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お父さんが息子をたくましくしたいなら、妻を幸せにすべし

黒川伊保子先生に学ぶ「子育てのトリセツ」(4)お父さんの役割

黒川伊保子
株式会社感性リサーチ 代表取締役社長/人工知能研究者/随筆家
情報・テキスト
女の子の自我は4歳には確立するが、自我が増大しがちになるため、客観性を持たせてあげることが大切となる。そこで大切なのがお父さんの役割だ。ではお父さんは娘にどう接すればいいのだろうか。また、息子をたくましくするためにはお母さん、つまり妻を幸せにすることが大事だという。それはどういうことなのか。(全7話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:07:36
収録日:2021/06/28
追加日:2021/09/13
キーワード:
≪全文≫

●お父さんが娘との関係で気を付けること


―― 男のお子さんの場合は、第2話のお話ですと、お母さんが座標軸の原点である。そして、前回(第3話)の話のように、女のお子さんの場合は、女友だちのように遇する、というお話でした。

黒川 そうですね。

―― やはり、「座標軸の原点」と「女友だち」とでは違いますね。

黒川 女の子を育てるときと男の子を育てるときは、立場が違うのです。そういう意味では、女の子はもう4歳で自我があり一人前だから、この自我が増大しがちだという問題があります。世界の3分の2くらいが自分になってしまうのです。

 自分の前髪を少し短く切り過ぎたとなったら、「もう学校にも行きたくない」「世界中の人が私の前髪を笑っている」と思う時期が、女の子にはどうしてもある。このような自我のまま大人にしてしまうと、失敗を恐れたり、何かうまくいかなかったりしたときにショックが大きいのです。そのため、「世の中は君が思っているほど君のことを気にしていない。君が思っているほど君の失敗を笑っていない」ということ、つまり客観性を養ってあげる必要がどうしてもあります。

 それは、大抵は自然に育ってきます。何かに挑戦して挫折するといったことを繰り返しながら、自然に知っていく。あるいは、私の場合は物理学を専攻しているのですが、物理学が私に客観性をくれました。「相対性理論なんて、時間の流れさえも違う。私が思っていることは絶対ではないのだ」と本当に思いました。いろいろなやり方で女の子は、自分が世界の中心ではないということを知ります。ただ、やはりお父さんがそのことを早めに知らせてあげると、ずいぶんと楽だろうと思います。

 お父さんが「君が世界の中心ではないのだよ」ということを穏便に知らせる一番の手段は、お嬢さんよりも奥さんを優先することです。どうしたって娘はかわいいでしょう(笑)。子育てで不機嫌になっている奥さんよりも娘のほうがかわいいから、奥さんが少し感情的になって娘を叱り過ぎたりしたら、娘を庇って、「お母さんはすぐ感情的になるからね」などと言いそうになるのですが、そこは男性の方には我慢していただきたい。

 私の父が、それをきっぱりとやってくれました。私が小学校5年生の頃だったと思います。私は早くから口の立つ子で、母と喧嘩をするときも理詰めにして泣かせていたのです。でも、私は自分が正しいと思っている。そのときも、母が少し矛盾したことを言って、私が理詰めにして、今考えれば母を困らせていました。

 そこに父が帰ってきました。私は父にかわいがられていて、父は私のことを愛しているとの絶対の自信がありました。そのため、「このことをお父さんに言ったら、絶対に私の味方をしてくれる」と思って言いつけたら、父は黙って私の言うことを聞いてから、ぽつりと「母さんが正しいか、おまえが正しいか、俺は知らんぞ」と言ったのです。そして、こう続けました。「おまえに一つだけ言っておきたいことがある。この家は、母さんが幸せになる家だからな。正しいか、正しくないかではない。母さんを泣かせたおまえの負けだ」と言ったのです。

 そのときに私は、「お父さん、カッコいい」と思いました。そのときの感情は、当時は言葉にならなかったけれど、あとから思い返してみると、「男は、この人を妻と決めたら、日々の細かいことで正しいか正しくないかを言わずに、もう受け止めてしまう生き物なのだな」ということです。あのとき、私は、男性に対する強い信頼を父にもらいましたね。

 さらに、「確かに、私は正しいか正しくないかで母を理詰めにしたけど、日常生活の中では白黒どちらでもよかったな」と思った。「白黒どちらでもよかったら、母が白と言ったら白にしてあげればいいじゃない」と。その時から私は、覚悟が決まりました。

 そしてもう一つは、早く私も自分が幸せになる家を作ろうと思ったので、比較的、結婚が早かったのです。25歳で結婚しました(笑)。そのため、やはりお父さんの態度は女の子にいろいろないい影響があるのでは、と自分自身の経験で思いました。


●息子をたくましくしたいなら、妻を幸せにせよ


―― ですからお父さんも、男の子、女の子それぞれに責任が重大であり、役割が変わってくるのですね。

黒川 役割がありますね。

―― でも基本は、男の子の場合でも、女の子の場合でも、お母さんを守る、立てるのが基本なのですか。

黒川 そうですね。どんなに男女平等といっても、お腹に入れて育てて、おっぱい(あるいはミルク)をあげたお母さんと、そうでないお父さんはイーブンではないのですよね。やはり子どもの感性の最前線に立っているのはお母さんなので、そのお母さんに対してお父さんがどれだけサポートできるかで、自分の子どもがどうなるかが決まるのです...
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