●小売業の消滅を尻目に疾走するアマゾン王国
次にアマゾン(Amazon)です。アマゾンは世界最大・最強の消費財の販売・宅配で、あらゆる商品を最速に安価で提供する。アマゾンプライムで頼むと、翌日に届いたりします。世界中、どこの商品を頼んでも来るわけで、これも凄まじいことです。
そのために、陸海空の運搬、処理のロボット、倉庫など、全て世界最強のものを持っています。さらにアマゾンのクラウドサービス(アマゾンウェブサービス:AWS)が相当の収益源になっています。これがあるために、いろいろな企業がディープラーニングできるわけです。
ただ、何でも設備投資に回してしまうため、利益率は非常に低い。ベゾス氏は創業当初からそういう考え方です。まだ2兆ドルには達していませんが、2021年に日本円で190兆円(2兆ドル近く)を超えました。
アマゾンは大きな競争力を持っているため、他の小売業がどんどん消滅していきます。毎年、たくさんの小売業が閉店していくのですが、2021年は小売りの純減が約1万店に達したそうです。
そろそろベゾス氏には考えてもらいたいところです。何十年か前まで農業がアメリカのGDPの半分ほどを占めていましたが、今は2パーセントしかありません。同じことが起きている。それで、何か特別なことがあるのかというものだから、トランプ氏に嫌われるわけです。
●マイクロソフトのモデルチェンジと新たな躍進
マイクロソフトも目覚ましくモデルチェンジを遂げ、今や2兆ドル企業になっています。
マイクロソフトでは、WindowsがOSとして世界を席巻した後、一時期はグーグルやアップルに主導権を奪われていました。これはiPhoneの威力をビル・ゲイツ氏が見損なったためで、後から悔やんだと聞きました。
ところが、この数年、マイクロソフトは非常に変わってきました。自前のWindowsではなくAndroidを使用してスマホをつくったりして、非常におおらかになってきたようで、全面的な展開を行っています。
これを行っているのはビル・ゲイツ氏ではなく、インド人のナデア・サティア氏です。インドのIIT出身の超天才ですが、非常に人柄がよく、穏やかな人のようです。
彼の造語に「Frenemy」というものがあり、「過去の敵を友達にしてしまう」と、いかにも人格者のようです。多くのトップ企業が後退する中、これだけのモデルチェンジを行ったのはすごいことだと思います。
●フェイスブックの光と影
それからフェイスブック(Facebook)です。SNSという仕組みはフェイスブックのザッカーバーグ氏がつくったといっても過言ではないと思いますが、世の中の全ての人びとを「友達」にするネットワークということです。
今や利用者が30億人近くになっているというので、これは地球上の先進国の人口を全部足したより大きいわけです。あの「いいね!」というのは何にひもづいているかが出ているわけですから、それだけのプライバシーのデータが全部手に入ってしまう。これらを占有しているので、「いいね!」だけでどんな分析もできるわけです。30億人が「いいね!」を使っているわけですから、このビッグデータをAIで機械学習すると、個人の属性や好み、主張は全部見えてしまいます。
ということは、これは政治に使えるということです。あとで詳しく言いますが、実際にトランプ氏の選挙に使われたと言われています。
そういうことは本当はやってはいけないのだけれど、脇が甘くて、ケンブリッジ・アナリティカという会社にフェイスブックの個人データが流れたということです。これは非常に批判され、司法省やFTC(米連邦取引委員会)に徹底的に追及されました。
ともあれ、そういう力を持っているというのは恐ろしいことで、ある人に言わせると「ローマ皇帝以上の力」だと言われています。何といっても30億人ですからうなずけるところです。
●リブラの登場、フェイスブックの仮想通貨は未来を拓くのか
フェイスブックを立ち上げたザッカーバーグ氏は大変な天才ですが、何を考えているのかよく分からないところがあります。2019年6月には突然「リブラ(Libra。現Diem)」というものを出したいと言い出しました。
中国でも、アリペイやウィーチャットペイなどの電子マネーが普及していて、何億人もが利用しています。しかし、リブラは電子マネーではなく仮想通貨で、「リブラ・ブロックチェーン」をもとに運営するということです。
ブロックチェーンでは、どこかが壊れてもお互いに競争して治してしまうという特性があります。ですから、たとえ戦...