●この世の対話は2種類しかない
―― そのような男女の違いを踏まえての話になりますが、男親、女親がいて、お子さんも男の子、女の子がいる。そこで、お互いの意思疎通をうまくするためには対話の方法も違うということが分かっていなければいけない、と先生は本でお書きになっています。「心の対話」「問題解決の対話」と設定して説明されているわけですが、それについてお話しいただいてもよろしいですか。
黒川 この世の対話には2種類しかありません。文脈の紡ぎ方が2種類しかないのです。それは「感情から始まるプロセスの会話」と「事実確認から始まるゴール指向の会話」です。
すでにお分かりだと思いますが、女性脳はどうしても共感型の対話を、そして男性脳はどうしても問題解決型の対話を選ぶことが多いのです。先ほど(第2話)話をさせていただいた、「子どもが気に障りましたか、すみません」という謝り方のように、気に障った気持ちに対して謝ることと、事実に謝ることは、全く違います。「うるさくして、すみません」は事実に謝っています。事実に謝ってしまうと、ゴールを目指さなければいけないので、自分の行動を正さざるを得ません。でも、「気に障って、ごめんなさい」は気持ちに謝ったので、「いやいや、それほどではありません」という具合になっていくのですね。
このように会話には、事実で始まる会話と、感情で始まる会話がある。事実で始まる会話は、問題解決は急げるけれども、実は心はつながらない会話なのです。私は、家族は押しなべて「心の対話」をするべきで、「問題解決の対話」は「心の対話」のあとにすればいいと思っています。
では、「心の対話」はどのように行うか。男性の方はよく、家に帰ってきて、妻と少し話そうかなと思ったとき、「今日、何してた?」と聞くのですが、これはダメです。いきなり「5W1H」で話しかけているからです。
思春期のお嬢さんがスマホに夢中になっているときに、「それは何?」と言ったとします。お父さんとしては、娘としゃべりたいから聞くのです。5歳の娘に「それは何?」と聞いたら、「これはウエディングドレス。ナナちゃん、お父さんのお嫁さんになるね」などと言ってかわいかったのですが、15歳の娘に「それは何?」と言ったら、「はぁ?」と言われ、フイッと立って部屋に行ってしまったりすることがあるわけです。
実は、思春期以...