テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
テンミニッツTVは、有識者の生の声を10分間で伝える新しい教養動画メディアです。
すでにご登録済みの方は
このエントリーをはてなブックマークに追加

定年後、順調にいっている人たちの共通点とは何か

定年後の人生を設計する(5)定年準備のための7か条<前編>

楠木新
人事・キャリアコンサルタント
情報・テキスト
定年後、順調にいっている人たちには共通点がある。それをもとに、実際に「どう行動すべきか」という観点からまとめ、定年準備のための7か条として解説する(今回はその前半講義)。大事なのは「行動様式で考える」ことだ。(全6話中第5話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:09:35
収録日:2021/08/25
追加日:2021/10/26
タグ:
キーワード:
≪全文≫

●思考ベースではなく、行動ベースで準備する


―― 次に、楠木先生にどのように行動していけば良いのかという行動様式について、お話を伺いたいと思います。先生はご本の中で「頭で考えるよりも行動様式で考えることが大事」だとお書きになっていますが、これはどういうことでしょうか。

楠木 定年前後の人にずっと話を聞いていますが、定年後の状況などの話を聞いたとき、一番印象に残っているのは、やはり行動が大事だということです。

 つまり、頭で何か考えて動くよりも、まず行動して、その中で宿題をもらい課題を解決していくというパターンの人は非常にうまくいっていると率直に感じました。つまり、人は頭で考えてから行動するよりも、まず行動してその知見を持って何かを考えていくことのほうが圧倒的に大切で、行動できる人は何かを見つけ出しているというのが、私の実感です。

 一方、頭ではいろいろ考えているけれど、「いや、そうなるとなかなかうまくいかないな」といって足が動いていない人は、定年後の居場所や、会社の仕事に代わるものを見つけるのがなかなか難しいだろうと何度も感じてきました。

 そのため、割に順調にやっている人の行動の部分を取り出して、少しまとめて考えてみました。それを7か条にして本などで紹介していますが、それぐらいどう行動するかが大事だというのが、私が話を聞いてきた実感です。

 その前提を少し話すと、人間はだいたい行動ベースになると、同じようなことをするということです。つまり、頭の中ではいろいろと講釈を述べるのですが、行動ベースになると、あまり違いのないことをします。そのため、行動の部分をきちんと見つめていくことも大事だというのが、取材面でもう一つ感じたことです。


●定年準備のための第1条:焦らずに急ぐ


―― なるほど。ではぜひ、その7か条を個別に聞いていきたいと思います。まず先生が第1条で挙げているのが、「焦らずに急ぐ」ことです。

楠木 そうですね。これは矛盾していることかもしれませんが、先ほども少し話したように、(定年準備は)50代でも十分間に合うのですが、何か思いつきで楽しいことができたり、社会とつながることができたりという、そのことがすぐに身につくわけではありません。やはり一定の試行錯誤と準備が必要だと考えています。

 その準備についてですが、一つは自分に向いているものを探すフェーズがあります。例えば起業・独立が良いのか、学び直しが良いのかなど、これから取り組むことを探すフェーズです。そして、もう一つは探したものを深めていくというフェーズ。この2つがあると思います。

 どちらも一定の試行錯誤は避けられません。自分でやっていくことなので、マニュアルやノウハウだけではやれません。そのため、あまり急ぎ過ぎてうまくいくことはないので、焦ってはいけないのですが、できるだけ早くからやったほうがいいでしょう。50代以降でも間に合うのですが、できたら早めから準備をしていけばいいと思います。

 そのときの一つのポイントとして、会社にいるうちに始めるのがすごく大事です。多くの場合、日本の会社は共同体の位置づけを持っているので、「仲間が集まっている」という部分があります。いろいろな情報交換をしたり、また検討していることを他の人が応援してくれたりすることもあります。会社を辞めて、定年後に独りぼっちになってから考えたりするよりも、会社にいるうちに進めていったほうがいいと、次のステップのための行動を進めていったほうがいいという意味で、「焦らずに急ぐ」という条文を入れています。

 繰り返しになりますが、50歳から準備を始めれば、60歳まで10年近くやれるので大丈夫です。しかし、会社を退職しないうちにやることがポイントだと私自身は思っています。


●定年準備のための第2条:趣味の範囲にとどめない


―― 次に第2条ですが、これもドキッとされる人が多いかもしれません。「趣味の範囲にとどめない」ということです。趣味の範囲とはどういうことですか。

楠木 これは少し分かりにくいかもしれないのですが、趣味は趣味として持つことは、どんな形であっても素晴らしいことです。しかし、社会的な要請に応えるという意味では、できればわずかでもお金になることにこだわることが大切だと思います。

 これは趣味の内容によっても異なるので、絶対的なものはありません。例えば、老人ホームに頼まれて楽器の演奏に行くといったとき、交通費など寸志でもいいのでお金をもらえるレベルまで目指すことが、一つのポイントだと思っています。お金が多い・少ないということよりも、少額であってもお金がもらえること自体、社会とつながっている一つの証しです。そういう意味では、趣味をやるにしても、自分の範囲だけにとどめるのではなく、少し...
テキスト全文を読む
(1カ月無料で登録)
会員登録すると資料をご覧いただくことができます。