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大切なことは「社会実装」と「ネットワーキング」

東大を人と人をつなぐ学びの場に(2)世界大学ランキング

藤井輝夫
東京大学 総長
情報・テキスト
 東京大学に入学する学生の質の高さには定評がある。また、2020年11月から2021年1月までの期間で行われた「赤門脇トイレ」デザインコンペティションでは、学生たちの素晴らしいアイディアが多数集まった。彼らを教室だけの秀才にとどめることなく、社会や世界で活躍できる人材に育てることが重要となる。また、世界大学ランキングも話題になっているが、世界的な評価を上げるためには、国際的なネットワークをどれほど構築できているかも重要になる。国際ネットワークする現場を経験することは学生の成長にも大きく結びついていくのである。(全4話中第2話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:12:26
収録日:2021/03/17
追加日:2021/04/12
ジャンル:
≪全文≫

●学生の高いクオリティを生かした社会実装実験


―― 東京大学の強みについてですが、やはり北京大学やソウル大学や東京大学は、入学した段階の学生のクオリティがこれだけ高いところは、世界にもあまりないことだろうと思います。

藤井 そう思います。相当にクオリティが高く、とくに日本の場合は数学のレベルが非常に高いです。また、総合力というのか、総合的な教科のバランスも含めて相当にレベルが高いと思います。

―― そうですよね。「社会実装」の実験をするときに、実は東京大学が非常にいい学生さんを集めている。五神真先生(前総長)が中心になって行った社会実装実験で、(2020年11月から2021年1月までで)赤門のところのトイレを直すときに学生を使ったら、ものすごくいいアイディアが出てきたという話を聞きました。

藤井 そうですね。非常に短期間にすばらしい提案がたくさん出てきました。本当に学生の地力に驚きました。

―― あの話はかなり印象に残っています。藤井先生は、あらゆる場所でキャンパスのデジタル化をという話をされていますが、これに関連しても学生に社会実装させるような機会や素材がたくさんありますね。

藤井 ああ、そうですね。まだ詳しいところまで検討を進めてはいませんが、デジタル化の一つの観点として、学生に使ってもらえるアプリを開発したらどうかと議論しているところです。アプリができたら、卒業したときには「卒業生版」にして入れ替えて使えるようにしたらどうかなど、いろいろなアイディアがあります。今おっしゃっていただいたように、ここはむしろ学生たち自身からアイディアを聞いて進められたらいいのかもしれないですね。


●机の上で学んだことを、社会で活かす場をしっかり設けたい


―― 種子島を訪れたことがあります。宇宙センターでロケットをやっているところですが、東大の研究者や学生がたくさんいて、島全体がかなり活性化している。島の高校生に東大の学生さんたちがいろいろ教えてあげているので、ロケットだけではなく、水の話など非常に詳しいのです。あれには相当驚きました。種子島で、東京大学と東京大学の学生さんによる「社会実装トライアル」が進められているのですね。

藤井 ああ、そうですよね。長らく関わってやっておられますね。

―― あれをやると、地域の力が全体的に上がってくる。また、(SDGs策定にも関わった)ジェフリー・サックス教授が定期的にレポートをあげていたり、(私は時々オックスフォードに行きますが)オックスフォードでも非常に良質なリサーチペーパー(政策提言論文)が量産されていたりします。なぜこんなに出てくるのかというと、オックスフォードでは、うまく学生さんを組み入れていて、作成するペーパーのいわば手足の部分を学生がやっていて、それがうまくワークしているからだそうです。

 そういうオックスフォードの学生の平均値やジェフリー・サックスがいるコロンビア大学と比べると、(東大は)大学1年生に入った段階で、先生は「数学が強い」と言われましたが、どの科目も全般に強いです。

藤井 総合的にはそうだと思いますね。特に私が今、考えているのは、学生が普段の講義で勉強して身につけるものは、ある意味で机の上のことなので、それを生かす場をしっかり設けたいということです。まさに今言われたように、プロジェクトの一環として学生たちを駆り出して、しっかり手伝ってもらって、アウトプットまでつなげるようなことができるといいですね。

―― オックスフォードのモデルやジェフリー・サックスのモデルのようなことを東大でやれば、もしかすると圧倒的に強いのではないかと思います。

藤井 数年前から「指定国立大学法人制度」構想の一部として、「フィールドスタディ型政策協働プログラム(FS)」が始まっています。夏休み期間に学生たちを自治体へ送り、いろいろな課題を見つけて持ち帰らせる。それに対して、先生方にも指導を仰ぎながらどうすればいいのか課題解決の方向を検討する。さらにそれを現地へ持ち帰り、できることなら実装まで行うというプログラムがあるわけです。

 こういうものをしっかりレポートのかたちまで仕上げ、「これだけのアウトプットが出た」ということを明らかにしていくと、相当いい。先生方もかなり力を入れて指導されていますし、現地でもしっかり活動をしています。2020年はコロナのこともあり、現場に行けなかったのですが、普通に活動できるようになれば、しっかりしたものができるような気がします。


●東大の相対的順位低下とネットワーキングの問題


―― アジアのなかで、あるいは世界のなかで東京大学の順位が(下がっているということもありますが)。リサーチするところが正しいのかどうか、あれは全部英語でやるから別物ではないかとも思うのですが……...
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