平和の追求~哲学者たちの構想
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「国連」の発想の源は?…一方、小共和国連合=連邦構想も
平和の追求~哲学者たちの構想(3)サン=ピエールとモンテスキュー
川出良枝(東京大学名誉教授/放送大学教養学部教授)
18世紀に「国家連合」というアイデアが生まれたのだが、そのアイデアの発端はフランスの聖職者・外交官のサン=ピエールであった。一方、モンテスキューは集団安全保障的な考え方から「小共和国による連合」「連邦国家」の方向を志向した。モンテスキューの思索は、やがてアメリカ合衆国(United States of America)という「連邦国家」の形へとつながっていくのだった。(2025年8月2日開催:早稲田大学Life Redesign College〈LRC〉講座より、全7話中第3話)
※司会者:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
時間:14分55秒
収録日:2025年8月2日
追加日:2025年12月15日
≪全文≫

●「国家連合」案のオリジンはサン=ピエール


川出 さて、これからそれぞれ議論していきます。

 まず平和を実現するために国家と国家を連合させればいいではないかという議論。これはサン=ピエール、のちにカントがそれを述べました。このあたりは微妙な関係に立っていて、カントのほうが有名人ですから、カントのほうがこの議論のオリジンだと捉えられることがある。ですが、もっと早くにサン=ピエールがそういったアイデアを発出したということを、まず議論したいと思います。

 サン=ピエールはちょうどルイ14世が権勢を誇っていた頃に宮廷の中に入って、いろいろな書き物をしていました。ただ、本当は心の中ではルイ14世が大嫌いで、隠していたのですが、書いたものの中にそれがいろいろ滲み出ている。ルイ14世の戦争政策に対しても批判的で、結局、宮廷も追放されてしまったという人物です。今では、サン=ピエールの著作(すごく長いのですが)は日本語訳もあります。

 さて、サン=ピエールがどういう議論をしたのか。簡単にいうと、彼は「勢力均衡による平和は長続きしない。あと一歩を踏み出さなければいけない」という議論を立てます。そのためにどうすればいいのかというと、国家と国家を連合する。具体的にどうするかというと、諸国家が――ここがポイントなのですが――1国1名の代表者を出し、その人たちが協議し、多数決で紛争を解決するという、一種の仲裁機関を設立しようというのです。

 加盟国同士の間で紛争が起きたときに、緊急招集して、全ての加盟国が1国1名の代議員を出し、そこで議論して、多数決でどちらに理があるかを決める。加盟したからには、全ての加盟国はこの仲裁機関の決定に従わなければならない。「いやだ、そんな決定を私は聞きたくない」と言った場合、つまり違反者には軍事的制裁が科される。その軍事力も、この国家連合が自前の軍隊を設けて、軍事的なサンクションを科す、というわけです。やはりその部分においては、各国は主権を制約されるわけです。


●国内の主権は維持したまま、国際紛争は仲裁機関で解決


川出 ただ、そうはいっても加入国は、自国の体制、自国の国内政治に関しては、こうした仲裁機関から一切影響を行使されることはないし、加盟する段階においては厳格な現状維持です。この現状維持はすごく重要な考え...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎
道徳と多様性~道徳のメカニズム(1)既存の道徳の問題点
多様性の時代に必要な道徳とは…科学的アプローチで考える
鄭雄一
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介
人の行動の「なぜ」を読み解く行動分析学(1)随伴性
「なぜ人は部屋を片付けられないか」を行動分析学で考える
島宗理
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾
津崎良典
楽観は強い意志であり、悲観は人間の本性である
これからの時代をつくるのは、間違いなく「楽観主義」な人
小宮山宏

人気の講義ランキングTOP10
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
平和の追求~哲学者たちの構想(5)カント『永遠平和のために』
カント『永遠平和のために』…国連やEUの起源とされる理由
川出良枝
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾
津崎良典
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
黒田基樹
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
組織心理学とは何か~『武器としての組織心理学』と概論
なぜ組織に「心理学」が必要か?多様化と個の時代の処方箋
山浦一保
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(5)『秘蔵宝鑰』が示す非二元論的世界
雄大で雄渾な生命の全体像…その中で点滅する個々の生命
鎌田東二
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子