老子の説く「足るを知る者は富む」とは何か。視線を外側ばかりではなく自分の内面へと向け、物事の本質や根本を見ることが大事だと言う田口氏。さらに「死して亡びざる者は壽なり」という言葉を掘り下げ、主体的に生きることこそが本当の長寿であり、絶対自由の境地であると語る。堀江氏が語る自律神経の働きや経営者のタイプ比較といった具体的な視点も交えながら、『老子道徳経』の「辯德第三十三」をテーマに老子思想の神髄を解き明かす。(全9話中第8話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツ・アカデミー論説主幹)
≪全文≫
●「足るを知る者は富む」――自分の内側をもっと見なければいけない
田口 (『老子』の)「辯德第三十三」の方はいかがですか。
堀江 「辯德第三十三」の「人を知る者は智、自ら知る者は明なり。人に勝つ者は力有り、自ら勝つ者は強し。足るを知る者は富み、強(つと)めて行なう者は志有り。其の所を失わざる者は久しく、死して亡びざる者は壽(じゅ)なり」ですが、最後の「死して亡びざる者」というのが一つの目標、一つの理想なのかなと思うのですけれど、これはどのように理解すればいいでしょうか。
田口 これは対比になっている文章です。人を知る者は智者だとは言える。しかし、もっと卓越した人間は自らを知ると言っているのです。それから、「人に勝つ者は力有り」も相対的に言っているのです。
ここまでの二つで言っていることは、簡単にいうと、「あなたの視線は常に外側ばかりではないですか?」「外ばかり見ていませんか?」ということです。「もっと見なければいけないものがありますよ。それは自分の内面です。内側をもっともっと見なければいけません」と言っているわけです。
だから、私がおすすめしているのは、一日が終わったら、廊下の隅の暗がりに行って――廊下の広いほうに行ってはダメ――壁のほうを向いて、10分間正座して、「今日はどうだったのかな」「あそこで怒るべきじゃなかった」などと、一日の自分を見る癖をつけて、そして寝るということです。
「どうですか。やってくれますか」と聞くと、「いや、先生、うちは難しいんですけど」と(答える)。「なぜそれができないんですか。私がやってくれと言っているのだから、やってくださいよ」と言ったら、「いや、うちには廊下の隅の暗がりがないのです」という人がいました。「ああ、そういう理由もあったんだな」と思いましたけれど(笑)。
これは内面を見ることによって、自分の常に内面を見続けるというトレーニングになるのです。人間はそうでもしないと自分の心が今どうなっているのか、どのように思っているのか、そういうものを自分で確認することはまずないのです。
ですから、ここでいっているのは、外から内へということで、内へとなった瞬間に「本質を見る」ことになるわけです。だから「根源を見る」という癖がつく。本質を全部見ていくということです。
今もど...