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家族の対話は問題解決型ではなく、「心の対話」をすべし

黒川伊保子先生に学ぶ「子育てのトリセツ」(5)心の対話と問題解決の対話

黒川伊保子
株式会社感性リサーチ 代表取締役社長
情報・テキスト
男性脳と女性脳の違いを踏まえたうえで、家族でうまくコミュニケーションを取るにはどうすればいいか。黒川伊保子氏によると、家族での対話はおしなべて「心の対話」をすべきだという。多くの男性が苦手とする「心の対話」をするコツとは。(全7話中第5話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:07:39
収録日:2021/06/28
追加日:2021/09/20
≪全文≫

●この世の対話は2種類しかない


―― そのような男女の違いを踏まえての話になりますが、男親、女親がいて、お子さんも男の子、女の子がいる。そこで、お互いの意思疎通をうまくするためには対話の方法も違うということが分かっていなければいけない、と先生は本でお書きになっています。「心の対話」「問題解決の対話」と設定して説明されているわけですが、それについてお話しいただいてもよろしいですか。

黒川 この世の対話には2種類しかありません。文脈の紡ぎ方が2種類しかないのです。それは「感情から始まるプロセスの会話」と「事実確認から始まるゴール指向の会話」です。

 すでにお分かりだと思いますが、女性脳はどうしても共感型の対話を、そして男性脳はどうしても問題解決型の対話を選ぶことが多いのです。先ほど(第2話)話をさせていただいた、「子どもが気に障りましたか、すみません」という謝り方のように、気に障った気持ちに対して謝ることと、事実に謝ることは、全く違います。「うるさくして、すみません」は事実に謝っています。事実に謝ってしまうと、ゴールを目指さなければいけないので、自分の行動を正さざるを得ません。でも、「気に障って、ごめんなさい」は気持ちに謝ったので、「いやいや、それほどではありません」という具合になっていくのですね。

 このように会話には、事実で始まる会話と、感情で始まる会話がある。事実で始まる会話は、問題解決は急げるけれども、実は心はつながらない会話なのです。私は、家族は押しなべて「心の対話」をするべきで、「問題解決の対話」は「心の対話」のあとにすればいいと思っています。

 では、「心の対話」はどのように行うか。男性の方はよく、家に帰ってきて、妻と少し話そうかなと思ったとき、「今日、何してた?」と聞くのですが、これはダメです。いきなり「5W1H」で話しかけているからです。

 思春期のお嬢さんがスマホに夢中になっているときに、「それは何?」と言ったとします。お父さんとしては、娘としゃべりたいから聞くのです。5歳の娘に「それは何?」と聞いたら、「これはウエディングドレス。ナナちゃん、お父さんのお嫁さんになるね」などと言ってかわいかったのですが、15歳の娘に「それは何?」と言ったら、「はぁ?」と言われ、フイッと立って部屋に行ってしまったりすることがあるわけです。

 実は、思春期以降の女性の脳には、男性のアクションや言葉に対して「私のことを攻撃しているのでは」と疑う警戒スイッチがついています。(大脳の)辺縁系についていて、相手がどんなに素敵なお父さんであろうと、愛している夫であろうと、その大脳が思っていることよりも素早くしっかりと入ってしまう警戒スイッチなので、いきなり5W1Hで話しかけられると「威嚇された」と思って防御に入ってしまうのです。

 だから、5W1Hの質問をしない。いきなり相手の欠点を言わない。相手が「今日、こんなことがあったの」と楽しい話をしたのに、「おまえ、そんなことよりも宿題はやったのか」と言うお父さんが割といるのです。「問題解決型の対話」をしてしまう方は、事実を確認して、危険なこと、足りないことを回避することを目的にしているので、楽しい会話は展開しないのです。


●「共感型」の対話をするコツ


黒川 これには、コツがあります。共感型の会話のコツは、相手の言ったことがポジティブなことなら、とにかく「いいね」で受ける。「こいつ、宿題したのかよ」と思っても、「こんな映画を観たんだ。楽しかった」と言われたら、「おお、よかったな」と「いいね」で受けるということです。何か言わなくてはいけないのであれば、そのあとに言う。

 それから、相手の話がネガティブだったときはどうか。「こんなことがあって、大変だったのよ」と言われたときには、「わかるよ。大変だったね」と受ける。ですが、娘とお父さんとの会話で「わかるよ。大変だったな」と言うと、すごくしらじらしい感じがするので、「そうか」と聞くのです。「そうか、そうなんだ」と聞いてあげると、かなりいい感じになると思います。

 「いいね」「わかる」「そうか」で、話を進めていくというのが、共感型の人が話しかけてくれたときですね。

 では、自分から共感型の対話を始めるときにはどうするか。これもコツがあって、質問から始めてはいけません。自分の話から始めます。「今日さ、こんなことがあって父さん、トホホだよ」というところから始めると、「お父さんはこういうところあるから気をつけて。ところで、お父さん……」と話が進んでいく。

 「話の呼び水」というのですが、自分が見たもの、感じたもの、食べたものを話す。一番いいのは少しトホホな話で、それが相手の情を喚起します。そういうことがなかったときには、頼りにしてみる。「今度、母さ...
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