老子の神髄
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人間から真の自由を奪っているのは社会や権力ではない。実は自分自身であると『老子』は説く。目指すべき究極の自由とは、私欲や人為を捨て去り、天の命ずるままに動く「無為」の境地であり、これはすなわち達人や名人の境地に達することである。この境地は、どうすれば実感できるのか。田口氏は日向ぼっこといった身近な行為を提示し、また堀江氏は認知症の事例を紹介して、さらにその境地を深掘りしていく。そして40歳という年齢を取り上げ、真の長寿への道について、老子の教えと絡めながら語り合う。(全9話中第2話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツ・アカデミー論説主幹)
時間:11分17秒
収録日:2025年11月27日
追加日:2026年6月26日
≪全文≫

●庖丁のエピソード…「本当の自由」は達人の境地にある


田口 (『老子』は)『老子道徳経』というのですけれど、その本の中でも自由とはどういうものかということで、「自由に反する不自由な生活を求めているのですか」というような質問がたくさんあって、「求めていない。自由を求めているのだ」と言うと、「それじゃあ、その行ないはおかしいじゃないか」というふうに言ってくるのです。

 そして「老荘」の「荘」、つまり『荘子』になると、もっとよそよそしくて、厳しい。どうして荘子はそんなに厳しく自由を求めるかというと、荘子は被征服民族だからです。

堀江 なるほど。

田口 ですから、殷から周になったのですが、(荘子は)殷の系統の人で征服された人です。ですから、社会的なポジションとして、もう上には行かないということで、不自由なのです。どんなに努力しても、ここまでしか行かない。だから、漆畑の管理人などで一生を終わるしかない。そういうことだったのです。

 ところが自由を求めていくと、今、先生が言われたことにも非常に関連するのだけれども、「実は本当に自由を奪っているのは自分だ」と。難敵中の難敵は社会でもなければ、社会の権威でもなければ、権力でもない。最終的には「自分が(自由を奪っている)」というのです。

 その最たるものは何かというと、例えば職業です。みんな持っていますよね。ですから、野球選手でいえば、野球を職業としてやっていると、「なんだ、そのバッティングは」とコーチも言うでしょうけれど、言われるのは一番自分(自身)なので、その自分への圧力に耐えられなくなって引退するのが基本で、その瞬間に不自由を受け入れて、それからの人生を歩みますという話になってしまいます。やっぱり、行き着く先の自由は「達人」「名人」だと言っているわけです。つまり、達人、名人を目指して生きるしかないというのが、荘子の自由論の基本なのです。

 よく料理で庖丁(包丁)を使いますよね。あれは料理人のことで、庖丁という料理人です。

堀江 はい、庖丁の。

田口 ええ。ある王様が、素晴らしい料理人だということで(庖丁を)招いて、牛を一頭、解体することになったのです。昔はそこから料理をやるわけですよね。それで、それを見せてくれと言うわけです。

 そうすると、牛が運ばれてきて、そこには音楽隊がいるわけでも何でもないけ...

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