの場合、音楽学校も出ていませんから、コロムビアから与えられたのは、古賀政男さんなどが作曲するような、いわゆる流行歌、大衆のための曲だった。この時に古関さんが目指していたクラシック音楽的な、いわゆる芸術的なセンスというものが、かえって邪魔することになるのです。

―― 邪魔をするのですか。

刑部 ええ。古関さんは1930(昭和5)年の10月に専属作曲家になるのですけど、実際にレコードが最初に出たのは翌年、1931(昭和6)年の6月でした。約8カ月もたっているわけです。

―― それは長いのですか。

刑部 長いですね。この間、コロムビアからは給料が出ているわけです。コロムビアからすれば、ひと月に何曲という契約でやっていますから、すぐに作曲をして、それをレコード化して、ヒット曲を産んでもらいたいわけです 

 だけど、8カ月もの間、曲が出ていないということは、レコード会社側の意向と古関さんの芸術性というものが、なかなか折り合わなかったからだと思うのです。古関さんとしては、まだデビューしたてで若いですから、流行歌と言われても、すぐにクラシック音楽を作る夢を捨てることはできない。当然、一つの通過点だと思っていたでしょうし、どうせ出すならば、流行歌とはいえ、自分の芸術性を体現したクラシック的な音楽で作曲したいという欲が出ます。そうしたこともあって、なかなかレコード化されなかった。

 そして、ようやく1931年6月に出たのが、「福島行進曲」と、裏面の「福島小夜曲(セレナーデ)」という2曲でした。「福島行進曲」は同じ福島出身で、福島にいた時から仲がよかった野村俊夫さんが作詞をしています。B面、裏面のほうは、上京する前に個展で見た大好きな竹久夢二の「福島小夜曲...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
おみくじと和歌の歴史(1)おみくじは詩歌を読む
おみくじは「吉凶」だけでなく「和歌や漢詩」を読むのが本当
平野多恵
『源氏物語』を味わう(1)『源氏物語』を読むための基礎知識
源氏物語の基礎知識…人物関係図でみる物語の流れと読み方
林望
ルネサンス美術の見方(1)ルネサンス美術とは何か
ルネサンスはどうやって始まった?…美術の時代背景
池上英洋
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
クラシックで学ぶ世界史(1)時代を映す音楽とキリスト教
音楽はなぜ時代を映し出すのか?…音楽と人の歴史の関係
片山杜秀
日本画を知る~その技法と見方(1)写実・写意・写生
日本画で大切な「写意」「写生」の深い意味とは?
川嶋渉

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2025(30)西野精治先生に学ぶ「熟睡の習慣」
熟睡できる習慣や環境は?西野精治先生に学ぶ眠りの本質
テンミニッツ・アカデミー編集部
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
プロジェクトマネジメントの基本(4)スケジュール・マネジメント
スケジュール管理で重要な「クリティカル・パス法」とは
大塚有希子
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照