●日本の学校で教わった世界史はギリシャから始まる欧米の歴史
私は、実は長い間、イスラム文明、文化を学ぶ機会がなかったのです。日本の学校では、普通イスラムについて教えません。
日本の学校で教える世界史は、ギリシャから始まって、ローマ、それから、暗黒の中世です。これは、1000年ぐらい続くわけですが、確かにヨーロッパから見れば暗黒で、まだ未開の時代でした。イギリスで一番発達した所は、ローマが進駐したバースという地域で、そこにいろいろな町をつくったりしました。バースは、その後英語で「お風呂」ということになったのです。日本で、『テルマエ・ロマエ』という漫画が大変流行っていますが、ローマ人はお風呂が大好きのようで、バースになったのでしょう。
結局、イギリスの文明は、ローマが来ていた時代だったのですね。その時代、フランスはまるで荒れ果てた平原で、ドイツは森で、ことほどさように、ほとんど何もなかったのです。割と発達していたのは北欧です。後に海賊になって、何度もイギリスを攻撃して、海軍を起こした人たちです。それぐらいで、他には何もないわけですから、暗黒の時代です。われわれはそう教わりました。
●戦後、パクス・アメリカーナの教育体制が組まれた日本
ところが、そこに宗教のくびきを逃れて、ルネサンスと産業革命が起こったのです。産業革命によって国力を上げたイギリスは大英帝国をつくり、世界を支配し始めました。
そして、イギリスが第二次世界大戦でボロボロになると、覇権はアメリカにバトンタッチされます。アメリカは強大な国です。世界の安全保障から、金融、国際法まで、全部を一手に仕切るパクス・アメリカーナをつくりました。
日本は、その中の同盟国です。本当はアメリカ帝国にねじ伏せられた敗戦国ですが、アメリカはロシアと違って、割と好意的に見てくれますから、奴隷国ではなく同盟国として扱ってくれているのです。しかし、パクス・アメリカーナには、実は「アメリカの素晴らしさを世界の人たちはちゃんと自覚しなさい」という教育体制が組まれており、日本はその中で優等生なのです。
ということで、日本の世界史教育は、ギリシャ、ローマ、暗黒の中世、ルネサンス、産業革命、大英帝国、アメリカ帝国以外、ほとんど教わることがないのです。私も学生時代は割と優等生と言われたので、そんなことしか知ら...