●「日本」への思い入れを持つ行動派の僧として
―― 日本仏教の名僧・名著、今回は日蓮のお話を承ろうと思います。
日蓮は1222年にお生まれになって、1282年にお亡くなりになりますので、(道元よりも)また少し後の時代の方になります。日蓮、特に日蓮宗というと、近代日本においてもかなり大きな影響を与え続けた教派ですが、それはなぜだと思われますか。
賴住 特にナショナリズムを信奉し、日本ということに非常にこだわった人の中では日蓮宗に帰依した人が多いと思います。(日蓮は)「自分は日本の柱になろう」と、ご自身でもおっしゃっています。仏教を受け入れた日本というものを、さらに仏教を通じて発展させていくことを日蓮は考えておられたと思いますが、そこには日本に対する思い入れというところが一つあると思います。
それから、日蓮は現実の中で行動していくことを非常に重んじておりました。
―― 社会を変えていこうというところですか。
賴住 そうですね。そういう変革の志。「今の社会は非常に堕落して、間違っている。なんとか変えなければいけない」という非常に強い心を持って、ご自身が実践に励まれたのです。
自分の信念に従って、一時は死刑を言い渡され、死んでしまう直前までいったのですが、なんとか許されて流罪になります。そうして非常な苦難に遭うのですが、それでもいっさい妥協することなく、自身の信念を貫きました。そういうところで、「行動」というものにこだわる人にとっては、日蓮は大変に素晴らしい先覚者であると考えられたと思います。
また、日蓮が信奉した法華経は、「世界のあらゆる人が救われる」という教えです。その教えを奉じて、自分も実践に励むというところが、非常に魅力的だったのではないかと思います。
―― そうすると、世の中をよくしたいと思う人たちにとっては、(日蓮は)どちらかというと勇気を与えてくれるような存在というところでしょうか。
賴住 そうだと思います。自分の先駆者として、それだけ強い信念を持って行動された人ということです。また、その信念の軸となっている法華経というお経自体の持っている重みや深さに、非常に魅力を感じたと考えることができると思います。
●「天台沙門」を名乗った日蓮の思い
―― 今、お話があったように、日蓮はその法華経と...