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ウクライナ侵略で激化した情報戦争と核恫喝の問題

ウクライナ侵略で一変した国際政治(4)情報戦争と核恫喝

小原雅博
東京大学名誉教授
概要・テキスト
ウクライナ侵略は情報戦争の熾烈さを浮き彫りにしている。人々の意思も認知も左右する情報とどう対峙していくかは、今われわれが直面している課題である。プーチン大統領による核恫喝の問題はより深刻に世界の歴史を揺るがしつつある。今歯止めをかけるのは、日本の役割ではないだろうか。(全5話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:16:18
収録日:2022/05/10
追加日:2022/06/17
カテゴリー:
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≪全文≫

●情報戦争と情報分断


小原 今、「情報戦争」ということがいわれています。われわれ日本の企業も含めた情報分野では、「デジタルトランスフォーメーション」という言葉も出ていて、非常に重要な段階にあります。この情報というものが持つ役割が、今回の戦争でも強く意識されました。

 例えば実際にサイバーを使うような攻撃もありますが、ニセ情報の役割も大きいのです。ロシア国内では情報コントロールが行われ、西側からの外部情報をシャットアウトしました。これにより自分たちのプロパガンダとなるニセ情報を流し、今回の戦争に対する正当性を主張して、国民の支持を得ていく。このような政治的操作が情報分野で行われ、かつ非常に巧みになってきています。

 もちろんウクライナのほうも、自分たちの戦争に資するような情報をいろいろと出しています。今回、こうした情報戦争が非常に大きな役割を担い、影響を与えていることを、われわれは注意しておく必要があるだろうと思います。

 情報戦争ないし情報の分断のようなものは、別にロシアとウクライナだけで起きているわけではありません。例えばアメリカにはFOXニュースという非常に保守的なメディアがあり、これに影響される人もたくさんいるわけです。また、ロシアのプロパガンダをそのまま流すようなメディアやSNSもあります。アメリカの中も別に一枚岩ではないので、そうした中で「民主党は、プーチンあるいはロシアに対して敵対的になるような働きかけを行っているのだ」ということを流すわけです。

 情報をめぐる自分たちの考えが一致しないと、そこに対立が生まれ、社会が分断される。それを加速させ、分断を起こそうとする働きかけをロシアも行っている。そうしたせめぎ合いがあることを、われわれは頭においておく必要があると思います。


●情報規制と言論の自由という問題


―― 情報をきちんと分析して捉えようというときに、「どちらか片方だけの情報を聞いていると分からなくなる」とよく言われますね。例えば今の日本では、明らかにアメリカないしイギリスも含めた西ヨーロッパ系の情報が多く入っているため、「ロシアは悪い侵略国である」という価値観が、ある程度醸成されていると思います。では、相手の言うことも聞いてみようとすると、片やロシアからは「ネオナチだ」とか「東が虐殺されている」という情報が流れてくる。結局、両方の情...
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