行動経済学とマーケティング
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
直観型と熟慮型…2つの思考回路を使い分ける人間の特徴
第2話へ進む
人間はそれほど合理的ではない…行動経済学の本質に迫る
行動経済学とマーケティング(1)「行動経済学」とは何か
阿部誠(中央大学 大学院 戦略経営研究科 教授/東京大学名誉教授)
最近、「行動経済学」という言葉をよく見聞きするが、これはそもそもどういうものなのか。第1回目は行動経済学の基本を、行動経済学という分野がなぜ従来の経済学とは別に誕生・発展したのか、行動経済学が考える人間像や前提とは何かなどとともに解説する。(全6話中第1話)
時間:8分46秒
収録日:2024年4月8日
追加日:2024年6月6日
≪全文≫

●「行動経済学」は従来の経済学とどう違うか


 今日は「行動経済学とマーケティング」というテーマでお話ししたいと思います。阿部誠です。

 まず、「行動経済学」とは何か。最近よく聞かれる言葉です。これはもともと1980年ごろに、伝統的な経済学に心理学を導入して発展したといわれています。そのときに非常に大きな貢献をしたのが、カーネマンとトベルスキーという2人の心理学者です。のちにカーネマンは、その貢献として2002年にノーベル経済学賞を受賞しています。

 さて、では“伝統的な経済学”とはどういうものか。伝統的な経済学では1つの仮定があって、その1つが「ホモ・エコノミカス(日本語では「経済人」と訳されます)」です。やや言葉が難しいように聞こえますが、「人は理に適った行動をする」という前提からさまざまな経済的な理論を導出し、実際の現象を説明する。こうなっているのです。

 しかし、そこで仮定しているのは、例えば「人は理に適った行動をする」ということで、ものの値段が上がると人は買わなくなってくる。これは、いわゆる需要曲線という形で「価格が上がると需要が減る」というものが理に適った行動なのですが、実際のビジネスはどうでしょう。

 あるアメリカの高級オーディオメーカーが、日本で売り上げを伸ばそうということで値段を下げたのです。すると、逆に売り上げは落ちてしまったという現象がありました。これはなぜか。

 価格には3つほどの意味があるのです。1つは経済的な痛み。だから、値段が高くなればなかなか買いづらくなってしまう。これは、「ホモ・エコノミカス」の仮定に沿った価格の意味になります。

 しかし、それ以外に、「価格が高いということは品質が高い」「価格は品質のバロメーターである」。こういった価格の意味もあるでしょう。あるいは、「価格が高いということはプレステージがある、ステータスがある」「なかなか普通の人には手が出せないから、プレステージがある」といった意味もあるでしょう。

 したがって、単に「経済的痛みが価格である」という経済理論による説明では、実際のビジネスをうまく説明できない。こういった限界が出てきたということで、「では、なぜだ」となる。そこで、今言ったように、心理学の観点を入れることが実際の経済現象を説明する上で、あるいは予測する上で...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「経営ビジネス」でまず見るべき講義シリーズ
マザーテレサとの出会い
人生を変えたマザーテレサの言葉…あの人たちはキリストだ
上甲晃
ハラスメント防止に向けた風土づくり(1)ハラスメントの概要
増え続けるハラスメント…その背景としての職場の特徴
青島未佳
億万長者への道(1)お米屋さんから不動産業界へ
「背広を着てビジネスがしたい」との思いから宅建取得
高橋誠一
ストーリーとしての競争戦略(1)当たり前の重要さ
柳井正氏の年度方針「儲ける」は商売の本筋
楠木建
会社人生「50代の壁」(1)“9の坂”とまさかの坂
サラリーマン人生「50代の壁」を乗り越える生き方
江上剛
キャリア転換で人生を成功させる方法(1)2つの大きな潮流
なぜ40歳でキャリアについて一度考え直す必要があるのか
為末大

人気の講義ランキングTOP10
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』、秀吉と秀長の実像に迫る
黒田基樹
平和の追求~哲学者たちの構想(4)ルソーが考える平和と自由
ルソーの「コスモポリタニズム批判」…分権的連邦国家構想
川出良枝
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(4)葛飾応為の芸術と人生
親娘で進歩させた芸術…葛飾応為の絵の特徴と北斎との比較
堀口茉純
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
編集部ラジオ2025(31)絵で語る葛飾北斎と応為
葛飾北斎と応為の見事な「画狂人生」を絵と解説で辿る
テンミニッツ・アカデミー編集部
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎
「進化」への誤解…本当は何か?(1)進化の意味と生物学としての歴史
実は生物の「進化」とは「物事が良くなる」ことではない
長谷川眞理子