●デジタル活用で「グローバルフェロー」を実現させる
―― 人と人をつなぎ、組織と組織をつなぐというのは、非常に分かりやすい指針ですね。その延長線上にダイバーシティも、デジタルも、グローバルも、さらにグリーンもある。その根っこの部分ですね。
藤井 そうです。まさにそういうコンセプトとして「対話と共感」を打ち出していこうということです。
―― まさに一番大事なテーマですね。
藤井 そうだと思います。
―― 逆に言えば、今まではネットワーキングのなかに入れてもらえなかった。そこに入り込むことが大事だと分かって、入り込みはじめたら、上がり方は劇的に早いでしょうね。
藤井 はい、そうなると思います。それから、先生方個人個人は、やはりそれなりにネットワークをお持ちになっている。それを目に見えるかたちにしていくというのはどうだろうか。個人と個人の一対一のつながりはネットワークとも言い難いわけですが、たとえば大学が背中を押してあげるなりして、それをもう少し意識的にしっかりした結びつきにする。
いずれは先生たちだけではなく学生も行き来できるようにしたり、お互いに学生を受け入れたりする。「こちらで研究して博士を取ってもらいましょう」というようなかたちで広げていくと、結びつきがしっかりしてくるので、これを広げていく。そのような方向で進めていくといいのではないかと思っています。
―― ネットワーキングの組み立てが、オックスフォードだったら多分クラブになっていると思いますが、そういう場所も誰かが見つけてきて、一緒に取り込んでくることで始まりますよね。
藤井 そうですね。
―― そういう感じでいいのですね。
藤井 そういうふうに思います。今はとくにいろいろなメディアも多様化していますから、いろいろな場所で広げやすいですよね。
大学でも「グローバルフェロー」という新しい仕組みを考えています。海外の先生をアポイントしてしまって、講義もやってもらうし、研究指導もやってもらう。さらに海外の先生の講義に学生が参加してもいいようにしてもらうとか、そういうことをやろうという話も今、進んでいます。
―― それはZoomができたら完璧にできますね。
藤井 そうですね。あとは時差の問題だけです。
―― どちらが早いほうを取るか、あるいは遅いほうを取るかだけで。
藤井 そうですね(笑)。
―― 先生が「対話と共感」と言われているなか、今回のデジタル化でZoomがかなり当たり前に使わざるを得なくなってしまう日常になりました。1年も経って使い慣れてしまったところもあるので、非常にやりやすいでしょう。
藤井 そうですね。それを皆が知ってしまったので、その部分は元に戻らないというか、よさが分かってしまった以上、ZoomはZoomで使う。そうは言っても、やはり対面でお話しすることの貴重さ、大事さが分かった側面もあります。ですから、どういう組み合わせでデジタルと対面を使い分けていくかというのは、次の工夫のしどころではないかと思います。
―― そうした延長線上にグローバルが出てくると、きわめて近くなりますね。
藤井 もともと私もとくに意識もせず、グローバルな学会などのミーティングをZoomやSkypeを使って行っていました。それが2020年には普通になったので、最近は気張らなくても普通にスケジュールして行うようになってしまいましたね。
―― それは急速にネットワークをつくるための武器になりますよね。
藤井 そうです。逆に言うと、そこに気づいてしっかりやっておかないと。他ではどんどんネットワーキングが進んでいて、大きく取り残されることにならないようにしなくてはいけないと思いますね。
―― 確かにインターフェースのソフトは、やはりアメリカや中国、ヨーロッパのほうが優れています。とりあえずオンライン教育になった段階で、私はコロンビアを見ていたのですが、最初にコロナが蔓延した段階で立ち上げていた。こんな戦乱のような状況下でよくやる人がいると思って見ていたのですが、毎週毎週、進化していくんですね。その進化のしかたがすごく速い。きっと大学のなかのサービスセンターのようなものが非常にしっかりしているのだろうというのが、大きな発見でした。
藤井 それは私も感じました。今も継続していますが、私はコロンビアの伊藤隆敏先生の講義をずっと見ていました。やはり去年の夏前ぐらいから、かなり面白いプログラムを毎週のように企画されています。しかも日本側のかなり著名な人を招いて、やっているわけです。しかもセミナーのパッケージとしてもよくできていて、すばらしいな、と思っていました。
これは、ある種大学のサービスとして、いわゆるメディアを使った発信のパッケージをしっかり作ってあるということだと思います。それなりに...