●世界で活躍し、日本民族を守り育てるために知るべきこと
いろいろ申し上げましたが、これからの世の中では、やはり「世界で活躍する」ことが重要です。日本は小さくなっていきますし、重税になり、決して暮らしやすい国ではなくなっていく。しかし、子孫はやはり育ててあげなければいけない。これは、大きな使命です。
世界の中で大いに活躍しつつ、日本民族を守って育てていかなければならない。そのミッションは私どもも感じていますが、次の世代にも感じて、頑張っていただける能力を身につけていっていただきたい。それを応援するのがわれわれの世代の役割だと思って今、島田村塾をやっている次第です。
そのためには、世界の主要文化圏の歴史、宗教、文化、考え方を学ばなければいけないのと同時に、やはり日本の歴史を学んでほしい。特に戦争の歴史です。
●日本の戦争の歴史と日本の宗教の本質を知る
日本は19世紀末から20世紀半ばまでのたった50年間に、国運をかけたアウェーの戦争を5回もしています。詳しく言うと6回で、日清、日露、第一次大戦、満州事変、日中戦争、太平洋戦争です。こんな国は世界史にありません。世界のイメージには「最も獰猛でミリタント(闘争的)な国」という残像が残っています。
今の日本は平和国家だと一生懸命言っていますが、世界にはそんな認識はありません。だから、安倍晋三首相が靖国に行った途端に「またミリタントになるぞ」と過剰反応が起こるのは、世界が日本の歴史をそう解釈しているからだということを、われわれは知らなければなりません。
しかし、日本には長い歴史と伝統に培われた、大変密度の高い宗教があります。生活宗教であり感覚宗教である神道です。教義はあまりしっかりしていませんが、国民の一挙手一投足にまで浸透するほどの宗教を持つ国は、実は多くはありません。
神道には教義はないが、生活そのものである。そこへ仏教が入ってきて、一緒になってやってきた。このことについてわれわれはやはり熟知しておく必要があるし、人に誇りを持って語れなければいけない。そうでないと、イスラムの議論はできません。
●比類のない日本文化。お能、お茶、文楽を知る
それから、やはり文化が傑出しています。日本文化というと、お茶もお花も素晴らしいのですが、まず見るべきは、侍の文化として継承されたお能、そして茶道です。
お茶は、日本の美の象徴と言われています。岡倉天心という人は、明治初年に『ブック・オブ・ティー(茶の本)』という本を英語で書いて、ベストセラーになりました。これは世界に比類のない文化だからだと思います。
それから、400年の歴史を持つ文楽があります。江戸初期の頃、旅芸人が大阪に小屋を持ったのが始まりだと言われています。いろいろな人間に扮して物語をする「義太夫(浄瑠璃語り)」がいます。今年は竹本住大夫の7代目が引退しました。太夫の他に三味線弾きと人形遣いがいます。きっちり伝統にのっとった芸能として、世界に類例のないものだと思います。
今は歌舞伎の方が華やかですが、歌舞伎の古い演目は全て文楽からきたものです。そのような文楽の演目の大半を書いたのは、何と近松門左衛門です。いわば「日本のシェイクスピア」とも言うべき近松門左衛門のことを、われわれはもっと知っていた方がいい。シェイクスピアは、喜怒哀楽、裏切り、戦いの全てを書いていますが、近松もほとんど全てを書いています。
●浮世絵の技法と西洋へ渡った歴史を知る
そして、浮世絵です。浮世絵は桜の木の版木に彫って、6、7色で刷るものですが、例えば、花魁の細い1本の乱れ髪を表現するのに、彫刻刀で彫ったりはしません。浮かしておいて、色刷りした結果、黒い髪が一筋乱れて出てくるのですが、0.01ミリずれると絵にならない。版木に用いる桜の木は、水が一滴入ると真空になって剥がれないのだそうです。
それほどの精密工芸を、250年間かけて育て上げました。ところが明治になって黒船が来てからは油絵が入ってきたために、浮世絵は急速に駄目になっていきます。しかし、逆に西洋の人があれを見て、「こんな芸術があるのか!」と仰天します。
ゴッホもレンブラントもそうで、多大な影響を受けました。彼らはどこで気がついたのかというと、包み紙です。当時日本に入ってきた西洋人は、「ジャポン」と呼ばれていた輪島塗や陶器を買い求めましたが、それらの包み紙に何か絵柄が付いている。開いてみたら立派な絵だった。「これは何だ? 印刷された絵だ。浮世絵だ」ということです。
●世界に誇るべき文化の爛漫、それを教えない教育の怠慢
これは1日に200枚刷るのが限度だそうですが、売れ行きを一日中見ていて、刷る量を調節するプロデューサーがいました。彼らが...