●男女で指向と対話の好みが違う
―― 皆様、こんにちは。本日は、黒川伊保子先生に、「男の子、女の子の育て方」について、お話を伺いたいと思います。先生、どうぞよろしくお願いいたします。
黒川 よろしくお願いいたします。
―― 黒川先生は『息子のトリセツ』(扶桑社新書)、『娘のトリセツ』(小学館新書)の2冊の本を書いておられます。そこで、基本的な考え方として「男の子と女の子では、脳のスペックは一緒なのだけれど、とっさにどの機能を選択するかが違う」との表現をされています。これはどういうことでしょうか。
黒川 私はもともと人工知能の開発者で、今も人工知能の研究をしています。人間はどのように物を見て、どのように考えて、そしてどのように対話をし、どのように問題解決をしていくかという人間の脳の感性特性を、人工知能に学習させるために日夜分析して、38年になります。
その途中で気がついたのは、「男性と女性ではとっさに見る場所が違う」ということです。例えば男性は、遠くの動くものに瞬時に照準が合うという特性があります。女性は目の前、つまり半径3メートル以内を面で潰して舐めるように見て、わずかな変化を見逃さないという特性がある。
このように、男女でとっさに見る場所が違うということに気が付いたのです。そこから、例えば遠くの動くものに照準が合うということは、「ゴール指向」といって、プロセスよりも先にゴールに行きます。一方、周りを面で潰して舐めるように見るということは、1つのゴールではなく、あらゆることのプロセスに対して気持ちがいくのです。男女で指向と、対話の好みも違うということに気がついたのです。
1988年、ニューラルネットワーク(つまり人工知能のコアエンジン)の試作に富士通が成功した時に、私はそのチームの下働きのエンジニアでした。私のテーブル上のパソコンで、小さな脳細胞、たった8個の人工知能が、誕生しました。それに学習実験をさせながら、1991年に男の子を1人産んだのです。AIの学習実験をする人工知能エンジニアでありながら、自分は生身の子どもを育てるお母さんでもあるという、本当に稀有な体験をさせてもらいました。
―― まさにAIの第1段階といいますか、最初期の頃のお話だと思います。その頃に、男の脳のあり方、女の脳のあり方をコンピュータに教えるのは、どのような手法だったのでしょう。ア...