「日本の歴史は、実にその宗教の歴史なのである」――。なぜ天変地異は死者の仕業とされ、村八分などの制約が生まれたのか? 「バチが当たる」という感覚の正体とは? 仏教と神道が奇跡的な調和を保った理由は? お供えをし、祭りに集う、日常の何気ない風景の裏には、二千年の歳月が育んだ「日本の宗教観」が隠されている。善行も悪行もすべては死者の制約下にあるという、はてしない夢魔の重圧のごときものが、いかにして日本特有の「道徳」と「社会」を形作ったのか。ラフカディオ・ハーン自身の美しい文章で探っていく。(全8話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
≪全文≫
●祖先崇拝の神道の3つの形式…家庭の祭祀、地域社会の祭祀、国家の祭祀
―― では実際に、ハーンがどう見ているのかというところを、文章に当たりながら追っていきたいと思います。まず、幸福や平和をもたらすものとしての宗教という部分でございます。
《日本の真正の宗教すなわちいまなお全国民からいろいろの形で信仰されている日本の宗教は、すべての文化を誘導する宗教の土台であり、またすべての文化的社会の土台となってきたあの祭祀――すなわち祖先崇拝の祀りである。幾千年という月日の流れていく間に、この最初の原始的な祭祀はいろいろに変化し、いろいろの形をとってきている。しかし日本のどこにあっても、その土台になっている特性は変化しないままである》(『神国日本』19頁)
と、「変わらないのですよ」ということを言った上で、
《祖先崇拝の神道の三つの形式は、家庭の祭祀、地域社会の祭祀及び国家の祭祀である》(『神国日本』19頁)
と、この3つを挙げているわけですね。
頼住 そうですね。祖先祭祀ということを日本人の宗教性の中核に据えて、この『神国日本』という作品の中では日本人の宗教性を追求しているということです。特に祖先祭祀も3つの形式があるということで、まず「家庭の祭祀」は「血縁」ということですね。血縁をまさに結びつけている、いわゆるご先祖様に対する祭祀です。
それから「地域社会」と言いますともう少し広がりまして、「氏神様」のような、村などの共同体で祭祀されている神様のことです。それは「村を作ってくれた、いちばん大元の神様」というような形で、祖先というような意味でも考えられるということになるかと思います。
―― これはイメージで言うと、本の中でも描かれますけれども、いわゆる村祭りであったり、お祭りをその地域で行なうような場所としての神様だということですね。
頼住 そうですね、はい。そうなります。
3つ目が国家の祭祀ということで、これは皇室を中心とした天皇を崇拝するということなのですが、当時は日本を1つの家族の国家として見ていくというような考え方が行われていました。そういう意味で言うと、国家祭祀というのも祖先祭祀と重なってくるということなのですが、ただ、この本の中では国家の祭祀についても触れられてはいますけれども、主には家庭と...