ラフカディオ・ハーン『神国日本』を読む
この講義シリーズは第2話まで
登録不要で無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
恐ろしい日本…常に何者かに見られ、個性が抑圧される社会
ラフカディオ・ハーン『神国日本』を読む(5)美の裏に潜む恐ろしい側面
賴住光子(東京大学名誉教授/駒澤大学仏教学部 教授)
西洋人が驚嘆せざるをえない日本人の美しい倫理性。だがそれが成立してきた裏には、「強制性」や「恐ろしい側面」があったことを、ラフカディオ・ハーンは鋭く見抜いていた。死者の目に常に支配され、さらに集団の中でお互いの目も意識し、個性も競争も許されず、上中下のあらゆる方向から圧力を受ける社会。それは見方によれば不気味で恐ろしい社会である。日本の神道に経典や戒律がないのに、高い倫理性が実現していたのは、そのような裏面があったからなのだ。しかしハーンは、そのような姿を真正面から見据えつつ、「酷い社会」「遅れて劣った社会」などと斬り捨てることはしない。なによりそのような「裏面」によって成立している日本人の精神性や芸術的感性は、やはり西洋人には神さながらに見えるものだからである。(全8話中第6話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
時間:11分07秒
収録日:2026年2月20日
追加日:2026年3月31日
≪全文≫

●日本の道徳の裏にある「死者や集団からの制約」…古代ギリシャとの共通性


―― 頼住先生、今見てきましたのが、どちらかと言うと神道なり祖先崇拝の「美しい部分」でございました。これまでの講義でも申し上げたように、実はハーンは、「負の側面」とまでは言えませんが、非常に「強制性」があったり、あるいは「恐ろしい側面」もあったりしたのだということを、辛口に書いているところもございます。その部分について見ていきたいと思います。

―― ここに挙げさせていただいたように、よく神道は「戒律や経典がない」と言われます。それこそ、戒律や経典がないから原始宗教なのだと、おそらくキリスト教の方からはそのような指摘もあったかと思います。しかし、ハーンはそこを逆手にとって、「実は、なぜ戒律が要らなかったのかと言えば、非常に強い強制力や抑圧性があったからなのですよ」ということを説いていくわけですね。

 それがどのようなところか、読んでまいりたいと思います。まず、「幸福で平和な世界であるが集団から強制を受ける社会」であると。これが、これまでご指摘いただいたように、美しく、古代ギリシャに通じる話なのだということが書かれている部分でございます。

 《三十年そこそこ前、まだ表面的変化が起こっていない時節に、この驚異の妖精の国に足を踏み入れ、そこの生活の世の常でない姿を眺める特権に恵まれた人々は、まことに至福と言わねばなるまい。(中略)

 みんなが慇懃(いんぎん)であること、誰も喧嘩口論などをしないということ、誰もがにこにこ微笑していること、苦しみも悲しみも表情にはでていないこと、新しい警察は手もち無沙汰であること、すべてこうしたことは、道徳的にすぐれた人間性をもっている証拠になろう。しかし修練を重ねた社会学者には、それとは何かちがったもの、何かひどく不気味で恐いものを暗示することにもなろう》(『神国日本』322頁)

 《そうした社会学者には、この社会は途方もない強制をうけながら型にはめて造られたものであること、そしてこの強制は何千年もの間格別の妨害なしに加えられたものであることが実証されるだろう。そこで彼は、道徳と慣習とはいまだに分離していないことや、各...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
プラトン『ソクラテスの弁明』を読む(1)真実の創作
プラトンの『ソクラテスの弁明』は謎多き作品
納富信留
楽観は強い意志であり、悲観は人間の本性である
これからの時代をつくるのは、間違いなく「楽観主義」な人
小宮山宏
プラトン『ポリテイア(国家)』を読む(1)史上最大の問題作
全米TOP10大学の必読書1位が『ポリテイア(国家)』
納富信留
『タテ社会の人間関係』と文明論(1)誤解を招いた「タテ社会」の定義
誤解された『タテ社会の人間関係』…日本社会の本質に迫る
與那覇潤
仏教とキリスト教が照らし出す日本の宗教(1)神とは何か、そして天皇とは?
日本と世界の「神と信仰」の違いは?…そして天皇の大切な役割
橋爪大三郎
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(33)鎌田東二先生の法華経講義解説-2
【10min名作探訪】大丈夫だよと励ましてくれる『法華経』…鎌田東二先生の講義
テンミニッツ・アカデミー編集部
おもしろき『法華経』の世界(1)法華経はSFだ!
法華経はSFだ!…心を元気にしてくれる法華経入門
鎌田東二
「ホメロス叙事詩」を読むために(7)オデュッセウスの冒険
ホメロスの『オデュッセイア』が描く苦難と誘惑の冒険譚
納富信留
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(9)ライトノベルへの影響と物語の重要性
現代のライトノベルやゲームにもオデュッセイアの影響…神話は「創作活動」の重要な根源
松村一男
「満洲」から考える日本とアジア(4)蒙古襲来と清朝建国
実は元寇はモンゴル人ではなかった?満洲をめぐる民族興亡史と「漢族」との関係…蒙古襲来から清朝建国まで
宮脇淳子
仏教とキリスト教が照らし出す日本の宗教(1)神とは何か、そして天皇とは?
日本と世界の「神と信仰」の違いは?…そして天皇の大切な役割
橋爪大三郎
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
ギリシア悲劇への誘い(1)ギリシア悲劇を観る
二千年の時を超えて読めるギリシア「三大悲劇詩人」の作品
納富信留
ピアノでたどる西洋音楽史(1)ヴィヴァルディとバッハ
クラシック音楽の歴史をピアノ演奏で辿る~ヴィヴァルディ四季
野本由紀夫
資本主義の再定義…哲学で考える(1)アダム・スミスの「市場と感情」
資本主義を哲学する…まずアダム・スミスの見えざる手と道徳感情論
中島隆博