古関裕而・日本人を応援し続けた大作曲家
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古関裕而の戦時歌謡は戦時中、大衆の心の支えであった
古関裕而・日本人を応援し続けた大作曲家(6)戦時歌謡は大衆の応援歌
芸術と文化
刑部芳則(日本大学商学部准教授)
「露営の歌」「暁に祈る」「若鷲の歌」の3曲は、古関自らが選んだ戦時歌謡の代表作だ。「露営の歌」が満州旅行時のイメージから生まれたように、他の2作も、体験や経験を元にしているのだが、いずれも楽器を使わずに作曲されたというから驚きだ。そうして溢れ出したメロディは大衆を慰め、励ますこととなる。(全8話中第6話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10分57秒
収録日:2020年8月18日
追加日:2020年11月3日
≪全文≫

●頭の中から溢れ出すメロディ


―― 「露営の歌」の他に古関さんが作った戦時歌謡で有名な曲にはどのようなものがありますか。

刑部 古関さんは自分の戦時歌謡の代表作として3つ選んでいます。1つが「露営の歌」、それから「暁に祈る」、そして「若鷲の歌」です。

―― それぞれどういう曲になのでしょうか。

刑部 「暁に祈る」という曲についてですが、古関さんが中国大陸に行った時、揚子江を渡る際、小高い丘のようなところに1人の兵士が立っていたそうなのです。その兵士の姿を見て、どんな思いで今いるのだろうと考えて生まれたのが、「暁に祈る」です。作詞が野村俊夫さん、歌ったのが伊藤久男さんで、いわゆる「福島三羽ガラス」で作った曲になります。伊藤久男さんもデビュー以来、鳴かず飛ばずでヒット曲に恵まれなかったのです。古関さんは、豪快に歌う彼の歌唱法を引き立てることによって「暁に祈る」を売り出せないかという思いで作曲したようです。これが見事に当たって、野村さんも、伊藤さんも一流の仲間入りを果たすことができました。



―― 先生のご本を読んでおりますと、「露営の歌」も、奥様と一緒に満州に旅行に行かれて、帰りの汽車の中からご覧になったものを踏まえてお書きになったということですね。「暁に祈る」も、揚子江の兵士の姿をもとに書かれたということで、古関さんは実際に見たもの、感じたものを曲にしていく、描いていくというところに特別な才能があったのでしょうか。

刑部 そうですね。古関さんは作曲する際、一切楽器をお使いにならないのです。

―― 例えば、ピアノを弾いたりはされないのですか。

刑部 はい。もちろん、頭の中だけで考えるわけではなく、見た景色、様子から、自然と頭の中に楽曲のメロディが浮かんでくる。それを五線譜に書き取るというのが古関さんの特徴なのです。

―― 感じたものがご自身の頭の中で曲として流れ出すというイメージになりますね。

刑部 だから、古関さんの場合は作り出すというよりは、自然と生まれ出てくる、湧き出てくるという感じでしょうか。


●短調への変更が奏功し、23万枚のヒットへ


―― それはすごいですね。最後の「若鷲の歌」はどのような曲になるのでしょうか。

刑部 これはもともと、東宝映画...

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