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サイバネティック・パラダイムと仏教…「空-縁起」の共鳴
ChatGPT~AIと人間の未来(7)大乗仏教とコンピュータ
科学と技術
西垣通(東京大学名誉教授)
多元的な価値観に基づくポストモダニズムは、実は日本人が古くから親しんできた大乗仏教の「空-縁起」の考え方にも通じる。デジタルやコンピュータを考える場合、「コンピューティング・パラダイム」と「サイバネティック・パラダイム」という2つの考え方があるが、「サイバネティック・パラダイム」では、大乗仏教に触発された議論が展開されているのだ。第7話では、それぞれについて、わかりやすく解説するとともに、なぜ、この両方を組み合わせていくことが重要で、なぜ日本人の心にも根差した大乗仏教的な視点を持つことが必要かが語られる。(全8話中第7話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:11分17秒
収録日:2023年3月15日
追加日:2023年6月29日
≪全文≫

●サイバネティック・パラダイムは「生き物の観点」から考える


―― 先ほど、哲学的な背景がコンピュータの世界にも、いろいろなかたちで反映しているというお話がありました。そういう部分でいくと、ポストモダニズムはそれまでのような「近代主義で一直線で未来に向かって」という世界とは違って、相対主義といいますか「多元的なものが相対的に存在している社会」を、いかにコンピュータのなかでつないでいくかという発想になっていくかと思います。

 実は、テンミニッツTVでは頼住光子先生という倫理学の先生に仏教の講座をお願いしておりまして、大乗仏教的な「空-縁起」理論についてお話しいただきました 。それによれば、「空」は何もないということではなく、関係性の網の目の中で位置づけられる。たとえば、Aという人から自分を見るとこう見える、Bという人から見るとまた違って見える。では「本当の自分」は本当にあるのか。その関係性の中で紡ぎ出されているものが自分なのではないか。だから、「こだわるべき自分」のようなものは、実はなくて、すべて相対の中に溶けていくような自分になるのではないかというお話でした。(頼住光子先生:【入門】日本仏教の名僧・名著~親鸞編(3)「空-縁起」と『歎異抄』)

 西垣先生の『超デジタル世界』を読んだときに、ある意味ではそのポストモダニズム的な多元主義、相対主義的な世界観は、どこか日本に古来あった大乗仏教的な「空-縁起」の世界と結び付くような感じがします。それを踏まえると、日本人が新しいネット社会をどう捉えるかという見方も少し変わるのかもしれないと思ったのですが、ここを先生はどのようにお考えですか?

西垣 そこはポイントです。ちょっと整理をすると、今、普通に「デジタル化」と言ったときは、ともかく「世界というものは秩序だってできている。実体からなる秩序があって、それをきちんとデータとして分類し、記述し、高速に組み合わせれば答えが出る」と考えます。こういうのは「コンピューティング・パラダイム」といいます。

 「コンピューティング・パラダイム」は、ジョン・フォン・ノイマンという 天才が中心になってつくったわけですが、ある意味ではわかりやすい考え方です。 「客観世界というものがある。客観世界を神様がつくったのかどうかはわかりませんが、とにかくそういうものがある。きちんと実体としてある...

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