田沼意次の革新力~産業・流通・貨幣経済
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
新たなビジネスを発展させてこそ国家歳入も拡大する
田沼意次の革新力~産業・流通・貨幣経済(5)東西貨幣統一とビジネス創造
養田功一郎(元三井住友DSアセットマネジメント執行役員/YODA LAB代表/金融・経済・歴史研究者)
田沼意次は、大岡越前の金融緩和策を受け継ぎつつ、さらに東西貨幣の統一などの積極的な経済・金融政策に打って出る。その政策は、やはり気配りが行き届き、実効性が高いものであった。さらに田沼意次は、国家歳入を拡大させるためには、新たなビジネスを興隆させて、それにうまく対応することがいちばんだと見抜いていた。その革新的な手法とはいかなるものだろうか。(全6話中第5話)
時間:9分34秒
収録日:2025年1月28日
追加日:2025年6月27日
≪全文≫

●統一通貨の鋳造を試みた田沼意次


 さて、次に、こうした中で田沼意次はどんな通貨政策を行ったのか、です。彼は、この元文の改鋳、金融緩和策を受け継ぎつつ、東西貨幣の統一、並びに銀貨による恒久的な通貨発行権の確保を試みます。

 上の囲みを見て頂きたいのですが、まず江戸は金本位であり、一両=4分=16朱という4進法の通貨単位で貨幣が流通していました。

 一方、大坂は銀本位で、下のいちばん左の写真にもあるように、こちらは丁銀という重さで測る秤量貨幣(しょうりょうかへい)が流通していました。金と銀の交換比率為替レートも変動しており不安定であったため、江戸の金本位に銀の通貨も統合する構想の中で実施されました。

 これまで述べたように、江戸周辺の経済圏も発達し、単なる消費市場ではなく、大坂と相互にモノが行きかう商流が発展していたという背景があること見逃せません。

 手順としては、まず、下の写真真ん中の「五匁(もんめ)銀」なるものが発行され、幕府公定レートの1両=銀60匁に従って五匁銀12枚で金1両と交換させる目的で鋳造しました。ところが、実勢レートは1両=63匁くらいで、実勢とかけ離れていたため、なかなか流通しませんでした。

 これでめげないのが意次で、その後は良質な銀で作った南鐐2朱銀を発行。1両=16朱なので、右下の写真のところにもあるように、「8枚で金1両と交換する」とこの銀貨に明記した上で、銀貨を金貨の補助通貨にすることを目指します。

 実は、この銀貨に含まれる銀の含有量は、同じ価値の丁銀に含まれる含有量よりも少なく、これが幕府の通貨発行益にもなりました。一方で、銀の量が少ないのに世間に受け入れられたのは銀貨が良質であるというのがミソで、「南鐐」とは良質という意味です。ここで使われた銀は、前に見た、長崎貿易で俵物を輸出し得られた銀が使われたともいわれています。いろいろなところで意次の政策がつながっているのは面白いところです。

 とはいえ、これも当初は両替商の抵抗に遭いました。両替商は単位通貨の金と重さで測る丁銀の交換という手間のかかる両替で手数料を取り利益を得ていたので、権益がなくなると抵抗したのですが、良質の銀であることと、半ば強制的に従わせたこともあり徐々に浸透するようになります。おそらく他に何らかの条件とあわせて...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
新撰組と幕末日本の「真実」(序)『ちるらん 新撰組鎮魂歌』の魅力と史実の絶妙さ
新撰組と『ちるらん 新撰組鎮魂歌』…群像劇としての魅力の源泉に迫る!
堀口茉純
「三国志」の世界とその魅力(1)二つの三国志
三国志の舞台、三国時代はいつの・どんな時代だったのか?
渡邉義浩
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
織田信長と足利義昭~検証・本能寺の変(1)はじめに
新史料の発見で見直される「本能寺の変」
藤田達生
独裁の世界史~ギリシア編(1)世界史の始まり
「独裁政から始まる」という世界史の諸相に迫る
本村凌二

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(9)「トランプ大統領」の視点・論点
【テンミニッツで考える】「トランプ大統領」をどう見るか?
テンミニッツ・アカデミー編集部
日本人とメンタルヘルス…心のあり方(7)若者の引きこもりと日本の教育問題
日本の引きこもりの深い根源…「核家族」構造の問題とは?
與那覇潤
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIでは「思考の三位一体」が成立しない…考えるとは?
中島隆博
「同盟の真髄」と日米関係の行方(7)トランプ氏の評価とその実像
こりごり?アイ・ラブ・トランプ?…トランプ陣営の実状は
杉山晋輔
プラトン『ポリテイア(国家)』を読む(14)ポリスと魂の堕落過程〈下〉僭主の末路
僭主制は欲望の奴隷…過度の自由が過度の隷属に転換する
納富信留
『貞観政要』を読む(2)著作に登場する人物たち
房玄齢・杜如晦・魏徴・王珪―太宗の四人の優れた側近
田口佳史
ソニー流「人的資本経営と新規事業」成功論(2)“変わり者”の生かし方と後継者選び
「人材の組み合わせ」こそ「尖った才能」を輝かせる必勝法
水野道訓
民主主義の本質(1)近代民主主義とキリスト教
なぜ民主主義が「最善」か…法の支配とキリスト教的背景
橋爪大三郎
『太平記』に学ぶ激動期の生き方(1)なぜ今『太平記』を読むべきなのか
『太平記』は乱世における人間の処し方が学べる古典文学
兵藤裕己